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終戦直後の古書の街・神保町で巻き起こる不可解な事件とは




古書の街として日本中からその名を知られる神田神保町。明治10年代ごろ、神田界隈に次々と創立された法律学校(明治法律学校〈現・明治大学〉、英吉利法律学校〈現・中央大学〉など)に通う学生の需要を見込んで誕生したこの古書店街は130年以上の歴史を持つ。太平洋戦争中も空襲を受けなかったため、終戦後、営業を再開した古書店には、生活に困窮した人々が本を売ろうと詰めかけたという。


そんな終戦直後の神田神保町古書店街を舞台にしたミステリ小説が『定価のない本』だ。


主人公は終戦から復興を遂げつつある神田神保町の古書店店主・琴岡庄治。古書の山に圧し潰される皮肉な最期を遂げた仲間の後処理を申し出るが、彼の周囲では次第に奇妙な出来事が起こり始める。不可解な事故現場、行方を眩ました被害者の妻、注文帳に残された謎の名前……古書店主の死をきっかけとした探偵行はやがて巨大な陰謀に収斂されていく。


本書は謎解きをメインとしたミステリ小説ながら、終戦直後の古書店街の様子やGHQの占領政策など当時の社会情勢にも詳しい。事件が進むにつれ、戦後の混乱期に神田神保町古書店街が果たした「特別な役割」が浮き彫りになっていく様は一つの歴史小説に近く、ミステリ好きだけではなく、歴史や古書好きの人も楽しむことができる作品。


『定価のない本』
門井慶喜
東京創元社
1870円
Amazon

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