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text by Shiki Sugawara

14 Issue:出会いたい映画たち。出会いたかった映画たち。

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映画は、いま自分がいる場所からは遠くて見えない景色を見せてくれる。そして、家庭や学校では話されないことが世界に存在すると知らせてくれる。そう、まるで心強い友人のようだ。今回は、14歳の頃にそばにいてほしい、いてほしかった数本を、一生の友人を紹介するような気持ちでセレクトした。



1.『サムサッカー』





スポーツ映画ではない。サム(thumb)は親指、サッカー(sucker)は吸う人、つまり親指を吸う人のお話だ。主人公のジャスティンの高校生になってもとれない親指吸いの癖を、周りは「情けない」とやめさせようとしているし、彼自身もそれを恥ずかしく思っている。ある日遂にADHD(注意欠陥・多動性障害)の薬リタリンの服用を始め一旦症状は治まったようにも見えたのだが……。親指吸いをやめさせようとしている大人たちをよく見ていると、彼らだってそれぞれ何かに依存して生きている。好きな芸能人、タバコ、過去の栄光。人間は何かに依存せずに生きられるほどタフではないし、生活の中に潜む不安の存在は無視できるほど小さくない。そんな不安と上手くやっていくにはどうしたらいいのだろう?ジャスティンと一緒にじっくり考えてみよう。


2.『ダンサーインザダーク』





実はこれ、14歳当時に観てそれ以来一度も観れていない。あれほど声を上げて泣きながら映画を観たのはそれまでもそれからもない。たった二時間の映画が生んだ「よくもこんなものを作りやがって」という怒り、「なんでこんなものを作ったのか」という疑問はいまだに心にどすんと座っている。人間が作る表現というものは、こんなにも自由で強大な力を持つものなのかと思い知らされた。もうあんなに悲しくて辛い思いをするのはこりごりなのであれ以来ずっと逃げ続けている作品だ。しかし私はいつかまたあのラストシーンまで見届けければならない気がしていて、その復讐の時期を伺っている。皆さんにも”乗り越えなければならないトラウマ”を植え付けたくて選んだ一本。



3.『この世界の片隅に』




これまで作り上げてきた自分の頭の中というものは、いかに偏ったものだったのだろう、そんなことをそっと気づかせてくれる優しい映画だ。本作は太平洋戦争中の広島に生きる主人公すずの生活を描いたアニメーション作品で、戦争とともに生きざるを得なかった人間たちの”生きようとする力”という側面に焦点を当てた。そして戦争についてだけではなく、学校で教わることやネットで目にする意見だけがこの世界の全てではないことを、片隅で生きる”すずさん”を見つめることで私たちは知る。



4.『桐島、部活やめるってよ』




もしあなたがいま勉強や部活、仕事、恋愛など何かに取り組んでいるとしたら、それは一体何のためかすぐに答えることが出来るだろうか。この映画のタイトルにある桐島は作中一度も登場しない。バレー部キャプテンである彼が突如部活を辞め一切姿を現さなくなったことが教室に混乱を巻き起こす。特に登場人物、宏樹は桐島の不在でパニックに陥っている。野球部でもエース、勉強もトップクラスで友人も彼女もいるイケメンがどうして?いっぽう桐島の不在に全く影響されない人物、冴えない童貞の前田。この二人のある”大きな違い”が分かったとき、いま自分が取り組んでいることへの意味が見えてくるはず。


5.『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』




天才高校生たちが、世界を股にかけてカンニングをする犯罪サスペンス映画。しかし、彼らがカンニングをする理由は、ただ親や先生に褒められたいからでも友人にチヤホヤされたいからでもない。「こっちが騙さなきゃ、世間に騙される」と中指を立てる”バッド・ジーニアス”たちにルールなんて関係ない。他の誰でもない自分を守るため、鉛筆一本で世間と戦う超クールでアナーキーな彼らの姿はとても勇気づけられる。この映画、実話をもとに作られたというのも驚きだ。


text by Shiki Sugawara



『サムサッカー』
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『ダンサーインザダーク』
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『この世界の片隅に』
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『桐島、部活やめるってよ』
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『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』
アップリンク渋谷ほかで上映中OFFICIAL SITE


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