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セイント・ヴィンセント『セイント・ヴィンセント』インタビュー

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―“踊る”と言えば、以前にインタヴューでイゴーリ・ストラヴィンスキーをオールタイム・フェイヴァリットのアーティストに挙げていましたけど、バレエやバレエ音楽にはずっと興味があったんですか?

セイント・ヴィンセント「そうね、ピナ・バウシュとか……ピナ・バウシュがストラヴィンスキーの『春の祭典』に振り付けをつけてて、その動きを自分のライヴにも取り入れたりするんだよね。ピナ・バウシュの振り付けには、美しいんだけど暴力的なところがあって、そこが魅力なの。あとマース・カニンガムとかも好きだし」

―ダンスというもの自体に興味があるんですね。

セイント・ヴィンセント「表現に繋がるものなら何でも、それこそジャンルや時代に関係なくね……すべてのアートはパフォーマンスに通じるわけだし。それこそ照明から舞台のセットに至るまですべてに影響を受けてる」

―将来的に、ダンス・カンパニーに音楽を提供したいって気持ちもありますか?

セイント・ヴィンセント「いつか挑戦してみたいことの一つね。というか、じつはデヴィット・バーンがキュレーションを担当しているダンス・カンパニーのために曲を作ってるとこなんだ」

―へぇ! それは楽しみです。ところで、以前に「Talkhouse」というサイトに、アーケイド・ファイアの『リフレクター』のレヴューを寄稿されていましたよね。話題になりましたが、最近や去年聴いた中でとくに印象に残ったレコードとかありましたか?

セイント・ヴィンセント「去年1年間で言うなら、ラン・ザ・ジュエルス(『Run The Jewels 2』)とか、ティム・ヘッカー(『Virgins』※2013年)……ジェニー・ルイス(『The Voyager』)もよかったし、あとJディラの『Donuts』(※2006年)も好きだったな」

―ちなみに、ビョークの新しいアルバム(『Vulnicura』)は聴きましたか?

セイント・ヴィンセント「まだなの。聴いた? どんな感じだった?」

―とても悲痛で、けど暴力的なところもあるアルバムですね。

セイント・ヴィンセント「そうなんだってね。パートナー(※マシュー・バーニー)との別離について歌ってるんだよね」

 ―ティム・ヘッカーじゃないですけど、アルカやハクサン・クロークといった気鋭のビート・メイカーが参加していて。

セイント・ヴィンセント「そうなんだ。絶対に聴こう」

 

―去年の作品ということで言えば、あなたもゲストでアルバム(『To Be Kind』)に参加したスワンズが最近来日したんですけど。

セイント・ヴィンセント「へー、そうなんだ! 観に行った?」

―いや、僕は観ることができなかったんですけど。で、その来日時のインタヴューでマイケル・ジラが、最近の音楽はほとんど聴かないけど、あなたの作品は聴いてみてよいと思った、と話していて。

セイント・ヴィンセント「うわ、嬉しいな!」

―スワンズとの共演はどんな体験でしたか?

セイント・ヴィンセント「なんか、倒錯しまくった超越瞑想みたいな体験って感じ(笑)」

―(笑)印象に残っているエピソードはありますか?

セイント・ヴィンセント「そうそう、マイケル・ジラって本当に何て言うか……紳士的というか……それでハイチの奴隷の暴動についての本をプレゼントしてくれた(笑)」

―そう言えば、先ほども挙げた“Huey Newton”って曲ですけど。ヒューイ・ニュートンとは公民権運動の指導者で、ブラック・パンサー党のメンバーでもあった人物ですよね。彼の名前を曲に冠した理由は?

セイント・ヴィンセント「飛行機で移動するときには時差ボケ対策に睡眠導入剤を使ってるんだけど、ヘルシンキにいるときに使ったら、なかなか寝つけない上に幻覚が始まっちゃって。夢の中でヒューイ・ニュートンが自分の部屋に現れて、彼のことを曲に書くって約束したの。ちなみに同じ夜にライオンも夢に出てきたけどね(笑)」

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撮影 吉場正和/photo  Masakazu Yoshiba

文 天井潤之介/text  Junnosuke Amai

編集 桑原亮子/edit  Ryoko Kuwahara

 

セイント・ヴィンセント
NYブルックリン在住のセイント・ヴィンセントことアニー・クラークはポリフォニック・スプリーやスフィアン・スティーヴンスのツアー・メンバーとして活動を開始。現在までにソロ・アルバム4枚、デヴィッド・バーンとのコラボ作を1枚発表している。2011年に<4AD>からに発表した3作目『ストレンジ・マーシー』は全米19位を獲得し、世界中で年間ベスト・アルバム上位を獲得。2012年にはデヴィッド・バーンとのコラボ作『ラヴ・ディス・ジャイアント』は各メディアの年間ベスト獲得の他、第55回グラミー賞へノミネートされ話題をさらった。2014年、セルフ・タイトルの最新アルバムをリリース。ピッチフォークでは8.6点という高得点&ベスト・ニュー・ミュージックを獲得し、ガーディアン(5/5)、DIY(5/5)、ローリング・ストーン(4.5/5)、NME(8/10)他その他多数のメディアから高評価を得、大絶賛されている。2014年の最新アルバム『セイント・ヴィンセント』が第57グラミー賞最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバムにノミネート、更にはNME誌、英ガーディアン誌、米NPR視聴者投票、Gigwiseにて年間ベスト1位を獲得。

セイント・ヴィンセント オフィシャルサイト:http://ilovestvincent.com/

 

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