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女王蜂『奇麗』インタビュー(後編)

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―なるほど。私の勝手な解釈では、女の子の方のアヴちゃんがもう無理ってなって、それを男の子の方が支えてくれてるのかなって。でもそういう感じでもなくて、湧き出てくるものを流したらああなったんですね。

アヴちゃん「女性らしい声でしゃべっといて普通に綺麗なお姉さん風に生きるってこともできるやんか。でも地声でしゃべれない限り自分の中で腹が割れないとしたら、女性声の私に寄ってくる人もきっと腹は割ってないよね。音楽で腹割りたいとかそういう云々もないけど、いいものを作るためには何も厭わない。昔の女王蜂もそうやったやん。人が引くところで行くみたいなとことかあったけど、休止も挟んで、今回久しぶりにRECして、音楽やるのが楽しいなと思いだしてきて、より厭わなくなったかな。多分、もう私1人の話じゃないんやと思う。女王蜂なんだろうな。私はきっとすごく探してるんだと思うんだよね、無意識に。自分が音楽をやる意味とか全然どうでもいいし、色々どうでもいいけど、死ぬまでに見つけたいって気持ちがすごくあるから手段を厭わない。今はとにかくずっと音楽のこと、女王蜂のことを考えて、探してる。『あ、ここの音、BからAに下げるだけで』とか、『あの転調はフラットにするよりもシャープかも、逆に3フラット?』とか、こうやってしゃべってる段階でずっと考えてる。バンドモードとか、なんとかモードみたいなのはない。女王蜂は楽屋から女王蜂やし、楽器渡されてすぐ行けるし、車で入った瞬間でもやれるし、ずっと女王蜂なの」

——厭わないがゆえの生感もすごい。

アヴちゃん「うん、今回”ヴィーナス”があって“売春”がある。ヴィーナスが売春をするっていうので、不思議な距離に降りてきたというか、いるなって感じがするよね」

―恋愛の、そして別れのアルバムだけど、”緊急事態”の最後は明るくて希望がありますよね。

アヴちゃん「”始発”のあとは”緊急事態”って決めてたの。2つで補完されてた」

―ですよね。”始発”は聴くのがいい曲だけど揺らされるから苦しくて、それが“緊急事態”で救われる。

アヴちゃん「“始発”いい曲よね。飛び込んでこいと」

―うん。1個1個の歌詞の完成度の高さは、本当に天才だと思う。

アヴちゃん「ほんま? やったー。書いといてよ、天才だって。『紺色淡く 手放す空』、『甘え倒してたから』とか、いいよね」

―”折り鶴”もすごいけど、あれはショッキングな内容でまたちょっと意味が違う。”始発”は普遍的内容だからこそあそこまで描けるのはすごいと思った。

アヴちゃん「”折り鶴”はニュースだよね。うん、確かに今回すごいって言われるのは普遍性かな。今若くて才能のある子がいっぱいいて、もうどうしましょって。戦えもしないし、かといって引くのかって言われてもわかんないから……普遍性かな。ふと浮かぶメロディー、言葉とかが明日になっても素敵なものがいい」

―でも決して守りに入ってる普遍性じゃないのが女王蜂だと思います。王道もできるんだけど、さっきの変調じゃないけど、変なところが随所にある。逆にそのひっかかりがないと普遍性って生まれないような気がするし、それができてるのはすごいなって。

アヴちゃん「やった。拍手もらいました! 自分が好きなものとかいいなって思うものに当たると『うわあ! なんやこれ!』ってなるやん? でも今って、例えばよく音楽を聴くスタッフの子とかと話してると、『あ、次の曲きっとこういう曲だろうな』と思うとアーティストがその範疇のものをちゃん突いてくれるんだって。エレクトリックなことをやってる子が、その中でのスタンダードであるかもしれないけどばっちり当たってるものを推してきて、聴く方もそれが気持ちいいというか。次のあのアルバム良かったよ、こうきたから良かったよね。って。そういうのが“今”の“良い”みたい」

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