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text by Ryoko Kuwahara

Ryotaro Muramatsu 「TOKYO ART CITY by NAKED 」Interview

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©BNEI  TM&©TOHO CO.,LTD. ※画像は演出のイメージです


——デジタル黎明期ならば全能であるという発想になってもおかしくはないのに、あくまでツールとして捉えて傾倒しなかったのは興味深いです。


村松「世代的なものもあるのかな。デジタルとアナログの狭間の世代なので混在しているんです。レコードやカセットテープで育ちながらCDに切り替えた世代なので、どちらの良さも知っている。最近はレコードへの回帰が注目されていますが、あれも単純に音がいいからだと思うんです。MP3でも音の悪さが目立たないテクノ系が流行り、志向もそうなっていく流れもわかるけれど、良い音をちゃんと体験していればアコースティックを愛でることができる。
20年以上進化を続けていく中で、当たり前のように新しいテクノロジーを取り入れていき、ハコビションからモーションマッピング、プロジェクションマッピングへ移行し、いまではインタラクティヴのアートもやっている。映画をフルデジタルで作ったのもうちが最初だと思うし、東京駅のプロジェクションマッピングのインパクトが強かったので、世間的には『テクノロジーアートの人』となっていますが、それでも諸手をあげてデジタル万歳にならないというのは、やはり“体験”を重要視しているからだと思います。だからこそ活動がわかりにくいという部分もあるかと思いますが」


——というと?


村松「例えば、NAKEDでは3年前から飲食店(9STORIES http://www.nine-stories.jp)をやっているんです。そことは別にまた新しくオープンする「THREE by NAKED」という新しいライフスタイルを食を通して提案するプロジェクトもあり、本店ではごく限られた人に特別な体験をしていただくために準備を進めています。2時間でどういう体験を作れるのかということでは、映画も食も同じ。デジタルとアナログの境目もなく、映画やマッピング、空間演出というジャンルの境もない。“体験”を軸とすると、ボーダーレスになってしまう。日本一の星空を持つ阿智村を村の人と一緒にブランディングしていたりもするし、端から見ていたら、得体がしれないだろうと思います。始めたときからこの考えは変わってないんですが、カテゴライズできないし、前例がないというので起業時は苦労しました。99%の大人に否定されましたからね。ジャンルもツールも問わない状態でやっているので、でたらめにやっているようにも見えると思うんです。でも積み重なっていくと、なにかNAKEDっぽさや僕っぽさというものが出てくるはずで。売りやキャラクターを決めてやるほうが伝達スピードは速いと思うんですが、つまんないじゃないですか。そのままで向かっていって、結果として滲みでてきたものこそが個性だと思う。だからNAKEDという会社名にしているんです」


——剥き出し、裸で向かっているという。


村松「はい。ベースにあるものは変わらないし、そこは大切にしているけれど、ファッションが変わるように表層が変わる。でもそれでいいと思っています。変わっていかないと。
物理的にも常に細胞は入れ替わっているのだから、固定化した“自分らしさ”なんてあやしいものですよね。僕らがリアルと思っている物質世界自体が量子学的に見るとかなり危うい。全てが幻想とも、全てがリアルとも言える。どこからが作り出されていて、どこからが本物かという境目が曖昧な、有と無の間を常に彷徨いながら僕らは生きているというか」


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