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text by nao machida

International Women’s Day 2022 持続可能なわたしたち : いま観たい映画5選




3月8日の国際女性デーに向け、女性をエンパワメントする、またはジェンダー平等を考える小特集。2022年のIWDのテーマは「持続可能な明日に向けて、ジェンダー平等をいま」。ジェンダーギャップ指数が先進国の中でも著しく高く、若年層の女性の性や家庭内でのケア労働など、とかく女性が消費される構造で成り立っている日本。女性が消費されず、尊厳や選択を持続可能なものとするための問いを投げかける。

ここでは、自分らしい生き方を求めて闘う女性たちの物語や、伝説的スターの知られざる素顔に迫るドキュメンタリー、アフリカ大陸の女性たちが直面する悲惨な現実を取材したルポルタージュなど、さまざまな角度から女性にスポットライトを当てた5つの映画を紹介する。




『ふたつの部屋、ふたつの暮らし』

ニナとマドレーヌは、南仏にある同じアパートの向かい合う部屋を行き来しながら、表向きには隣人として生活している同性カップル。ニナは独身。マドレーヌは不幸な結婚の末に夫に先立たれ、子どもたちはすでに独立し、穏やかな引退生活を送っている。長年にわたって密かに愛を育んできた2人の夢は、アパートを売却してローマに移住すること。だが、マドレーヌは子どもたちに真実を伝えることができないでいた。そんなある日、マドレーヌが悲劇に襲われ、2人は究極の選択を迫られることになる…。社会の障壁の中で自分らしい生き方を求めて闘う女性たちを、サスペンスフルに描き上げた異色作。ストーリーのスリリングな展開にハラハラさせられながらも、それぞれの登場人物の立ち位置から社会を見つめ、考えを深めることができる。フィリッポ・メネゲッティ監督は長編デビュー作にして、2020年のセザール賞で新人監督賞に輝いた。 


4月8日(金)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
https://deux-movie.com/




『オードリー・ヘプバーン』
映画史に輝く名作を数多く遺し、時代を超えて多くの人々を魅了し続ける伝説的スター、オードリー・ヘプバーンの長編ドキュメンタリー。初の主演作『ローマの休日』(1958)で、24歳にしてアカデミー賞主演女優賞を受賞して以降、唯一無二の存在感で数々の作品に出演し、世界中の映画ファンから愛されたオードリー。俳優、ファッションアイコン、そして晩年はユニセフ国際親善大使としても活躍した彼女だが、幼少期の父親の裏切りや、ナチス占領下のオランダで育った苦難の日々、バレリーナになる夢を諦めた過去、2度の離婚など、その人生は決して順風満帆ではなかった。映画は、貴重なアーカイブ映像に家族や友人たちのインタビューを交えて、オードリー・ヘプバーンという一人の女性の生涯と知られざる素顔に迫る。内から滲み出る魅力にあふれた在りし日の姿や、息子たちを含む、人生の様々な時期に彼女を側で見守ってきた人々の言葉によって、オードリーとその力強く懸命な生き様に改めて魅了される。


5月6日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国公開
公式サイト:https://audrey-cinema.com/



『ムクウェゲ 「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師』

「女性にとって世界最悪の場所」と呼ばれるアフリカ・コンゴ民主共和国の東部ブガブでは、20年以上にわたって40万人以上の女性がレイプの被害を受け続けている。その理由は、レアメタルなど豊かな鉱物資源がこの地に埋まっているから。武装勢力はその利権を得るために、性暴力によって住民を恐怖で支配しようとしているのだ。本作は、何万人もの被害者を無償で治療してきた婦人科医、デニ・ムクウェゲ氏の闘いを追ったドキュメンタリー。ムクウェゲ氏はもちろん、被害に遭った女性たちや、かつて武装勢力の一員だったレイプ加害者の証言も交えて、今もなお続いている悲惨な現実を描き出す。あまりに残酷で目を逸らしたくなるが、コンゴで採掘される鉱物資源は先進国のスマートフォンにも使用されており、これは私たちにとっても他人事では済まされない問題だ。ムクウェゲ氏はその活動が認められ、2018年にノーベル平和賞を授与されたが、彼の闘いは今日も続いている。  


2022年3月4日(金)より、全国順次公開
公式サイト:http://mukwege-movie.arc-films.co.jp/






『17歳の瞳に映る世界』

内気で友だちも少ない17歳の高校生オータムは、ある日、予期せぬ妊娠をしていることに気づく。だが、彼女が暮らすペンシルバニア州では、未成年が親の同意なしに中絶手術を受けることは禁止されていた。事態を解決するため、オータムは唯一の親友であり従妹のスカイラーと共に、誰にも告げずにニューヨークへと向かう…。映画は少女たちの数日間の旅を、まるでドキュメンタリーのように淡々と描き出す。まだ幼さの残る2人の危うい旅路の端々で浮き彫りになるのは、女性が人生において、女性であるがゆえに直面する不条理な現実。まるで感情を失ったかのように多くを語らず、一人で妊娠を受け止めようとするオータムに、スカイラーは多くを聞かず、ただ寄り添って連帯を示す。「Never Rarely Sometimes Always(一度もない、滅多にない、時々、いつも)」という一風変わった原題も、観た後には忘れられないタイトルとなった。






『プロミシング・ヤング・ウーマン』

“プロミシング・ヤング・ウーマン”とは、“前途有望な若い女性”を意味する。キャリー・マリガンが演じるミステリアスな主人公キャシーも、かつては“前途有望な若い女性”だった。医大時代の悲しい事件をきっかけに、約束されていた明るい未来を奪われるまでは。今は実家で両親と暮らし、カフェでアルバイトをしているキャシーは、夜になると別人のような姿で街へと繰り出し、泥酔したフリをした自分を持ち帰る男たちに制裁を加えている。そんなある日、バイト中に医大時代の同級生と再会した彼女は、ある壮絶な計画を企てる…。想像を絶する展開が大きな話題を呼んだ本作は、Netflixの人気シリーズ『ザ・クラウン』でカミラ役を演じたエメラルド・フェネルが、自身のオリジナル脚本を映像化したスリリングな復讐劇。皮肉なほどカラフルでポップな映像を通して、女性たちを苦しめる不公平な現実だけでなく社会に蔓延るジェンダーバイアスも描き出し、すべての人に考えるきっかけを与え、世界中で議論を巻き起こした。フェネルは監督デビュー作にしてアカデミー賞で5部門にノミネートされ、脚本賞に輝いた。



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