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映像制作への初期衝動。8組のアーティストによる「3分以内(推奨)」の映像が集結する「Try the Video-Drawing」展が開催




TAV GALLERYにて、5月14日 (金) – 5月31日 (日) まで、企画展「Try the Video-Drawing」が開催。本企画は、すべての出展作品が、「3分以内(推奨)」の映像となり、ペインティングでいうところのドローイングのように、映像にとっての最も根源的な表現性と可能性を示すグループショーとなる。


参加作家は、泉太郎、大木裕之、岡田裕子、オル太、小林勇輝、小宮りさ麻吏奈、田村友一郎、林千歩の8組。


それぞれ、映像を用いた作品の制作を、1990年代、2000年代、2010年代と、異なる時代にはじめたのみならず、異なるアイデンティティから活動をはじめた作家たちだ。しかし、今回の参加作家は通じて、現在において定義されつつある標準的な映像作品というものを疑い、映像とは何かではなく、映像で何ができるか、という課題と対峙し、常に社会的な問題を含めて問いつづけている。2020年代とその先へと向かう映像の方向性として、ドキュメンタリー、ナラティブ、インスタレーション、インタラクティブといった技法を更に変化させうる可能性を、即時的だからこそ凝縮された創作の衝動を、ぜひその目で。



本企画は、出展作家でもあるアーティストの林千歩とTAV GALLERYの共同企画であり、林が抱いている制作に対する次のような葛藤について会話を重ねるなかで着想をえて実施する運びになった。


「映像はつくれないのに、増えていくのはアイデア帳のドローイングだけ──。私は、2019年の森美術館「六本木クロッシング」での発表以降、ここしばらく新作の発表ができていませんでした。これまで、私は、感受性から作品をつくってきて、だから、なんでこれをつくったのか、と尋ねられても言語化が難しく、でも何の意味がないのかと言ったらそうではなく、自分は、言語化ではなく、イメージ化で作品をつくってきました。でもあるときから、言語化と感受性を絡めて、求められる言語化にも応えようとして、バランスを崩していました。私はこれまで「変身」をキーワードとして「なぜ変身するのか」という自分の動機や衝動性を掘り下げる作品を、主に映像で発表してきたアーティストです。「美と醜」「老いと若い」「男性と女性」など対極にあると考えられるもの同士を繋げ、同等のものとして扱う、不可能を可能にする「変身」の効果を表現してきました。そして今回、こうした葛藤を自覚しているからこそ試みるのは、自分のなかにある、アーティストとしていまこの時期にこういうことをするべきだという悩みと、一人の人間としての人生の悩み、この対極の悩みを繋げることです。そして、その方法として選択したのが、自分にとって小さいときから悩みを抱えずに描きつづけている、現実さえ超える想像力をもつドローイングの感覚、これを起点に、映像を制作することでした。今回の企画は、私個人の葛藤から着想がはじまったものですが、そのなかで得た、ドローイングの感覚からだからこそ、映像作品に対しての制作の本質や動機や衝動が垣間見られることの可能性、それを広く共有したいと強く思い、今回の企画には、私が年齢や実績に関わらず尊敬するアーティストのみなさんを、共同企画者の西田さんと相談して、お誘いさせていただきました。私にとっては、約4年ぶりとなる新作の映像の発表となります。みなさんとご一緒できることを心より感謝いたします」(林千歩)


本展の出展作家は、こうした林の想いに賛同したアーティストであり、また、キュレーターである西田編集長にとっても、アーティストとの共同において、こうした葛藤は、自らが担う役割ではないと無意識に外部化していたことに気付かされた契機となり、特にこと表現の根源の探求という意味において、強く共感し、まだ言語化できないことにこそ寄り添わねばならないと改めて深く思い知る出来事となったという。映像という表現が、ひとつの形式として、作家にとっても鑑賞者にとっても定着したいまだからこそ改めて立ち戻る、映像制作への原初的な初期衝動とは。


名称 : Try the Video-Drawing
会期 : 2021年5月14日 (金) – 5月31日 (日)
会場 : TAV GALLERY (東京都杉並区阿佐谷北1-31-2) [03-3330-6881]
時間 : 13:00 – 20:00
休廊 : 水曜、 木曜
出展作家 : 泉太郎、大木裕之、岡田裕子、オル太、小林勇輝、小宮りさ麻吏奈、田村友一郎、林千歩
企画 : 林千歩、西田編集長

