NeoL

開く

パスピエが語る、未来へ向けた新たな挑戦としての原点回帰(中編)

C_Towermttboritoku1

 

—一方、大胡田さんの歌詞は専売特許とも言えるシュールレアリスム的視点が、躍動しながら時間軸を飛び越えていくような描写が印象的で。そこにはいまナリハネが話してくれた時代批評みたいなニュアンスも帯びてるなと思ったんですね。

大胡田「サラッと歌が流れていく感じにしたくなくて。そこで古語を意識的に取り入れようと思ったんですね。全体的には私のなかで映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をモチーフにしたいなと思って。私自身は意識してなかったしいろんな捉え方をしてもらればいいなと思うんですけど、確かに時代への警句みたいなニュアンスはあるかもしれないですね。タイトルは、時間旅行をテーマにした流れのなかで、松尾芭蕉の『奥の細道』にある〈月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり〉という一文をみんなの前で読み上げたときに、成田さんは〈また旅〉だけを聞いていて。そこから“MATATABI”というフレーズが派生したんですよ。歌詞の内容のトリップ感ともマッチするなと思って」

—それにしても行間のトラップが張り巡らされてますよね。

成田「大胡田の歌詞って、ホントに行間がいっぱいあるからこそ、いろんなところに派生していくんですよね。僕はガチガチに計画を立てて曲を作るんですけど、大胡田はそういう計画性がゼロなので」

—超ロジック派のナリハネの音と超感覚派の大胡田さんの言葉のせめぎ合いであり、共鳴であり。“あの青と青と青”はここまで壮大で、ストレートな趣のある歌をもってきたことに驚いたんですけど。

成田「この曲は内に向けて——もっと言えば大胡田に向けての挑戦というか。やっぱりパスピエって大胡田の特徴的な声だったり歌詞だったりが表に立つことで、キャラクター化されやすいと思うんですよ。という部分で、“電波ジャック”だったり“S.S”だったりのアッパーな曲で『パスピエってこういうバンドだよね』っていい意味でも定義付けされてきたなと思っていて。今回、両A面シングルをリリーするうえで、“MATATABISTEP”はそのイメージを踏まえているなと思いつつ、新たな挑戦をしたいと思ったときにいままでやったことのないテーマにも着手しようと。そこで壮大な曲っていままで触れてこなかったなと思って。でも、やっぱりただ単に壮大なバラードで、サウンドの隙間がたくさんあって、歌1本で攻めますという曲にはしたくなかったから」

—それをパスピエでやる意味もないし。

成田「そうですね。パスピエらしさに繋がる壮大な曲を作るために時間をかけましたね」

大胡田「最初は私への挑戦だとは全然思ってなくて(笑)。でも、パスピエの新たな一歩を示す曲になるだろうなと思ったし、成田さんがそういう意識で書いた曲だからか、私もいままで避けてきたテーマで歌詞を書こうという気になったんですよ」

(後編へ続く)

1 2

RELATED

LATEST

Load more

TOPICS