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The SALOVERS『青春の象徴 恋のすべて』インタビュー(前編)

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——でも、そのときはすぐにいけると思った。

古舘「そう。で、明け方に東京に着いたんですけど、僕はその道中から歌詞を書き始めて。あんなにずっと歌詞を書くのがヤだったのに。東京に着いたらマネージャーに『最後にアルバムを作りたいんだ』って電話して。『全部自分たちで管理するから』と。そこから自分たちでスタジオのスケジュールを組んで、このアルバムは1ヶ月でできたんです。3年間あれだけ苦しい思いをしてもできなかったアルバム1ヶ月でできちゃったんですよね(苦笑)」

——皮肉だけど最後の最後にバンドに対する情熱が生まれた。

古舘「そう思います」

——制作には4人とエンジニア以外はまったく誰も関与しなかったんですか?

古舘「そうです。マネージャーにすら『スタジオに来ないでくれ』って言いました。それくらいこのアルバムは4人だけで作りたかった。いつ以来だろう? 6年ぶりくらいに4人だけで作りましたね」

——でも、やっぱりバンドを続けようとはならなかった。

古舘「ならなかったですね。レコーディングも楽しかったんだけど、バンドを続けようとは思わなかった。たぶんこれはメンバーも同じですけど、このアルバムができたからといって、バンドを続けることは考えもしなくて。むしろこのアルバムが完成したときにやっと終われると思ったんですよね。このアルバムって、必死になってがんばっていたころとは違って、無欲で作ったんです。セールスがどうとか、仕事としてどうとか、そういう意識は一切なかった。唯一少しだけあるとしたら、見返してやりたいということだけだったと思うんですけど、それもいつの間にか消えていたんですよね。だからこそ、こんなに満足できる作品になったと思うし」

——バンドを始めたころのような感覚でバンドに決着をつけられた。

古舘「ホントにそう思います。だから、このアルバムを使ってもう一度バンドをがんばろうという欲すらなかったんですね」

——ただ、やっぱり思うのは、友だち同士、幼なじみ同士で始まっているバンドなんて世の中にたくさんいるじゃないですか。

古舘「そうですよね。俺は逆に続いてるのがすげえなって思うんですよね。俺らはなんで続けられないんだろうって考えると……う〜ん、難しいですね。なんかね、4人とも東京育ちのボンボンでみたいなディスられ方をするんですけど、実際にそういう甘さがどこかであるのかもしれない」

——でもさ、境遇で言えばOKAMOTO’Sだって近い部分があると思うけど、彼らはとても真っ当にバンドを続けてるじゃないですか。

古舘「でも、彼らは僕らと全然違う次元にいませんか? 彼らはホントに音楽と自分たちを切り離せない人たちだから。そこが素晴らしいなって思うし、憧れるし、めちゃくちゃリスペクトしてます。そう考えると、僕らは正反対ですよね。音楽の前に友だちであることが大事で。OKAMOTO’Sはそういう俺たちのダメなところをおもしろがってくれてたんですけどね。『やっぱSALOVERS頭おかしいわあ』って(笑)。でも、僕からしたらOKAMOTO’Sのほうがよっぽどクレイジーだと思う。彼らはホントにバンドになってるし、僕らみたいにメンバーと友だちに戻りたいからバンドをやめるなんて絶対言わないと思う。それよりも音楽をメインに生きてるから」

——それはプロ意識という部分にも繋がってくる話だと思うんですけど、古舘くんはそこまで背負えなかったのかな。

古舘「背負おうと思ったんですけどね。デビューした当初はやってやろうという気持ちもあったし……でも、ものすごくカッコ悪いことを言うと、正直、自分たちの作品を振り返って満足できてないんですよね。それは誰のせいでもなくて。関わってくれた2人のプロデューサー(中尾憲太郎、いしわたり淳治)にはすごく感謝してるし、出会えてよかったと思う。だから、そこを批判してるとは思ってほしくないし、そういうことではなくて、自分の音楽がどんどん流されていったことに傷ついてしまったんですよね。それをしっかり自分が受け止めて、自己満足も満たすことができていたら、もしかしたら流れは変わっていたかもしれないですね。僕がメンバーのことも引っ張っていけたと思うし。でも、どこかで自分が流されてしまい、気づかないうちに弱いマインドで音楽を作ってしまい、それを世に出していたんだなって。そういう意味でメンバーに対する負い目も感じていたのかもしれない」

——自分のことも許せないし。

古舘「ホントにいちばんはそこですね」

——でもさ、古館くんは自分のそういうパーソナリティと今後何をやるにしても向き合っていかなきゃいけないじゃないですか。そういう自分をまず認めなきゃいけないとも思うし。

古舘「うん……だからホントにギリギリでこのアルバムを作れたことが救いなんですよね。このアルバムを作らないままでSALOVERSを終えてしまったら、僕はSALOVERSのことを嫌いなままバンドを閉じてたと思うんですね。だから、このアルバムを作れてよかったです。最後にリスナーがどう思うかとか切り捨ててアルバムを作れてよかった。自分自身が『やっぱりSALOVERSって素敵だな』って思えるアルバムになったから」

(後編へ続く)

 

撮影 中野修也/photo  Shuya Nakano

文 三宅正一/text  Shoichi Miyake(ONBU)

編集 桑原亮子/edit  Ryoko Kuwahara

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The  SALOVERS

古舘佑太郎(Vo&Gt) 藤川雄太(Dr) 藤井清也(Gt) 小林亮平(Ba)

2008年、高校の同級生によって結成。2010年、FUJI ROCK FESTIVAL「ROOKIE A GOGO」に出演。2010年9月に 『C’mon Dresden』、2011年5月に『バンドを始めた頃』リリース。2012年9月『珍文完聞-Chin Bung Kan Bung』、2015年3月に『青春の象徴 恋のすべて』をリリース。3月のライヴをもってバンドの無期限休止を発表。

http://thesalovers.com

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