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text by Shoichi Miyake
photo edit by Ryoko Kuwahara
photo by Yuichi Akagi

Yahyel『Flesh and Blood』interview

C

―—あとはもうひとつ、そことは別ベクトルで日本語のまま海外でも躍動しているKOHHというラッパーがいて。彼がフランク・オーシャンの新作『Blonde』のZINEバージョンに付属されたCDに参加(「Nikes」)したことは2016年の大きなトピックです。海外のライブ映像を観ても客層はジャポニズム的なギミックを求めてる人たちという感じではなくて、真っ当にヒップホップが好きでファッションに感度の高い人たちという印象がある。その人たちがフロアでKOHHのバースを合唱しているというのはなんとも痛快な画だなと。


池貝「素晴らしいと思いますね」
篠田「うん、素晴らしいね」
池貝「僕らがやろうとしていることとは別のアプローチで、ちゃんと自分のアイデンティティと正面から向き合った表現をしていると思うので。KOHHさんと面識があるわけではないのでわからないですけど、『VICE JAPAN』のドキュメンタリー(https://www.youtube.com/watch?v=Pn36uJvwIvA)を観てもそう思ったし。そういう表現が海外でも受け入れられてるのは素直にカッコいいと思う」
篠田「なんでヒップホップだけこんなに進んだのかなと思うんですよね。ヒップホップはKOHH以前に韓国のキース・エイプが欧米でも注目されて、KOHHが出ていく土壌が準備されていたと思うんですけど。なぜそこで欧米のリスナーは非英語のラップに抵抗がなかったのか。まあ、僕らは抵抗があること自体に疑問を持っているんですけど」

——ヒップホップの場合はビートとフロウのオンタイムな気持ちよさが最大のキーポイントなのかなと。


池貝「だから、音のプラットフォームだと思うんですよね。音の文脈をちゃんと踏んでいる」
篠田「MVも然りね」
杉本「僕らが英語の歌やラップをカッコいいと思うのと同じように、向こうの人も日本語の歌やラップをカッコいいと思う可能性は絶対にあるわけで」
池貝「そこであえて僕らが英詞にしてる理由が明確にあって。まず、僕が個人的に思っていることを言語レベルで広く伝えたい。そのうえで思うのは海外の人が日本に来たときに日本人と距離感を保たなきゃいけない理由がいくつかあると思うんですよ。ステレオタイプのイメージに付与された日本人像にとらわれすぎて『この人種はクールじゃない』と距離をとる人もいると思いますし、『ロスト・イン・トランスレーション』的な日本語をまったく話せないからという理由の距離のとり方もあると思う。でも、僕には個人的に心からわかりあえていい話ができる海外の友人がいるので。それを音楽でやればいいと思っていて。一方で、それをやらずして海外で受け入れられているKOHHってすげえなって思います。これが音楽じゃなかったら『WHY?』って言われるようなことを日本語で言ってるわけじゃないですか。そういう意味でもヒップホップってデカいですよね。yahyelのようなフォーマットだともうちょっと寄り添わないといけないというか、表現していることがもっと染み込んでいかないといけないと思うんですよね。音楽性として突き放しているところは突き放しているんですけど、深層真理を語っているから染み込んだときに痛いみたいな、そういう表現だと思うので」

——さっき損なわれた何かという話もあったけど、一方でKOHHの成功によって得た世界的な躍動のイメージもあると思う。


池貝「それに尽きますね。だからこそ、結果がすべてであり。僕らはKOHHの成功をマーケティング的な観点から見てるんです。それをそのまま踏襲しようとは思わないですけど、ここのスイッチを押したらこうなるということは分析していて」
篠田「そうだね」
杉本「プロセスは全然違うけど、僕らがほしい結果はKOHHが得た結果に似ているところはあると思うし」
池貝「似てるかな?」
杉本「究極的に海外の生活レベルで俺らの音楽が聴かれることが一番大事じゃん」
池貝「ああ、それはそうだね」


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