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text by Nao Machida
photo edit by Ryoko Kuwahara

#BFF 『Tangerine』 Sean Baker Interview

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—彼女たちにはどのような演出をしましたか?


ショーン「過去の作品を観てもらって、僕の感性を理解してもらったんだ。リアリズムに基づいているから、リアルでありながら、観客を楽しませなければならなかった。でも実際にはマイヤの方から、『この映画はあなたの他の作品よりも笑えるものにしたい!』って言われたんだよ(笑)。『ここで生きる女性たちがどれだけ苦労をしているのか見せたいわ。でも同時に、すごく笑える作品にしてちょうだい』と言われた。それってバランスが難しいから、大変なことになるなと思ったよ。
でも、実際には彼女が正しかったんだ。レストランで一緒に過ごしていると、彼女たちは本当に面白いんだ。いつもユーモアで問題を乗り越えていたよ。それで、あのユーモアを作品に吹き込まなければ、噓になってしまうと思った。そこからは、常にコメディと苦しみのバランスを考えなければならなかった」


—彼女たちの人生はタフなのに、映画はすごく笑えて、絶妙な軽さがありますよね。


ショーン「どのような反応になるか、正直わからなかったよ。50/50かなと思っていた。大好きか嫌いか、どちらかだろうって。でも広く受け入れてもらえた。心から描かれた作品で、決して彼らをバカにしていないということが伝わったんだろうね。
今作では人生における本物のユーモアを観ることができるんだ。時にそのユーモアは悲劇的なところから来ているのだけど、誰だって悲劇的なことに直面するし、ユーモアで乗り越えたりするよね。そういうことをやってのける監督は何人かいるよ。アレクサンダー・ペインの『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』は悲劇的だろう? でも同時に、終始笑いが止まらないんだ。ラース・フォン・トリアーも常にやっている。リアルな人生を反映しているから、そういったスタイルやトーンが僕には響くんだ」


—劇中の2人の会話がリアルで面白かったです。アレクサンドラがシンディに「あの娘をクリス・ブラウンする(=ボコボコにする)必要はなかったんじゃない?」というシーンは最高でした。


ショーン「あれは脚本通りなんだ(笑)。僕が書いたんだけど、いまだにビクビクしているよ。いつかクリス・ブラウンに顔面パンチされるんじゃないかと思って!」


—彼女たちのアドリブはありましたか?


ショーン「いくつか素晴らしい台詞があったよ。たとえばマイヤが車内で客を相手にしているシーンで、相手が『本当はやりたいくせに』とか言うと、彼女が『私のことをお見通しなのね?』って言うんだ。あれは良い台詞だったというだけでなく、LGBTの批評家たちから重要な台詞として取り上げられた。セックスワーカーの観点から描かれるやりとりは、映画ではほとんど観られないからね。だから、彼女たちは笑える台詞を言っただけでなく、そこに自分たちの意見も吹き込んでいたんだ。それはとても重要なことだと思う」


—マイヤの歌のシーンも良かったです。夢がかなったわけですよね?


ショーン「でも、僕らが選んだ歌を嫌がっていたよ(笑)。彼女はマライア・キャリーを歌いたかったんだ!」


—とはいえ、ドリーミーで美しいシーンでした。


ショーン「ありがとう。撮影は楽しかったよ。彼女が歌った“Toyland”は、有名なクリスマスのミュージカル映画『Babes in Toyland』からの曲なんだ。僕にとっては思い出深い特別な曲なんだよ。でも彼女は『なんで私がこれ歌わなきゃいけないの?』って感じだった。だけど上手だったし、最終的にはとても満足してくれた。それにサウンドトラックにも収録されたから、とても喜んでくれた」


—ラストシーンでは演じるのを恥ずかしがっていたそうですが、2人とも素晴らしかったです。


ショーン「彼女たちは素晴らしかったよ。1テイクしか撮らなかったんだ。デジタルファイルを失くすかもしれないし、何か失敗するかもしれないから、本当は危険なんだけどね。でも、彼女たちにもう一度やらせることはできなかった。だって、あれは演技以上のものだったから。あの構図は僕が望んだ通りだった。でも、あんなにもパワフルな演技をしてくれるとは思っていなかったんだ。自分の現場で感情的になることはないんだけど、あの時だけはウルっとしたよ。彼女たちの演技が信じられなくてね。素晴らしかったよ」


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