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ハナエ『上京証拠』インタビュー

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──福岡時代は、そんなに楽しい思い出がない?

ハナエ「まったくないですね(笑)。私、本当に友だちいなくて。中学・高校の頃はずっと1人で本を読んでて、授業が終わったらまっ先に帰るような子でした。もともとうち、親がけっこうマニアックなカルチャーが好きだったんですよ。なので家の中に、映画から音楽、小説、マンガまで面白そうなものがたくさんあって。当時はテレビで流行り物を見聞きするより、そっちを読み解いてる方が楽しかったんです。そしたらますます、周囲とのズレが大きくなってしまって……。いわゆるスクールカーストではガンガンに下の方でしたもん」

──なるほど……それ、つらくなかったですか?

ハナエ「超つらかったですよ! 今こうやってアーティストとして活動しているのも、そのとき抑圧されてた反動っていうか。『絶対見返してやる!』という気持ちを前向きなエネルギーに変換してる部分はすっごく大きいと思います」

──その頃の心のよりどころって、何だったんだろう?

ハナエ「うーん……やっぱり、音楽とファッションかな。中学生の頃、作家の嶽本野ばらさんと出会ったのがきっかけで、ロリータ・ファッションが好きになって。そこから洋服を着る楽しさに目覚めました。平日はぐっと息を潜め、土日は好きな洋服でライブに行くのが生きがいでしたね。あとTommy february6さんも大好きで、彼女が着ていたMILKに行き着いたり」

──ライブはどんなバンドを? 

ハナエ「たくさんありますけど、よく通ってたのは凛として時雨。すごい追っかけてました(笑)。あと、いろんな意味で自分を一番助けてくれたのは、ART-SCHOOL。去年12月にあったイベント(Great Hunting Night SPECIAL第一話「グレートハンティング大地に立つ!!』)で、木下理樹さんと同じステージに立たせていただいたんですけど……ほんと孤独から救ってくれた。学校への行き帰りとか、もうずっーと聴いてましたから」

──ART-SCHOOLの影響って、今でもあると思います?

ハナエ「思います。ART-SCHOOLの曲って、決して明るくはないでしょう。でも、傷ついた心や人の孤独が歌われていても、それを暗いものとして表現するんじゃなく、美しい音楽に昇華して聴き手に届けてくれる。決して器用とはいえない人が、それでもバンドを続け、素敵なCDを作って大勢の前でライブをしているって事実のおかげで、自分自身も認めてもらってる気がしたんですね。音楽の種類は全然違いますけど、私もできれば、リスナーにとってそんな歌い手でありたいなと」

──キラキラした世界の中に、ダークな部分や毒気もしっかり感じさせるポップ・ミュージック。さっきの話と繋がりますね。

ハナエ「そう。たしかに福岡時代は毎日すごく寂しかったし、暗い気持ちで過ごしていたけれど、その日々をなかったことにはしたくないじゃないですか。さっき私、『見返してやる!』という思いが原動力になってるって言いましたけど、そういう“HATE”から目を逸らさないからこそ、かわいくてキラキラした“LOVE”の部分にもリアリティーがあると思うんですね。その両方がなかったら、このアルバムはできなかったはず」

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