協力 : ANOMALY、Take Ninagawa、MIZUMA ART GALLERY、Yuka Tsuruno Gallery

ビジュアルデザイン : 阪本あかり


http://tavgallery.com/try-the-video-drawing/


参加作家プロフィール


泉太郎 IZUMI Taro
1976年奈良県生まれ。多摩美術大学美術学部絵画学科卒業。同大学院美術研究科修士課程修了。映像やパフォーマンス、インスタレーションを組み合わせ、不条理とも言える感覚を呼び起こすような作品を手がける。近年の個展に「ex」(ティンゲリー美術館, バーゼル・スイス, 2020) 、「コンパクトストラクチャーの夜明け」(Take Ninagawa, 2020) 、「My eyes are not in the centre」(White Rainbow, ロンドン・イギリス, 2018) 、「突然の子供」(金沢21世紀美術館, 2017) 、「Pan」(パレ・ド・トーキョー, パリ・フランス, 2017) など。
https://www.takeninagawa.com/artists/237/


大木裕之 OKI Hiroyuki
1964年生まれ。アーティスト、建築家。東京大学工学部建築学科在学中の80年代後半より映像制作を始め、映像というメディアを通して、「思考すること」を真摯に探求し続けている。主な展覧会に「愛知トリエンナーレ」(2016) 、「 [被曝70周年: ヒロシマを見つめる三部作 第1部] ライフ=ワーク」(広島市現代美術館, 2015) 、「マイクロポップの時代:夏への扉」(水戸芸術館, 2007) 、「Out of the Ordinary」(ロサンゼルス現代美術館 MOCA, 2007) 、「シャルジャ・ビエンナーレ」(アラブ首長国連邦, 2007) 、「六本木クロッシング:日本美術の新しい展望2004」(森美術館) 、「How Latitudes Become Forms」(ウォーカー・アート・センター, ミネアポリス・アメリカ, 2003) 、「時代の体温」(世田谷美術館, 1999) など。主な受賞に「第45回ベルリン国際映画祭」ネットパック賞 (「天国の六つの箱 HEAVEN-6-BOX」[1994-95] ) 受賞など。
http://anomalytokyo.com/artist/hiroyuki-ojki/


岡田裕子 OKADA Hiroko
1970年東京都生まれ。現代美術家。多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。映像、写真、絵画、インスタレーションなど、様々な表現を用いて、自らの実体験ー恋愛、結婚、出産、子育てなどーを通したリアリティのある視点で、現代社会へのメッセージ性の高い作品を制作。主な展覧会に、アルスエレクトロニカセンター常設展示 (リンツ・オーストリア, 2019) 、「第11回恵比寿映像祭」(東京都写真美術館, 2019) 、「ダブル・フューチャー」(個展, ミヅマアートギャラリー, 2019) 、「LESSON 0」(韓国国立現代美術館果川館, ソウル, 2017) 、「Global Feminisms」(ブルックリン美術館, ニューヨーク・アメリカ, 2007) 、「MOTアニュアル2005 愛と孤独、そして笑い」(東京都現代美術館, 2005) など。2010年よりオルタナティブ人形劇団「劇団★死期」主宰。
https://mizuma-art.co.jp/artists/okada-hiroko/


オル太 OLTA
東京を拠点とする表現活動集団。メンバーは井上徹、川村和秀、斉藤隆文、長谷川義朗、メグ忍者、Jang-Chiの6名。2009年結成。いずれも多摩美術大学絵画学科油画専攻出身。人間の根源的な欲求や感覚について、自らの身体を投じたパフォーマンスを通じて問いかけている。主な展覧会に「超衆芸術スタンドプレー 夜明けから夜明けまで」(個展, 北條工務店となり, 2020) 、「パノラマ庭園-動的生態系にしるす」(アッセンブリッジ・ナゴヤ2016, 愛知) 、「Hybridizing Earth Disscussing Multitude」(釜山ビエンナーレ2016, 韓国) など。主な受賞に「第14回岡本太郎現代芸術賞」岡本太郎賞受賞 (2011) など。
https://olta.jp/


