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text by Daisuke Watanuki
photo by Yudai Kusano

清原果耶『1秒先の彼』インタビュー



台湾映画『1秒先の彼女』の日本版リメイク映画『1秒先の彼』が、岡田将生と清原果耶のW主演で2023年7月7日(金)に公開される。何をするにも“ワンテンポ早い”彼・ハジメと、何をするにも“ワンテンポ遅い”彼⼥・レイカ。不器用かつユニークな2人の「ある1日」をそれぞれの視点で描く、タイムラグ・ラブストーリーとなる。監督は『天然コケッコー』『苦役列⾞』の⼭下敦弘、脚本は『あまちゃん』『俺の家の話』の宮藤官九郎が初タッグを組むことでも話題だ。今回は主演の一人である清原果耶にインタビュー。自身の役や映画が伝えるメッセージについて話を伺った。



ーーヒロイン・長宗我部麗華(ちょうそかべ・れいか。以下レイカ)の役柄は清原さんのイメージにぴったりでした。演じていて自分と似ている、共通していると思った部分はありましたか?


清原「レイカちゃんは自分の好きなものを大事にしているなと思いました。カメラがずっと好きで長いこと趣味にしているところとか、皇一(すめらぎ・はじめ。以下ハジメ)くんのことを思い続けているところとか。そういう一途な姿勢や、まっすぐな気持ちを持ち続けているところは、とても似ているかもしれないと感じました」


ーーレイカはワンテンポ遅く、周囲のペースから微妙にズレてしまう女性でした。その設定にはコミカルさもありましたが、今の世の中のめまぐるしい変化やスピード感を思うと、レイカのようにそれに合わせられずに苦労している人も多いだろうなと感じます。清原さん自身は、時代の流れや他者とのスピード感の違いにちゃんとついていける方ですか?


清原「過去にはついていけないと思ったこともありました。しかし最近は考え方が変わってきて、『別に追いつかなくてもいいや』と思えるようになってきました。自分が毎度毎度、時代や他者に対してペースを合わせなくてはいけないという考え方を辞めてみようかなって。自分と他者の間にペースの差を感じてしまったときは、ちょっと1人でどこかへ行ってみると案外自分を取り戻せるということに気づいたり。そうしていたら、輪から外れることに対しても怖がらなくなってきました。ずっと自分を抑えつけていても、大変なのは自分だけ。 そこで無理をし続ける必要があるときも出てくるだろうし、合わせようと努力することも大切です。でも、絶対そうしなければいけないなんてことはないですし、もっと気楽に自分のペースで歩んでもいいのだろうなと思います」





ーーレイカという役についてはどう理解して演じましたか? 役作りで苦労したことなどあれば教えてください。


清原「レイカはふわっとした印象の女の子です。ただ、山下敦弘監督とずっと話していたのは、捉えどころがなくはっきりと物事を表現できるタイプではないけれど、別にクールでも寡黙でもないよね、ということ。柔らかさと、可愛らしい部分を残せたらいいなと思っていました。ワンテンポ遅いということについては、具体的にどう表現したらいいか監督と相談して、シーンによっては、もう2、3間待ってみるという工夫をしています。そういう細かい調整は役作りにも直結したのだろうなと思います。たとえば何か物音が鳴っても、レイカちゃんは振り返れない人物です。瞬発力を発揮してはいけないので、演じる上では普段とは違った気の張り方をしていました。何かが起きても、反応しないように現場ではかなり意識していました」



ーー他には監督とどのようなお話をされましたか?


清原「基本的に現場では役についての話がメインでした。ただ、些細なことでいえば京都の美味しいご飯屋さんの話などはみんなでしていました。コロナ禍だったのでみんなでご飯は行けませんでしたが、ここに美味しいご飯屋さんがあったという情報を、岡田さんや監督、他のキャストのみなさんと一緒に共有していました」



ーー本作は、京都という舞台が生かされた設定やストーリーです。清原さんは出身が関西なので京都も身近だと思います。京都に懐かしさを感じることも多かったのではないでしょうか。


清原「京都には家族ともよくお出かけで行っていたので、思い出深い場所もたくさんあります。それこそ撮影ではお借りしていないですけど、清水寺などのいわゆる観光地にはよく行っていたので、撮影の前にはマネージャーさんと一緒に散策をしました。京都での撮影は結構大掛かりなシーンもあったので、本当に多くの方にご協力いただきました。みなさんのおかげで仕上がったので、感謝しています」


ーーみんながイメージしやすいわかりやすい京都だけではなく、日本海側もロケに使われたのが印象的でした。そのおかげでより多面的な京都の魅力が映っていたと思います。


清原「そうですね。天の橋立がある宮津での撮影はとても良いものになりました。『あ、ここも京都なんだ』と改めて気づく、知って下さる人もいるのではないでしょうか。京都の観光地の賑やかな雰囲気とはまた打って変わって、 ゆっくりと落ち着いた時間が流れた場所でした。私は今回のロケで初めて天の橋立に行ったのですが、また行きたくなるような場所だなと感じました」





ーー京都という土地のノスタルジックさもそうですが、「手紙」「紙焼き写真」「ラジカセ」といったアナログなキーアイテムが象徴的に登場していたことも、時代の流れに逆行するかのような絶妙な効果を生んでいたと思います。清原さん自身、アナログなものに惹かれる経験はありますか?


