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ゴミ山からドレスはつくれるか――中里唯馬に1年密着したリアル・ファッション・ドキュメンタリー『燃えるドレスを紡いで』


 

 

 
パリのオートクチュール・コレクションに日本より唯一参加するファッションブランドYUIMA NAKAZATO(ユイマ ナカザト)。そのデザイナー中里唯馬に1年密着したリアル・ファッション・ドキュメンタリー『燃えるドレスを紡いで』が3月16日に公開となる。
中里唯馬は、2008年にベルギー・アントワープ王立芸術アカデミーを卒業し、2009年自身の名を冠したブランド「YUIMA NAKAZATO(ユイマ ナカザト)」を設立。翌年7月、日本人では森英恵以来2人目となるパリ・オートクチュールコレクションの公式ゲストデザイナーに選ばれ、継続的にパリで作品を発表。コレクション等で、数々の世界で活躍するアーティストともコラボレーションを果たしてきた。近年は、オランダ出身の気鋭振付家ナニーヌ・リニング(NanineLinning)によるボストン・バレエ団 の新作バレエ『ラ・メール』(LaMer)の衣装デザインを手がけ、 また先日、日本人デザイナーとしては初となるフランスでのソロエキシビションも発表された。
 

 

 
中里唯馬と共に異国の地へ渡り、本作の監督を務めたのは関根光才監督。映像作家としてキャリアをスタートし、手がけた広告映像作品は国際的なクリエイティブアワードで多数受賞。2018年に初めて長編劇場映画の監督・脚本を担った『生きてるだけで、愛。』で、新人映画監督に贈られる新藤兼人賞・銀賞、フランス、キノタヨ映画祭・審査員賞などを受賞。国内外問わず映像界にて活躍する関根監督は、以前別の企画で中里と仕事をし、意気投合。本作ではアフリカ・ケニアへ同行すると共に、初となる中里のショーの裏側にも密着。普段は見られないクリエイターの葛藤、新しい挑戦、チーム一丸となってショーの成功へ向かっていく姿などファッションだけではない、「中里唯馬」という人物にフォーカスされたドキュメンタリー作品を完成させた。
関根監督は中里の挑戦、そして本作について「今回、唯馬さんのパリコレの制作プロセスを追いかける中で、ファッションが抱える大きな社会課題にチャレンジしている画期的な技術が日本にあることも知りました。近しい夢を見ている人々と共創して、ゴミという概念も、服に対する概念も、もしかしたら『何がオシャレでスタイリッシュなのか』ということに対する概念も、違う角度から見れるようになるきっかけになれればというのが今回の作品です。」とコメントを寄せている。
 

 

 
予告編は、ファッションデザイナーとして痛烈なメッセージと共に始まる。ファッション界の先端を走る中里は「生み出された衣服はどこに行くのか」という問いの答えを探しに、 衣服の最終到達点といわれるケニアに向かい、「ファッションの現実」を直接目にする。
スモーキーマウンテン、異臭、川に流れる古着、現地の人々の生活。
中里は絶望し、自分がこれまでデザイ ナーとしてし発表してきた事に自問自答しながらも、パートナーシップを結ぶセイコーエプソン株式会社の協力により最先端技術とのコラボレーションを見 出し、新素材生地とデジタル捺染を融合した、新しい衣服づくりの可能性に挑戦する。
 

 
中里は本作が公開されることについて「衣服は何処からやって来て何処へ行くのか。私たちは普段、息をするように、当たり前のように
服を着て生活しています。本作を観た方たちが、少し立ち止まって、衣服って何だろう、何で着ているんだろう、そんな風に考えるきっかけになっていただけましたら嬉しいです。」とコメントを寄せている。
ここ数年で社会全体が「SDGs」を打ち出している今、本作で描かれているのは「SDGs」を訴える現実ではなく、一人のファッションデザイナーが「現実」にぶち当たった時に何ができるのか。そしてそれを見出した瞬間が映し出された時、あなたにできることは何か――。
普段のおしゃれから少し意識を変えるだけで、未来につながる可能性が発見できるドキュメンタリーだ。

 


『燃えるドレスを紡いで』
2024年3月16日(土)K’s cinema、シネクイント他 全国順次公開
https://dust-to-dust.jp
出演:中里唯馬 監督:関根光才
プロデューサー:鎌田雄介
撮影監督:アンジェ・ラズ 音楽:立石従寛 編集:井手麻里子 特別協力:セイコーエプソン株式会社 Spiber
日本 / 2023 / 89分
 
【コメント全文】
関根光才監督
ゴミという問題は非常に深刻です。
でもゴミという概念は人間が作ったもの。自然界にはゴミという概念自体が存在しないからです。ならばゴミとされているものを新しい資源として、より本気で捉えられないだろうか? 今回、唯馬さんのパリコレの制作プロセスを追いかける中で、ファッションが抱える大きな社会課題にチャレンジしている画期的な技術が日本にあることも知りました。 近しい夢を見ている人々と共創して、ゴミという概念も、服に対する概念も、 もしかしたら「何がオシャレでスタイリッシュなのか」ということに対する概念も、 違う角度から見れるようになるきっかけになれればというのが今回の作品です。
中里唯馬
もともとは別の企画で知り合い意気投合した関根監督から、2年ほど前に世界の実情を一緒に見に行ってその旅をドキュメンタリーにしないか、と提案されたところからはじまりました。結果的に私のショーの舞台裏のすべてにカメラが入るという私にとっても初めての経験になりました。
衣服は何処からやって来て何処へ行くのか。
私たちは普段、息をするように、当たり前のように服を着て生活しています。
本作を観た方たちが、少し立ち止まって、衣服って何だろう、何で着ているんだろう、 そんな風に考えるきっかけになっていただけましたら嬉しいです。
そして自分の目の前にある「衣服」の見えてない部分へ、想像力を広げていただけたらもっと嬉しいです。実は見えていないことのほうが大きいと思うので、たどり着く先を本作で垣間見ることにより、服に対する見え方がきっと変わると思います。

 
中里唯馬
YUIMA NAKAZATO
2008年にベルギー・アントワープ王立芸術アカデミーを卒業し、2009年自身の名を冠したブランド「YUIMA NAKAZATO(ユイマ ナカザト)」を設立。
翌年7月、日本人では森英恵以来2人目となるパリ・オートクチュールコレクションの公式ゲスト デザイナーに選ばれ、継続的にパリで作品を発表。
近年は、オランダ出身の気鋭振付家ナニーヌ・リニング(NanineLinning)によるボストン・バレエ団の新作バレエ『ラ・メール』(LaMer)の衣装デザインを手がけ、また先日、日本人デザイナーとして初となるフランス・カレーでのソロエキシビションも発表された。

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