小林勇輝 KOBAYASHI Yuki
1990年東京都生まれ。2014年ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ学位課程卒業後、日本人として初めてロイヤル・カレッジ・オブ・アート、パフォーマンス科に入学、2016年修士号修了。自身の身体を中性的な立体物として用い、性や障害、人種的な固定観念に問いかけ、自由と平等の不確かな社会コードを疑い人間の存在意義を探るパフォーマンス作品を中心に発表。主な活動に、2018年アーツカウンシル東京より東京芸術文化創造発信個人助成を授与され、ドイツ・BundeskunsthalleにてMarina ABRAMOVIĆによる回顧展「The Cleaner」にパフォーマーとして参加、「Dance New Air 2018」にて個展「Life of Athletics」(VACAVT, 2018) 開催、 2019年よりパフォーマンスアートを主体としたプラットフォーム「Stilllive (スティルライブ) 」をゲーテインスティトュート東京にて主催など。
https://www.yukikoba.com/


小宮りさ麻吏奈 MARINA LISA KOMIYA
1992年アトランタ生まれ。「人類における新しい生殖の可能性」を自身の身体を起点とした複数のメディアを通して模索している。主な展覧会に「campfiring」(共同企画, 都内某所 (野外) , 2020) 、「ノアの方舟 / Noah’s ark」(企画, NRR (New Reproduction Researchers) 名義, on website, 2020) 、「Reborn-Art Festival 2019」(石巻市・宮城) 、「-ATCG」(個展, TAV GALLERY, 2018) 、「Fwd: Re: 春の小川 閉会式」(渋谷川, 2017) など。主なプロジェクトに、花屋「小宮花店」経営 (2016-2017) 、 オルタナティブスペース「野方の空白」運営 (2016-2018) 、 再建築不可の土地に「家のない庭」を作るプロジェクト「繁殖する庭」(2018-) 運営など。
https://www.marinalisakomiya.com/


田村友一郎 TAMURA Yuichiro
1977年富山県生まれ、京都府在住。日本大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程修了。ベルリン芸術大学空間実験研究所在籍 (2013-14) 。既存のイメージやオブジェクトを起点にしたインスタレーションやパフォーマンスを手掛ける。主な展覧会に「ヨコハマトリエンナーレ2020」(横浜美術館) 、「アジアン・アート・ビエンナーレ」(国立台湾美術館, 台中・台湾, 2019) 、「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」(国立新美術館, 2019) 、「Milky Mountain / 裏返りの山」(個展, Govett-Brewster Art Gallery, ニュージーランド, 2019) 、「美術館の七燈」(広島市現代美術館, 2019) 、「六本木クロッシング2019展:つないでみる」(森美術館) 、「叫び声/Hell Scream」(個展, 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA, 2018) 、「釜山ビエンナーレ2018」(釜山現代美術館, 韓国) 、「日産アートアワード2017」(BankART Studio NYK, 横浜) 、「2 or 3 Tigers」(世界文化の家, ベルリン・ドイツ, 2017) 、「BODY/PLAY/POLITICS」(横浜美術館, 2016) など。
https://yukatsuruno.com/artists/yuichirotamura


林千歩 HAYASHI Chiho
1988年東京都⽣まれ。2018年東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻修了、博士号取得。⾃らを被写体に主に映像作品を手掛け、現代的な事象に⾃⾝の空想を重ね独自の世界観を⽴ち上げる。主な展覧会に「PUBLIC DEVICE -彫刻の象徴性と恒久性-」(東京藝術大学大学美術館陳列館, 2020) 、「Festival Seni Media Internasional 2019」(インドネシア国立美術館, ジャカルタ・インドネシア) 、「六本木クロッシング2019展:つないでみる」(森美術館) 、「Transitional」(森美術館企画, Asia Now, パリ・フランス, 2018) 、「アジアン・アート・ビエンナーレ・バングラデシュ2016」(バングラデシュ・シルパカラ・アカデミー, ダッカ・バングラデシュ) 、「瀬⼾内国際芸術祭2013」(小豆島・香川) など。
https://chihohayashi.com/

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