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Sayo Nagase『PINK LEMONADE』

—意味を限定しちゃうから。

永瀬「やっぱり人間ってイマジネーションを言葉にすることによって、限定していっちゃって、何か枠を固めていってる気がするんですよね。例えばこの写真を『ポートレイトです』って言った瞬間にカチカチになっちゃってるし。危険—(笑)」

—だから本当はファンタジーとリアルの話とかはしないほうがいい(笑)。

永瀬「したくないですよね(笑)。でも思い起こせばこういうことを考えてたなって。ただそれをロジカルには考えずに作ってましたけど」

—言葉を用いながら作っちゃうと全然別物になっちゃうから、その無意識下の意識みたいな感じのほうがいいと思います。

永瀬「言葉で考えながら作ると全然違うし、すごくつまらなくなる気がするんですよね。だから写真集の巻末に自分の考えも書かないようにしていた。そのかわりに写真評論家のタカザワさんに何の前情報もなしに書いてもらったから、それはすごく良かったんですよね。でもそれが正解でもないし、一人の人が通訳するとこうなるみたいなことで、違う人が解釈すると異なるし、それは皆違っていいかなって」

ー解釈は無限ですからね。すごく訊きたかったのが、今までだったら永瀬さんはこういう成人女性の写真を集めた本を作らなかったと思うんです。ある意味すごく分かりやすくなるから、そこを避けるために絶対作らなかったはずで。さっきのリアルとファンタジーの間とかっていうところもあえて公言しなかっただろうと思う。だからこの写真集は本当にすごく意外だったし、今それができたのはなぜだろうって。

永瀬「そうですね、確かに作らなかったと思う。あえて避けてきてたかもしれないです。多分、今、自分が撮りたいものが撮れるようになってきたんじゃないかな」

—それが確信なのか自信なのか、作家としてまた違うラインに立ったんじゃないかと思います。

  永瀬「まだ客観的に分析できてないし、ずっとしないと思うけど、そう言われると面白いですね」

—本人も、会う度に、なんていうか動物的になって研ぎ澄まされてきてる。

永瀬「研ぎ澄まされすぎてて、リアルかファンタジーか本当のギリギリの線を撮りたい。人間の想像力とか、すごく原始的なところを見たり、エネルギーがそこに集中しちゃう時があるかもしれない。ただそれをあまりにも自然にやり過ぎて、作家として、とか分かってないです(笑)」

—(笑)。よく切れる刀のような状態なのかな。

永瀬「まさにそう。切れすぎちゃって困ってます。コントロールできるようになりたいですね。この写真を撮ってる時もコントロールできてないですから。どんどん社会と断絶していっちゃう。だからパブリッシャーの人がコントロールしてくれてるんです。今までの本は完璧に自分のコントロール下でやってたんだけど、もう本当に切れやすい刀になってるから、信頼できる人と作ることによってバランスをとってもらってます」

—そういう状態なのが写真からも伝わります。そこから変化してまた更に面白くなっていくだろうし、どうなっていくのかますます楽しみですね。

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