NeoL

開く

ペトロールズ『Renaissance』インタビュー

PETROLZ2

——新曲に関しては、個人的に「Talassa」が白眉で。どの曲もそうですけど、この曲はまさに今のペトロールズでなければクリエイトできない曲だと思います。この曲について語ってもらうことで、今のペトロールズが浮き彫りになるんじゃないかと思ってるんですね。

長岡「『Talassa』はパッとできたんですよ。調子がよかったんだと思う。得も言われぬコード感と、キラキラしたウワモノの感じと、シンプルなビートがあるというイメージから始まって」

——ペトロールズの曲は、リスナーの独立したイメージを歓喜させる曲ばかりだけれど、この曲はその極地という感じがするんです。

長岡「ありがとうございます。確かにイメージというのはペトロールズにおいて大きなキーワードだと思う。あと、他の曲は人が演奏しているというバンドの生々しさが出てるものが多いけど、『Talassa』はちょっとニュアンスが違うかもしれないですね」

三浦「そうだね」

河村「でも、この曲は最初からすごくいいものになるという予感はあったな」

——曲の構造として、クラブミュージックに近いミニマル感がありますよね。

長岡「そうですね。“音楽”というよりは“音”みたいなイメージが強いかもしれない。ちょうど10年くらい前にロンドンのクラブに遊びに行ったときに、フロアに流れてる音楽が全然踊れないと思ったことがあって。でも、現地の人たちはすごく楽しそうに踊っていて。『なんでこんな曲で踊れるんだろう?』と思ったんだけど、今なら自分も踊れると思うんですよね。『Talassa』はそういう感覚に近い曲だと思う」

——踊るモーションも個々人に託してる曲だと思うし、そういう意味でも『Renaissance』というアルバムのテーマ性に繋がりますよね。

長岡「そう思います。日本人は情報が好きだけど、情報がないと却ってクリエイティブになりますよね。新曲の中でも『Talassa』は一番実験的であると同時に、一番ペトらしい曲と言えるかもしれない」

——構造やグルーヴの極みを感じる曲が「Talassa」ならば、豊潤な歌の極みを感じるのが、「Iwai」で。

長岡「ありがとうございます」

三浦「『Iwai』は俺も大好き。あ、そうそう、その前に『Talassa』はね、ベースが2本入ってるんですよ」

長岡「LとRでベースを2本使ってるんだよね」

——そのアイデアはどういう流れのなかで生まれたんですか?

三浦「機材トラブルがあって。テイクを1回録って、もう1回録ってみようってなったときに音が出なくなって。それはエフェクターが原因だったんだけど。で、エフェクターを借りてきて、もう1回録ったときに出口(和宏/ENNDISC代表)さんが『両方入れよう』って言って(笑)。ベースが1本じゃなきゃいけないという決まりもないので、そのアイデアを採用しようってなって」

——ただ、ペトロールズはギター、ベース、ドラム、そして人の声以外は絶対に入れないじゃないですか。ミニマムな編成を重んじたうえで自由な発想を発揮している。

長岡「そうなんです。ギターやコーラスを重ねることはあっても、他の楽器は入れないですね」

——たとえば鍵盤を入れてもフィットする曲もあると思うけど、おそらくそうするとペトロールズらしさが削がれてしまう。

長岡「うん。俺はギターのことがよくわかるし、ジャンボはベースのことがよくわかるし、ボブはドラムのことがよくわかるけど、それ以外の楽器のことはわからないから。あと、何か他の楽器を入れたら、キリがなくなるじゃないですか。どんな楽器を入れてもOKになったら、トリオでやってるバンドの醍醐味が失われると思うので」

河村「『Talassa』のドラムに関しても、ライブではレコーディングの音色やフレーズを再現できないんですよ。それくらい特殊なセットで録っていて。ライブで完全に再現するなら『Talassa』用のセットを用意しなきゃいけなくなる。でも、べつにライブで完全に再現しなくても、ライブで新しいニュアンスが生まれることにペトロールズの醍醐味があるなと思うんですよね。それくらい曲がいいから。ただ、コーラスはかなり難しいだけど(笑)」

1 2 3 4 5

RELATED

LATEST

Load more

TOPICS