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宮城県の養豚場での取材から着想を得たインスタレーション作品を展開。アーティストデュオ・MESの個展「カイ/KA-I」開催


Photo by Jun Yokoyama



麻布台ヒルズ内にある「Gallery & Restaurant 舞台裏」にて、2025年7月4日(金)よりアーティストデュオ・MESによる個展「カイ/KA-I」が開催中。

Gallery & Restaurant 舞台裏は2023年11月の開業以来、絵画や写真、映像、インスタレーションなど、幅広い現代芸術作品を紹介してきた。
その活動の中で、特にキュレーターの齋木優城は、芸術と社会の交差性に着目した展覧会づくりを行っている。

本展に参加するMESは、新井健と谷川果菜絵によって結成されたアーティストデュオ。ふたりが東京藝術大学在学中の2015年より活動を開始し、今年で活動10周年を迎える。

ナイトクラブにおけるレーザーVJのパフォーマンスで注目を集め、その後もクラブカルチャー、現代美術の領域を横断しながら作品を発表し続けている。

近年の個展として、緊急事態宣言下の国会議事堂に中指の形のレーザーを投影した作品を発表した「DISTANCE OF RESISTANCE / 抵抗の距離」(2021年、TOH)、停戦のメッセージを象ったワックスに火を灯すパフォーマンスでガザ侵攻への抵抗を訴えた「祈り/戯れ/被虐的な、行為 P-L/R-A/E-Y」(2024年、CON_)などがある。

また、メキシコシティでの「URBAN GAZE」展(2024年、APRDERESP)参加、日本の若手アーティストとキュレーターの国際的な活躍を目的とする「JUMP アーティスト+キュレーター国際協働プログラム」選出によるロサンゼルス現代美術館との共同展示(会期未定)など、日本国外にも活躍の場を広げている。


MESは、かねてより宮城県の養豚場でリサーチを行い、「陸路(スピルオーバー#1)」(2024年、アートセンターBUG )などを通じて作品を発表してきた。今回の個展においては、同養豚場での取材から着想を得たインスタレーションを発表。展開されるのは、人間と動物/支配と被支配という二項対立に疑問を投げかけ、食肉や飼育をめぐる身体感覚を問い直す作品群が展開される。









Photo by Jun Yokoyama


MES個展「カイ/KA-I」
開催期間:2025年7月4日 (金) 〜 2025年7月27日 (日)

会場:Gallery & Restaurant 舞台裏

住所:〒105-0001 東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA B1F

営業時間:

<ギャラリー>【火-日】 11:00-20:00

<レストラン>
【火-金】13:00〜22:00(L.O.21:00)
【土】13:00〜21:00(L.O.20:00)
【日】13:00〜17:00

※13:00〜17:00はカフェ営業となります。

定休日:月曜定休

※月が祝日の場合は翌日が休業日となります。

観覧料:無料

アクセス:東京メトロ日比谷線神谷町駅5番出口より、駅直結 徒歩1分

※エレベーターあり、バリアフリー(車椅子、ベビーカーの入場可能)


参加アーティスト:MES

キュレーター:齋木優城

制作協力 :ホープフルピッグ、高橋希望

主催:ArtSticker (運営元:The Chain Museum)



スペシャルイベント


<海の日の会>
2025年7月21日(月)17:00

7月21日は「海の日」=「カイの日」。運命的な響きを持ったこの日に、展覧会に関する食材を味わいながら、アーティストと参加者が共に食卓を囲み語り合う、特別なイベント「海の日の会」を開催。

このイベントでは、MES「カイ/KA-I」展の舞台でもある「Hopeful Pig」代表の高橋希望とGallery&Restaurant 舞台裏でシェフとして活躍する箱石和行の協力のもと、皆様でご試食をお楽しみいただける小さなメニューをご用意する予定。(おひとり様2,000円)。
詳細・ご予約はこちら:https://artsticker.app/events/83261


<クロージングトーク(ゲスト:渡辺志桜里)>
2025年7月27日(日)17:00

アーティストデュオMESによる個展「カイ/KA-I」の最終日、展示のテーマである「支配/被支配」をめぐる文化的構造を多角的に読み解く場として、クロージングトークイベントを開催。

トークイベントではゲストにアーティスト・渡辺志桜里さんをお招きし、人間と動物の間に横たわる「支配/被支配」のパラダイムをあらためて問い直す。

登壇者:

渡辺志桜里(アーティスト)

MES(本展参加アーティスト)

齋木優城(Gallery&Restaurant 舞台裏 キュレーター)

※トークショーは入場無料・予約不要
詳細はこちら:https://artsticker.app/events/85802


展覧会ステートメント


ー「家畜とは、「人間の種類」」である。*

「ホープフルピッグ」は、2011年の東日本大震災をきっかけに始まる。大津波のあと、五頭の母豚たちが倒壊したエサタンクの中で生き延びていた。エサタンクに残ったエサの中で身を寄せ合う姿を発見し、その命を現在も繋いでいる。

農場には「ホープフルピッグ」がやってくるずっと昔に使われていた廃墟の畜舎がある。そこは、メスの豚たちが繁殖のために生涯のほとんどを過ごす妊娠ストールと分娩ストールの畜舎だ。金属製で冷たく固い同じフォルムのストールが何百、何千と連結して並んでいる。その間を人ひとり、あるいは豚一頭が通れるだけの通路が続く。これらのストールは、特定の人間が家畜を管理する効率のためだけに作られ、動物の習性はまったく無視されている。人間が人間、あるいは「動物」とみなすような人間を管理し使役する劣悪な工場や収容所、監獄とおよそ似た作りをしている。

こうした負の遺産を解体しながら、新しい養豚の営みを試行錯誤している農場「ホープフルピッグ」は、衰退しつつある第一次産業として、かつての集約畜産の廃農場を転用してアニマルウェルフェアを追求する農場として、絶滅危惧種の命を紡いでいる砦として、私たちの未来を予知している。

養豚家の希望さんは、今回、私たちに「人間のためのアニマル・ウェルフェアな場を作っていきたい」と語った。私たち人間は動物たちを見つめながら、動物としてまた動物によって心身を解されていく。

「カイ/KA-I」は、解と快、海と灰、介と飼…を廻る、懐とXへの邂逅である。

MES


* 河原梓水(2024)『SMの思想史 戦後日本における支配と暴力をめぐる夢と欲望』、青弓社、356頁

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