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text by Nao Machida

ノー・ローム『Crying In The Prettiest Places』 インタビュー/Interview with No Rome about 『Crying In The Prettiest Places』




フィリピン・マニラで生まれ育ち、現在はロンドンを拠点に活動するミレニアル世代のシンガー/プロデューサー、ノー・ロームが、5月に待望の新作EP『Crying In The Prettiest Places』をリリースした。彼を見出したThe 1975のフロントマン、マシュー・ヒーリーが共同プロデューサーを務め、同じくThe 1975のジョージ・ダニエルがプログラミングを担当した新作には、本人いわく前作よりも私的でエモーショナルな6曲が収録されている。The 1975と北米ツアー中のノー・ロームに電話インタビューを行い、自身のバックグラウンドや新作に込めた思いを語ってもらった。(→ in English



――もしもし、今どちらですか?


ノー・ローム「ハロー!今日はバージニア州にいるんだ。ちょうど自分の出番が終わったところ。The 1975とツアー中でね」


――ツアー中にお時間ありがとうございます!まずお聞きしたいのは、どのような経緯で音楽を始めたのですか?


ノー・ローム「僕はフィリピン出身で、父は趣味として、母はパートタイムのボーカルコーチとして、両親ともに音楽が大好きだった。だから家庭内で音楽はとても大切な存在で、それによって僕もインスパイアされて音楽を作るようになったんだ」


――いつ頃から音楽をやっているのですか?


ノー・ローム「5年生の頃だよ。当時はバスケットボールに夢中だったんだけど、父が作曲できるソフトの使い方を教えてくれて。それで夢中になって、とりこになってしまった。幼い頃にピアノを習っていたんだけど、当時はあまり真剣に考えていなかったんだ。でも曲作りを始めてからは、楽器について学んだ方がより良いミュージシャンになれるとわかった。そうやってはまっていって、音楽が日常的なものになっていったんだ」


――どんな音楽を聴いて育ちましたか?


ノー・ローム「最初に触れた音楽はニューウェーブとか80年代のダンスミュージック。父親がアナログ盤を持っていたんだ。僕のお気に入りはニュー・オーダーで、他にもジョイ・ディヴィジョンやデヴィッド・ボウイ、ネイキッド・アイズなどを聴いていた。それから個人的にも好きな音楽を見つけるようになり、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやスローダイヴのようなバンドを聴くようになって、大好きになった。そういったバンドの影響で曲作りを始めたんだと思う」





――今はUKを拠点に活動されているそうですね。


ノー・ローム「今はロンドンをベースにしているんだ」


――なぜロンドンに?以前から地元を出たかったのですか?


ノー・ローム「マニラを出たかったというよりも、芸術的・音楽的に活動範囲を広げたかったんだ。尊敬しているほとんどのミュージシャンやアーティストの出身地だから、ロンドンはずっと好きだった。だから若い頃から行きたいと思っていて、そしたらレコード契約ができた。現地に飛んで自分の目でロンドンの街を見る機会があって、2ヶ月ほど滞在したら現地のアートシーンに夢中になったよ。僕はロンドンが大好きで、もう2年半も住んでいる」


――レコード契約を結んだのは何歳のときですか?


ノー・ローム「19歳くらいのとき。インターネットのおかげなんだ。ずっとネットで自分の音楽を発表していたんだけど、全然広まっていなかった。でも時とともにいろんな人が聴いてくれるようになって、The 1975のマシュー・ヒーリーと出会うことができた。レーベル(Dirty Hit)の他の所属アーティストたちのこともリスペクトしているし、ぜひ契約しようと思ったんだ」





――新作EPのタイトル『Crying In The Prettiest Places』(=最も美しい場所で涙する)の由来は?


ノー・ローム「僕にとっては、ほとんどの収録曲にほろ苦いフィーリングが感じられるんだ。そしてそれは、美しい場所で悲しい曲を書いている自分のことでもある。とても良い場所なのに心ここにあらずで、美しい場所にいながら紙の上で泣いているような気分だった。だからこのタイトルが浮かんだんだと思う。『Crying In The Prettiest Places』は、“どうしてこんな美しい場所で泣いているの?喜ぶべきだよ”というような、ほろ苦い言葉なんだ」


――どこか特定の美しい場所をイメージしていたのですか?


ノー・ローム「正直に言って、日本は素晴らしいよ。フィリピンは別として、日本は僕にとっての美しい場所だ。僕は東京が大好きなんだ。東京で『Do It Again』という楽曲のミュージックビデオを撮影したんだけど、すごく楽しかった。いつかまた行ける日を楽しみにしているよ」


――1作目のEPから約1年経って、いろんなことが変わったのではないかと思いますが、新作ではどのようなものからインスピレーションを得ましたか?


