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tofubeats『POSITIVE』ロングインタヴュー(後編)

tofubeats / すてきなメゾン feat. 玉城ティナ

――80点ぐらいから90点に行く最後のもうひと押しの難しさはどこにありましたか?

tofubeats「特に今回の『POSITIVE』はキャッチーかどうかというところですね。玉城ティナさんとの“すてきなメゾン”にしても、サビの最後の『すてきなメゾン』っていう歌詞がなかなか出てこなかった。『すてきなメゾン』っていうキメの歌詞があるかないかでこの曲の魅力はぜんぜん変わってきてしまうんです。そういうキメがバチンとあるのがJ-POPだと思いますね」

――つまり、ポップスのキャッチ―さを創造すること、J-POPとしての完成度を高めることに苦労したと。 

tofubeats「そうですね。ポップスはストップ&スタートができないといけない音楽だと思いますから」

――J-POPはずっと聴き続けてきたんですか? 

tofubeats「中学校に入って日本語ラップを聴き出すと、“J-POPダセェ期”が到来するんですね」

――“J-POPダセェ期”はやっぱりあったんですね。

tofubeats「ぜんぜんありました。でも中3ぐらいから、もう折れて、高1から渋谷系に行くんです。『そう言えばオレはオタクやった』と思ってそこで足元を見るわけです。ヒップホップを聴いてる場合じゃなかったと」

――ヒップホップは良くも悪くもヤンキー・カルチャーや不良と切っても切り離せない側面があるじゃないですか。tofuくんはそういう側面をどのように見てきました?

tofubeats「僕、中3年ぐらいから地元のヒップホップ・クルーと少し交流があったんです。アカペラもらってリミックスをしたりもしてました。ただ、神戸は京都や大阪と比べると、やっぱり田舎ですから良からぬヴァイブスもあるわけです。当時日本語ラップ・バブルが少しきていたのもあったし、たいして売れてもねぇクセに一丁前にやろうとするんです。先輩に服屋に呼び出されて、『お前のトラックは音が若い!』とか怒られたことがありましたね」

――だって、実際若いですよね(笑)。

tofubeats「そうなんですよ。『オレは若いがな』って思ったし、自分のトラックがダサいとも思わなかった。それでもいろいろ文句を言われるし、『うちの店にトラック持って来い』とか命令されるし、ウンザリしちゃったんですよ。高校生なんてお金ないじゃないですか。そういう環境で100均でバイトして日銭を稼いで機材とか買って、自分のできることを一生懸命やろうとしている中で、この人たちと一緒にいても広がりがないと思いましたね。この人らは音楽をやりたいんじゃなくて、つるみたいだけなんやなって、そのときの僕は思ったんです。もちろんそうじゃなかった人もいたと思います。でも、ヒップホップをやることに対して得がないと思うようになってしまったんです。BUDDHA BRANDみたいなもっと開けたことをやれるのかと思っていたらぜんぜん違った」

――BUDDHA BRANDはトラックもラップもオシャレですしね。

tofubeats「そうそうそうそう」

――それこそD.Lさん(DEV LARGE)は“人間発電所”(1996年)に関して、「フリー・ソウルを狙う」という心づもりで作ったと当時のカッティング・エッジのA&Rの本根誠さんという方がDOMMUNEで語っていました。つまり、渋谷系を意識してたんですよね。 

tofubeats「サンプリングして曲を作るという点ではヒップホップも渋谷系もやってることは同じですからね。しかも京都にはSecond Royal Recordsがあったし、JET SETもまだ神戸にあったというのも大きかった」

――同じことをやっているけど、ヒップホップの人たちよりも音楽的に自由な人たちがいるじゃないかと。

tofubeats「そうですね。アブストラクトなサウンドが流行っていたのもあって、そういうどんどん暗くなっていく方向性に対して、明るい音楽がいいなって思うようになっていったんです。高3で柳田久美子さんのリミックス曲“君のせいなんだ(TOFUBEATS SEVENTEEN REMIX)”を作っているんですけど、あの曲は『フリー・ソウル』をTSUTAYAで30枚ぐらい借りてきて、キーの合う曲を100曲ぐらい選んでサンプリングしたんですよ。いま考えたらあり得へん悪過ぎるやり方ですけど(笑)」

――それでも、常にヒップホップの人たちとは接点を持ち続けていますよね。東京に頻繁に来るようなっていろんな人たちと出会ったでしょうし。 

tofubeats「そうですね。『lost decade』の“Les Aventuriers”では PUNPEEさんとやっていますし、最近ラップしているのもそういう出会いと関係してると思います。ラップをやってもいいかな、という気持ちにやっとなれてますね」

 

tofubeats / Les Aventuriers feat.PUNPEE

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