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確固たる意思が作り上げた日本最高峰の野外フェス、FUJI ROCK FESTIVAL ’19閉幕




のべ13万人を動員したFUJI ROCK FESTIVAL ’19。音楽の祭典としてはもちろん、近年は音楽好きのモデルやデザイナーたちが訪れることからファッションスナップなどでも賑わいを見せている。フジロックがこれほどに様々なシーンに注目されるには、商業的成功に走りすぎることなく、しっかりと音楽フェスとしてのクオリティの高さが保たれていることが一つの要因だが、そのクオリティコントロールには開催者側の理念がぶれていないことが重要だ。年々、人種やジェンダーなど多くのジャッジポイントをもって出演するフェスを厳選しているミュージシャンは増加傾向にある。その中でも特に厳しい目を持ち、強い声をあげているアーティストに愛されるフジロックは開かれたフェスなのだと改めて感じた3日間であった。











早くから売り切れがアナウンスされ、聴衆が殺到した7月26日(金)。THOM YORKE TOMORROW’S MODERN BOXESは、彼ならではの深淵で永遠を具現化したようなどこまでも広がるサウンドスケープとともにイギリス政府への批判を歌った。新世代のソウルの旗手であるJANELLE MONÁEは圧倒的なパフォーマンスで観客を飲み込んだ後に、差別や偏見と戦いマイノリティに寄り添う声をあげた。その流れを受けるには完璧な存在である、多くのフィメールSSWをエンパワメントするMITSKIはコンテンポラリーアートのような独創的なパフォーマンスを披露し観客を釘付けに。一方、グリーンのトリを務めたTHE CHEMICAL BROTHERSはキャリアを周回するような選曲と群を抜いた扇動力で魅せ、そのスクリーンには“LOVE IS ALL”の文字を大きく映し出した。深夜のレッドマーキーでのYAEJIもまたダンスミュージックの吸引力と楽しさを最大限に発揮しながら、韓国とアメリカという自身の2つのバックグラウンドを見事にオリジナリティに昇華した様を見せてくれた。












7月27日(土)、夜間の激しい雨によって一部プログラムの変更もあったものの、この日も圧巻のパフォーマンスが続出。早耳のリスナーたちが注目するメリーナ・ドゥテルテ率いるJAY SOMは気負うことなくオルタナティヴなサウンドを響かせ、グラミー賞ノミネートでも話題をさらったR&Bの新鋭DANIEL CAESARは戦争、砂漠、子供、女性などの映像を流しながら、全てを包み込むような艶のある歌声を披露。豪雨で時間変更が余儀なくされた新体制のDEATH CAB FOR CUTIEは上質なメロディを確信的に打ち出し、ファンの不安を払拭。中でも衝撃だったのはアルコールやドラッグの中毒であった過去、そしてクィアであることを公言しているSIAのステージだ。顔を晒さず直立不動のまま歌う彼女の恐ろしいほどの歌唱力、スカートから分身として世に放たれたマディー・ジーグラーによる高次元の身体的表現力。抑圧と衝動が共存する彼女の世界観、伝えたいメッセージを一分の隙もなく魅せた完成されたステージは滂沱の雨に打たれていることも忘れるほどの体験だった。











7月28日(日)、最終日。親友からレイプ被害を告白された体験を元に書かれた“Boys Will Be Boys”で一気にその名を知られるようになったSTELLA DONNELLYは、耳馴染みの良いサウンドをベースにマチズモにNOを叩きつける。目をみはる楽曲の良さと多彩な表情をもつヴォーカルで韓国から世界的なバンドへ飛躍しているHYUKOHの実力は苗場でも120パーセントに発揮。KOHHからエレクトロやハウスを下敷きにした中毒性のある音像に独特のラップでスタイルを確立しているVINCE STAPLESという最高の流れでオリジナリティを追求する新しい世代のアーティストたちが続く。『Assume Form』で内省的だった過去作から変貌を遂げたJAMES BLAKEによる有機的なライヴサウンドに酔う。そしてどこにも所属することなく、自流を貫く孤高のアーティスト平沢進+会人(EJIN)が降臨。レーザーハープ、テスラコイルを目にしただけでも血が湧くが、さらにトリプルギター、シンセで異質ながらも踊りを誘う楽曲たちを従えるさまはまさにレジェンドのそれで、その配信も今尚拡散され続けている。
ポリシーを持った国内外のアーティストたちがこれほどに集い、信頼を寄せるFUJI ROCKが日本にあることの意義はとてつもなく大きい。

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