ノー・ローム「音楽的、芸術的な自分の生い立ちがインスピレーションになったのだと思う。ファーストEPは入門的なものだったけど、今はもっといろんなことができるように感じているんだ。アーティストとして活動する上で最高なのは、成長していけること。それに、このEPは以前よりも私的でエモーショナルだ。アコースティックギター主導の曲もあるし、全体のヴァイブスが気に入っている。制作していてすごく楽しかったから、リリースできてうれしいんだ」


――本作で新たにトライしたことはありますか?


ノー・ローム「すべてが新しかったと思う。僕はとにかく新しいサウンドを作るのが大好きなんだ。特に『Rimbaud, Come and Sit For a While』という曲が気に入っている。アコースティックギター主導の新しいスタイルで、僕にとっては新鮮なんだ。あの曲に夢中だよ(笑)」


――ライブでの新曲への反応はいかがですか?


ノー・ローム「最高だよ。今はThe 1975とツアーをしているから、ものすごく楽しいし、たくさんの人が来る。観客が僕の曲を知っていてびっくりするよ。行ったことのない場所や、一回しか行っていない場所なのにね。みんなが僕の曲を歌っているのを聴くと刺激を受けるんだ」





――The 1975とコーチェラ・フェスティバルのステージで共演したそうですね?


ノー・ローム「コーチェラは素晴らしかった!あれは僕にとって最大規模のライブだったんじゃないかな」


――どのような気分でしたか?


ノー・ローム「ステージに参加できて光栄だった。1曲だけ(The 1975とのコラボレーション楽曲「Narcissist」)プレイしたのだけど、素晴らしかったよ。コーチェラ(の主催者)が非常に右寄りで、ホモフォビック(同性愛嫌悪)な考えであることには賛成できないけど、間違いなく良い経験だったし、すごく楽しんでプレイできた」


――ベッドルームで曲作りを始めて、今はこうして北米ツアーを回っているわけですが、これまでの道のりはいかがでしたか?


ノー・ローム「圧倒されるけど、僕は人生を通してずっと音楽を作ってきたんだよね。自分のサウンドをちゃんと発展させて、自分がどのようなアーティストになりたいのかを考えることができたから、すごく良いタイミングでチャンスをいもらえたんだと思う。ベッドルームからコーチェラへの飛躍は大きかったけど、僕は今でもベッドルームでの作業が大好きだよ。今後も続けていって、いつか自分で出演枠をもらえたら楽しいと思う」


――フィリピンのご家族もあなたの成功を喜んでいるのでは?彼らはあなたのライブを観たことがありますか?


ノー・ローム「家族は僕を誇りに思ってくれている。父は僕の大ファンであり、一番厳しい批評家でもあるんだ(笑)。父親ってそういうものだよね。でも家族が応援してくれてラッキーだよ。彼らはフィリピン国外でのライブはまだ観たことがなくて、実現したいと思っているところ。昔はしょっちゅう観に来てくれたんだ。僕は13歳くらいの頃からライブをしていて、最初はパンクバンドでギターとシンセとヴォーカル担当だった。父はずっと前に僕のライブを観るのをやめたんだけどね。『ライブへの送り迎えは終わりだ、自分で運転しろ!もうお前のライブは観たくない』って(笑)。いつも会場に送ってもらっていたからね」


――今後の予定は?フルアルバムの予定はありますか?


ノー・ローム「アルバムについては、まだ何も言えないんだけど、今年はもっとたくさんの楽曲を発表するとだけは断言できる。今はミックステープを手がけていて、とても面白いものになりそうなんだ。今のところ言えるのはそれだけ(笑)。でも、曲作りはしているよ。このツアーでは半分の時間を曲作りに、半分の時間をステージに費やしているからね。今年はたくさんの曲を聴かせられるはずだ」





text Nao Machida
edit Ryoko Kuwahara



No Rome “Crying In The Prettiest Places”
Now On Sale
(Dirty Hit / Hostess)


<トラックリスト>
01. 5 Ways to Bleach Your Hair
02. Stoned In The Valley
03. Cashmoney
04. Pink
05. Rimbaud, Come and Sit For A While
06. All Up In My Head

http://smarturl.it/c1herl



No Rome
マニラ出身で現在はロンドンを拠点に活動するシンガー / プロデューサー。The 1975のマシュー・ヒーリーとジョージ・ダニエルが共同プロデュースを手掛けたデビューEP『RIP Indo Hisashi』をUK気鋭レーベル<Dirty Hit>から2018年8月にリリースした。2019年に行われたUS最大の音楽フェス、コーチェラにてThe 1975との共演曲「Narcissist」を披露、The 1975の世界ツアーのオープニング・アクトを務める。2019年5月に2nd EP『クライング・イン・ザ・プリティエスト・プレイセズ』をリリースした。

This interview is available in English

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