清原「それこそフィルムカメラは劇中でレイカちゃんが使っていましたけど、私自身も惹かれたアイテムです。 使い方もわからずに買ったのでフィルムの巻き方すらまだよくわかっていないままなのですが(笑)。レイカを演じたことでますます魅力を再認識していたところです。改めてフィルムを巻く練習をしようかなと思いました」



ーー本作の中で、特に清原さんが面白いと感じたシーンや、おすすめのシーンはどこでしょうか。


清原「岡田将生さん演じるハジメくんのお家でのシーンです。片山友希さん演じる妹の舞ちゃんと、しみけんさん演じる舞ちゃんの彼氏のミツルくんと、ハジメくん3人がガヤガヤと楽しそうに騒いでいるシーンがもう大好きで。みなさんビジュアルもすごいじゃないですか。なんて派手なシーンだろうって思っていて。一方でレイカちゃんは誰かと一緒にいることもなければ、騒ぐようなシーンもほとんどない女の子なんですよね。だから余計に、あーいいなぁと思いながらこのシーンは観ていました」


ーーレイカちゃんは一人の部屋でご飯を食べていましたもんね。


清原「そうですね。ただ、1人で鍋焼きうどんを作って食べているところも個人的には大好きなんです。そこの対比が面白いつくりになっているなと思いました」


ーー個性的な登場人物ばかりでしたが、特に好きな人物はどなたですか?


清原「加藤雅也さん演じるハジメくんの父、平兵衛さんです。びっくりするほど野暮ったくて古めかしいお衣装を着てらっしゃるのに、すごく様になっているんですよね。現場ではみんなで、 加藤さんってすごいねと言っていました。キャラクター像についても、加藤さんご自身の人柄や人生観みたいなものが投影されているような、すごく深みがある役だったなと思います。口からそうめんを垂らすようなお茶目なシーンもあるのですが、私もそういう役をやってみたいなと思って観ていました」





ーー宮藤官九郎さん脚本の作品って、それこそビジュアルからキャラの強さがわかる登場人物も多いですが、そういう方だけでなく、ちゃんとすべての役に個性的といえるような性格・側面を与えていますよね。「ふつう」の人なんて本当はこの世にはいないんだよと思わせてくれるというか。


清原「そうなんですよね。レイカちゃんもわりとぼやっとしている女の子という印象で見られると思うのですが、なんかよくよく知れば、他のキャラクターに負けず劣らずというか、すごく個性的なんですよね。それが表面上に見えているかどうかの違いなだけなんだろうなと思います」


ーー本作は関西弁でのお芝居でした。『セトウツミ』『ジョゼと虎と魚たち』などたびたび関西弁をつかう機会があったと思いますが、今回、京都出身の役ということで言葉で意識したことはありますか?


清原「京都弁と大阪弁はやっぱり全然違うんですよね。今までどちらの役も経験してきましたが、京都弁と大阪弁の差となると、すごく繊細な調整になっていく。そのことに苦戦した過去を今回思い出しました。私が初めて出演させていただいたドラマはNHKの連続テレビ小説『あさが来た』だったのですけど、その作品も京都が舞台。作品の最中は京都弁指導の先生にビシビシと指導をしていただいきました。あのときの気持ちを思い出して、気持ちを引き締めました。そして音源を聞いたり、先生と話をしながら調整をしていきました」



ーー流行、世の中の流れ、風潮の変化、他者のスピード感。速さに追いつかなくては取り残されてしまう時代に、この作品のゆっくりした雰囲気に救われる人は多いと思いました。この作品をどのような方に届けたいと思いますか?


清原「確かに時代のものさしで比べられたり、何かあると周囲から色々言われてしまうような時代ではあると思います。そんな中で、なんかちょっと窮屈だなとか、このままの自分でいいのかなと迷っている方に観ていただきたいです。本作はそういう方々を肯定できる力のある作品だと思っています」




『1秒先の彼』
2023年7月7日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
https://bitters.co.jp/ichi-kare/#modal
監督:山下敦弘 脚本:宮藤官九郎
岡田将生 清原果耶
福室莉音 片山友希 しみけん 笑福亭笑瓶 松本妃代 伊勢志摩 柊木陽太 加藤柚凪 朝井大智 山内圭哉
羽野晶紀 加藤雅也 荒川良々

上映時間:119分 / 製作:2023年(日本) / 配給:ビターズ・エンド
(C)2023『1秒先の彼』製作委員会


郵便局の窓口に勤めているハジメは、子供の頃から何をするにも1秒早く、一方レイカは1秒遅かった。ハジメは路上ミュージシャンの桜子に恋に落ち、デートの約束をするが、起きると約束の翌日だった。失われた大事な1日の秘密を握るのはレイカのようで……



photography Yudai Kusano (https://www.instagram.com/yudai_kusano/
hair&make-up Kengo Kubota(aiutare)
styling Megumi Isaka(dynamic)
text Daisuke Watanuki(https://www.instagram.com/watanukinow/


blouse ¥2,970 (VANNIE U/Auntie Rosa)
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