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text by Ryoko Kuwahara
photo by Akiko Isobe

Interview with St.Vincent by Rei

NeoL_StVincent3_| Photography : Akiko Isobe | Edit : Ryoko Kuwahara


Rei「同じミュージシャンとしての質問をしてもいいですか。あなたは12歳の時からギターを弾いていますよね。難しい質問かもしれませんが、あなたにとってはギターとはどういう存在ですか」


Annie「面白いことに、ギターとの関係は変遷を続けているわ。一時期は、ギターは私のアイデンティティの核となるものだったの。未だにそうだけど、作曲する時にそんなにはギターを使わないから、何かすごく変な感じなんです」


Rei「曲を作る時にギターを使わないんですか?」


Annie「そうね、あまり使わない。私にとっては武器やシールドのようなもので、みんなが思っているほどギターを持って練習することはない。曲を書く時は、全然違う楽器で遊んでみたりするし」


Rei「とてもよくわかります。ヴォーカルよりも前にギターを見られることが多いですよね。私は4歳の時にクラシックギターを始め、のちに60年代のロックなどにも影響を受けてました。でも私は歌手であって、曲を通してみんなに届けたいメッセージがある。おっしゃっていた通り、ギターは聴いてくれている人にイメージを思い描かせるための武器やツールなのかもしれないです。とはいえ、あなたのリフは本当に突出したものがありますよね。どこからフレーズをピックアップしているのですか。どのように練習して、発展させているのでしょう」


Annie「私の一番お気に入りのギターのリフは大抵、偶然思いついたメロディから来ている。ギタリストは身体で覚えていることがとても多いから、無意識にブルーズなどに戻りたがっている時もある。いろんなチューニングで遊ぶことで、いつもと同じような音を作ることを避けられると思う。同じシェープでも、チューニングをいじれば全く違う音を作れるものです」


Rei「私も曲作りをルーティンにしてしまったら似たような曲を作ってしまうから、毎回独特で新鮮な曲作りのやり方を考えています。マジカルな答えはないかもしれないですけど、曲作りでスランプに陥ったときのアドバイスはありますか?」


Annie「ええ、あるわ。本当に躓いている時は、一旦別のフィジカルなことをやってからまた曲作りに戻ることかな。例えば、ギターの部分を構築していて何かイマイチな感じがしたら、主旋律を作ったり、プログラミング、メロディに没頭してみたり。あと、メロディを思いついたらすぐに録音することが大事。そしたらメロディが必要な時に前に録音したのを並び替えたりできるし、中途半端なメロディを組み合わせてひとつのキーに合わせたり、シンセサイザーを使ってクールに仕上げたり、やれることはたくさんある。いろんな方法で曲作りはできます。大事なのは、書き続けること。そして使い慣れていない楽器を使ってみたりすること。例えば、ベースで曲を作ったりね。弾き慣れてない楽器だとコードのクオリティなんかを気にせずに曲を作れるからオススメよ」


Rei「ありがとうございます。St. Vincentは私にとって音楽の化身であり、女神のような存在なんです。だからこそ作曲や演奏をしていない時に何をしているのか、まったく想像がつかなくて」


Annie「いまは短編映画を作るのが楽しいわ。将来映画の監督をしたいと思っているんです。数年後はそれが私の大きなプロジェクトになっているかもしれない。映画を作るうえでは、計画性がとても大切だから、その準備ばかりやっているの。ネット上で趣味を聞かれること沢山あるけど、どう答えればいいか本当にわからないのよ」


Rei「本当に根っからのクリエイターなんですね。私は、ひとりの時間は絵を描いたりして過ごすのが好きです」


Annie「それも結局は何かを創っていることだし、音楽作るのと似たようなものじゃない?」


Rei「確かにそうですね。では、最後の質問です。前回のインタビューで夢からインスパイアされた曲を作ったと聞きました」


Annie「多分歌いながら起きた曲のことだと思う。ええ、その曲もアルバムに入れたわ」


Rei「今夜はどんな夢をみたいですか?」


Annie「いい質問ね。そうね、アメリカの大統領がドナルドトランプじゃないっていう夢を見たいかな」

NeoL_StVincent4 | Photography : Akiko Isobe | Edit : Ryoko Kuwahara


photography Akiko Isobe
text & edit Ryoko Kuwahara


St_Vincent / Masseduction (jake-sya)(HSU-10160)
St .Vincent(セイント・ヴィンセント)
『Masseduction (マスセダクション)』
10月13日 (金)発売
(Loma Vista / Hostess)
2,490円+税


<トラックリスト>
1. Hang On Me
2. Pills
3. Masseduction
4. Sugarboy
5. Los Ageless
6. Happy Birthday, Johnny
7. Savior
8. New York
9. Fear The Future
10. Young Lover
11. Dancing with a Ghost
12. Slow Disco
13. Smoking Section
14. 政権腐敗 (Power Corrupts)*日本盤ボーナストラック

※日本盤にはボーナストラック1曲、歌詞対訳、ライナーノーツ付(予定)
※新曲「New York」、「Los Ageless」配信中&アルバム予約受付中!
リンク:http://smarturl.it/237on9



St.Vincent
NYブルックリン在住のセイント・ヴィンセントことアニー・クラークはポリフォニック・スプリーやスフィアン・スティーヴンスのツアー・メンバーとして活動を開始。現在までにソロ・アルバム4枚、デヴィッド・バーンとのコラボ作を1枚発表している。11年に<4AD>からに発表した3作目『ストレンジ・マシー』は全米19位を獲得し、世界中で年間ベスト・アルバム上位を獲得。12年にリリースしたデヴィッド・バーンとのコラボ作『ラヴ・ディス・ジャイアント』は各メディアの年間ベスト獲得の他、第55回グラミー賞へノミネートされ話題をさらった。2014年にリリースした『セイント・ヴィンセント』は第57回グラミー賞「最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム」を受賞、USチャート12位を獲得し多くのメディアで年間ベスト・チャート上位にランクインした。2014年度年間ベスト・アルバム1位(クロスビート、NME、Guardian)、2位(Time
誌)、3位(ミュージック・マガジン「アメリカ/カナダ部門」獲得した。2017年6月に突如新曲「New York」をリリース。同年8月に開催されたHostess ClubAll-Nighters のヘッドライナーとして来日を果たした。2017年10月に5枚目となる新アルバム『マスセダクション』をリリースする。
http://ilovestvincent.com/



Rei
シンガー・ソングライター/ギタリスト。幼少期をNYで過ごし、4歳よりクラシックギターをはじめ、5歳でブルーズに出会い、ジャンルを超えた独自の音楽を作り始める。2015年2月、長岡亮介(ペトロールズ)を共同プロデュースに迎え、1st Mini Album『BLU』をリリース。FUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONIC、RISING SUN ROCK FESTIVAL、SXSW Music Festival、JAVA JAZZ Festivalなどの国内外のフェスに多数出演。2017年7月、CD+MUSIC BOOK『CRY』のリリース。7月8日フランス・ベルフォールで行われたフェス「Les Eurockeennes」に出演、7月14日より初東名阪ワンマンツアー「CRY BABY TOUR 2017」を敢行。2017年12月より初のソロ・アコースティックツアー「Rei Acoustic Tour “Mahogany Girl”」を行う。
http://guitarei.com/?lang=ja#content5

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