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text by Meisa Fujishiro
photo by Meisa Fujishiro

藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#54 砂糖抜き

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 ネットのそれぞれの説には、科学的な説明などされているので、興味を持たれたなら、いろいろなブログやページを覗いてみる価値はある。砂糖には百害あって一利なしというのが、大方の論調だが、健康飲料として有名な酵素ドリンクは白糖を使う。実際その効果を認めつつも、作る過程で白糖をたっぷり使うことに抵抗がある人も多い。それに対しては白糖だからこそ効率的に植物の有効成分を浸透圧効果によって抽出できるという説明がされている。それでもやはり白糖を使う点で酵素ドリンクは受け付けられない人がいても不思議ではない。結局、何を摂るかは勘も含めてその人の判断であるからだ。
 この辺のことを、もうすこし言うと、結局成分だけでは説明しきれない食物の効果が在るという私の勝手なイメージが前提にあって、さらにそこには個人の心身の差が生む相性もあるだろうから、美味しいと喜んで口にするものには、きっとその人にとって良い物として成り得るのだろうと思う。ただ、体調への影響など、マイナス面が自覚され、それが気になり始めたら、その食べ物とは一旦距離を置くタイミングなのだろうと思う。
 ただ、砂糖は依存性が高く、過剰摂取していると体がサインを出していても、それに対する冷静な判断力を鈍らせてしまうらしいので、そこが厄介ではある。暑い日が続く夏には、コンビニの前を通ると、ついアイスクリームボックスへと引き寄せられがちだが、意識的に砂糖を抜く週を作ったりして、それ自体を習慣化できたら最高であるが、なかなか難しくもある。友人を誘って励ましあいながら、遊びの一つにしてしまうのも手ではある。
 それが、科学的なものだとしても、学説というのは後年に覆され更新されることが、ままある。現時点での常識が、100年後、いや半年後には、笑われることさえ起こり得る。特に健康や美容に関することは流行もあるので、自分に合うかどうかは試してみることだ。


 ひとつの方法に執着せずに、映画を見るような気軽さで、遊び半分な気持ちぐらいで試すのが私にはちょうどいい。
 今回の砂糖抜きも、ひとつの遊びでもあった。
 食後のデザートがこの世から消えてしまった世界の残酷さを、私は一ヶ月だけ覗いてみたのだが、案外それほど悲劇的なものではなかった。日によっては清々しささえ感じるほどで、ずっと聴いてきたバンドが解散したよりも重要ではなかった。
 愛着というのは習慣化された執着のようなもので、無くなってしまえば、案外さっぱりしているものだ。スーパーでゆであずき缶を見かけても、アンテナはぴくりともしなかった。人は時に曲がり角をわけなく曲がれるものだ。
 

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