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Alexis Taylor『PIANO』インタビュー

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美しく透き通ったピアノの音色と、穏やかで親密なぬくもりをたたえた歌声。この、みずみずしくも削ぎ落とされた音楽を作り上げたのは、ロンドンのエレクトロ・ポップ・ユニット、ホット・チップのフロントマンであるアレクシス・テイラー。クラフトワークやニュー・オーダーの影響も受けたエレクトロ/ダンス・サウンドで知られるホット・チップだが、今回の3枚目となるソロ・アルバム『ピアノ』の制作でテイラーが用いたのは、自身のヴォーカルとピアノのみ。ホット・チップ以外にもアバウト・グループ、フェインティング・バイ・ナンバーズなど様々なプロジェクトに参加するテイラーだが、いわく、この『ピアノ』は長年温めてきたアイデアがようやく実現した作品なのだそうだ(「15年ほど前に僕の友達が、実際は制作されなかったけど提案はされたアレックス・チルトンのソロのピアノのアルバムがあったんだよ、と教えてくれたんだけど、この話がインスピレーションとなったんだ」)。

つい先日には、今作の収録曲とともに、敬愛するプリンスの“Old Friends 4 Sale”をピアノの弾き語りでカヴァーした映像を公開したテイラー。自身のキャリアにおいて特別な作品となった『ピアノ』について、テイラーにメールで話を聞いてみた。

 

―まず、ピアノとヴォーカルだけのアルバムを作ろうとした一番の理由、動機とはどのようなものだったのでしょうか? 

アレクシス「音のレイヤーを剥ぎ取って、シンプルな中でもリッチに響くようなアルバムを作りたかったんだ。あと、簡単に陥りがちなある種の制作方法から離れたかった。たとえレコーディングで電気が使われていても、純粋にアコースティックに響く、シンセを使用しない作品を作りたかったんだ。プラッシュの『モア・ユー・ビガムズ・ユー』やマーク・ホリスの『マーク・ホリス』といった、飾り気はないけど美しいレコードにインスパイアされたよ。あと、ブルース・スプリングスティーンの『ネブラスカ』にもね。これらのアルバムは何年も聴いてなくて、レコーディングを始めた時には僕の中では重要なアルバムとして認識してなかったんだけどね。アルバムのレコーディングはShuta Shinoda(注:ドーターなどの作品を手がけ、マーキュリー・プライズにもノミネートされたことのあるプロデューサー)と行ったんだ。僕が今まで演奏して聴いた中でもベストであるブリュートナーのグランドピアノと、これまた歌った中でもベストなマイクであるRCA 44BXを彼は偶然にも持ってたんだ。だから、それらを使わざるを得なかったよ。あと、聴いた人に僕が好きな曲のいくつかを思い起こさせて、新しい何かを感じさせるようなアルバムを作りたかった」

 

◎Plush / More you becomes you

 

 

―ピアノだけのアルバムを作りたい、というアイデアをあなたは長らく持ち続けていたそうですが、それがようやく実現してみて、どんな気分ですか?

アレクシス「とてもハッピーだよ。このアルバムを聴いた時に僕を誘ってくれるムードや空間が好きなんだ。この作品は他のレコードとは異なったスぺースを持ってるように感じるんだよ。ここには、驚くべきコラボレーション、サイトのアクセス規制、職場での閲覧注意画像、といった類の人々の注意を喚起するものはない。心から歌われている曲が好きな人たちに届いてほしい作品なんだ」

―あなたはホット・チップのメンバーであり、アバウト・グループのメンバーでもあり、そしてソロとしても活動されています。そうした様々な活動の中で、ソロとしてのキャリアはあなたの中でどのような意味合いやポジションに位置づけられるものなのでしょうか?

アレクシス「ソロは僕にとってとても大きなものだよ。14才の時、まずソロとして僕は音楽を作りライヴでプレイしていたからね」

 

◎Alexis Taylor / I’m Ready

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