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Fashion/Reborn: 「今はその感情を純度の高いストレートな表現でアウトプットしたい」Interview with 山越翔太郎

NeoL Magazine JP | Photo:
山越翔太郎 Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara


誰もが経験したことのないニューノーマルの時代に突入している中、クリエイティヴ業界では、アート/コマーシャルの垣根を超えて新たな側面から制作に取り組む姿勢が見受けられる。今回は、様々なバックグラウンドを持つフォトグラファーたちの創造力・技術への向き合い方を探りながら、華美な物語からストリートで巻き起こるファッションフォトグラフィーの過去・現在・未来においてどのような変遷が起きているのか掘り下げていく。
滑稽さを交えた神秘的な世界観と魅惑的な表現を駆使し、オーディエンスの想像力を掻き立て、深さのある作品に仕上げるという特徴を持つフォトグラファー山越翔太郎。自身の様々なバックボーンやライフスタイルを着想源とし、込み上げてくる無念さや空しさなどの感情を俯瞰しながら、作品に落とし込んでいる。撮影の際は、モデルの設定に重点を置き、別の角度から時代を切り取り、独自の思想を反映させていくと語っていた山越のアウトプットに対するマインドセットについて焦点を当てていく。


ーー自己紹介をお願い致します。フォトグラファーになった経緯など。

山越「生まれた頃、祖父が写真館を営んでいて父もカメラマンでした。周りに機材や設備がある環境で育ちましたが、特に写真に興味が有るわけでもなく、作品の制作などはしていませんでした。名古屋にある写真の専門学校に入学したきっかけもそれだけと言われたらそうなのですが、そこで徐々に撮ることの楽しみを感じながらチーム制作の難しさも学びました。その後、東京のスタジオワーク、アシスタントを経て現在に至ります」

ーーどのようなプロセスを経て、現在のスタイルに至ったのかお聞かせください。

山越「アシスタントの時に撮っていた作品はリファレンスの画像に忠実に沿ったものを撮っていました。良く言えばオマージュだったんですがオリジナルとは全くかけ離れていましたので、その考えから脱却したくてロケハンからストーリーを考えることを始めました。行った場所の雰囲気からモデルの人物像を連想するプロセスが自分にはフィットしているように思えたので、全てではないですが今でもそういうきっかけで制作を始めたりしています」

ーーどのように自身の個性/アイデンティティーを作品に落とし込んでいますか。また、どのようにそれを極めているか教えてください。

山越「今までどんなものに影響を受け、感化されて自身が形成されているかを知るために、幼い頃に聴いていた音楽を聴いたり、何度も観ていた映画を改めて観たりなど、ルーツを遡ることをたまにするようにしています。自分の中の様々なバックボーンやライフスタイルが織り混ざって表現したいことが湧き上がってくると思うので、過程で得た思いを作品に反映することが個性につながるのかなと思っています」

ーー作品をクリエイトする際、心掛けることはありますか。

山越「ミーティングの段階で明確なメッセージをチームで共有できるよう意識しています。その中でも特に重要だと感じるのがキャラクターのセッティングです。個人的にそこがテーマを肯定するための最も重要な要素だと思っていますし、着地点さえブレなければ、あとはセッションの中でテーマに対してのオリジナリティが出せればと思っています。最初から最後までなんとなくで出来てしまった作品は作らないように心がけています」

ーー撮影の際、ライティングなどこだわっている点がありましたら、教えてください。

山越「好みの話になってしまうのですが、陰影のあるライティングにしたいとは思っています。なるべくシンプルな表現で深さを出せるように心がけています」

ーー作品のストーリーやメッセージ性はどのように決めますか。

山越「自分自身のメッセージの生まれるきっかけは、ネガティブを吐き出したいと感じた時だと思っています。様々なニュースを見て感じる無念さだったり、日常の中で感じる空しさなど、自分のスタンスや出来る表現で形にしたいと考えています」

ーーインスピレーション源はどこから湧いてきますか。

山越「できるだけあらゆるジャンルからアイディアの源泉になるものを常に探しています。それはすでに具象化された写真や映像からはもちろんですが、音楽や風景やその日の光など、実体はないけど自身の琴線に触れたものをストックするように意識しています」

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山越翔太郎 Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara


ーーどのように現代の流れと自身のスタイルのバランスをとっていますか。

山越「世界中の多くの作品がSNSで見ることができるので、情報源として活用しながら新しい表現を模索しつつも、自分の興味があることをいかに大切にいられるかが重要だと思っています。やっぱり今までを通してブレずにずっと興味があることは自分にとって強烈な意味合いがあると思うので、もちろん柔軟に考え方は変えていかなくてはけないと思う反面、執着してずっと持っていたいこだわりもあります。その2つの要素を両立させていくことが大事になっていくと思います」

ーー現在、デジタルカメラの普及、インスタグラム、フィルターや編集アプリの発展により誰もがフォトグラファーになれる時代、ファッションフォトグラファーにとってメリットやデメリットなどはありますか。

山越「様々なジャンルのクリエーターが業種の垣根を越えて表現できるフィールドがあるというのは、既成概念にとらわれることなく多くの新しいアイディアが生まれるきっかけになると思っていますが、その反面でアートの性質よりもエンターテイメントの側面を強く求められるようになってきたように思います」

ーー新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、ファッションフォトグラフィーの業界においては、どのような影響がありましたか。

山越「月末現在でまだ撮影が以前のように行えている状況ではないので、今回のパンデミックの影響を痛感することはまだまだここから増えていくと思いますが、今一番初めに浮かんだことは、ミーティングがオンラインで行われるようになったことでしょうか。もちろん現状を踏まえた最善の方法であることに賛成した上で、やはり撮影前には出来れば実際にお会いして、一緒に制作していただく方々の熱量や雰囲気を感じて本番に臨めることがベストだと思っています」

ーーSocial isolation(外出自粛)の期間が長引いている中、自身のクリエーションに対する捉え方などに変化はありましたか。

山越「普段目にしている写真やアート以外の多くのジャンルに目を向けるきっかけとなった期間でした。世の中に既存する様々な物事を知れば知るほど、それに対しての反発の思想も芽生えてきたりして、今はその感情を純度の高いストレートな表現でアウトプットしたいです」

ーー今後、新たにチャレンジしてみたいことはありますか。

山越「フィルムの作品を増やしたいです」

ーーこれからどういう風にファッションフォトグラフィーは変化していくとお考えですか。

山越「ここ数年の間にメディアの多様化によって、ファッションも映像での表現を求められるようになりました。写真でしかできない瞬間的な表現の重要性に今一度フォーカスできるタイミングなのかと思っています。数年先にどのような作風が主流になっているかは想像できないですが、時代を捉えながらも表現として写真を選択する意味を改めて考えたいです」

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山越翔太郎 Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara


Photographer: 山越翔太郎
IG @shotaro_yamagoe
HP shotaroyamagoe.com

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