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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#4 ベジタリアン

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 沖縄に住み始めたのは、三年前である。思い出しても、劇的なきっかけがあるわけでもなく、なんとなく再びベジタリアンに帰ってみようと決めてみたのだった。
 だが、その時はセミではなく、本気のベジタリアンにさせてみようと思った。鶏、魚、卵までやめて、乳製品はOKとした。さらに、午前中は生食、つまりローフードだけに限定し、具体的には、野菜とフルーツのスムージーをたっぷり、もしくはサラダを山盛りとし、量の制限は全くせずに、夜の八時以降は食べないようにした。
 これを続けたところ、二ヶ月ぐらいで十キロほど減ったのだった。
 もともとダイエット目的で始めた菜食生活ではないので、痩せることには喜びはなかったが、この頃から会う人ごとに「痩せたねえ」と言われるようになった。その語感には、具合悪いの?な感じも少々あったのだが、本人はいたって健康で、各種診断でも優良な値を示していたし、あるチェック法の結果は20代の身体だという評価だった。これには失笑だったが、少なくとも、同世代の人たちに劣ってはいないようだった。
 実験はさらに進み、菜食生活での体力を調べてみようと思いついた。せっかくなら、ハードルをはっきりとさせるべく、人生初のマラソンをすることにした。
 ベジタリアンになって初めての冬に行われた十二月の那覇マラソン、翌二月の沖縄マラソンに相次いでエントリーし、結果、両方とも完走とあいなった。三ヶ月で二走とは、二度とする気にはならないが、菜食になっても体力維持に問題はないようだった。それは、七十を越えた菜食ロッカーであるミックジャガーのステージパフォーマンスが、雄弁に語っていると思う。
 痩せて、体力が落ちない。
 個人差があるので、絶対ではないだろうが、可能だと思う。
 体力維持が大切だというのは、別に六十になってもサッカーのフルゲームをしたいから、というわけではなく、普通の日常生活を嬉々と楽しむ為に必要だと思っているからだ。
 七大陸の最高峰を八十歳で登頂するのは素晴らしく天晴だが、夢見るのは曾孫と手をつないで、動物園を悠々と一周出来ることだ。
 曾孫?ちょっと話が膨らんだので、少し戻ると、とにかく適正な体重と体力を維持するのに、自分という個人には、ベジタリアンでいるというのは、とても相性が良いという事を現時点で確認できたのは、幸運だったとつくづく思う。

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