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text by Takayuki Otani
photo edit by Ryoko Kuwahara
photo by Masakazu Yoshiba

『彼らが本気で編むときは、』荻上直子 × 桐谷健太インタビュー

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──映画の前半、叔父のマキオから恋人のリンコを紹介されたトモが、初めて3人で食卓を囲むシーンが印象的でした。実の母親からはほとんど構われずに生きてきた彼女が、手料理を食べながら徐々に心を開いていくという。


桐谷「あのシーンもたしか、ワンカット撮影でしたよね」


荻上「はい。今回、生田さんは女性の所作を身につけるのに、試行錯誤しつつ本当に努力してくださったんですけど、いざ撮影となると細かい部分がいろいろ出てくるんですよね。それこそ『女の子は唐揚げを一口で食べたりしない』とか(笑)。ただ長回しの場合、どこかでNGを出すと、最初から撮り直さないといけないから。そういう微調整をするたびに、3人には唐揚げをガツガツ食べていただいて」


桐谷「撮影用に用意していただく料理がとにかく美味しかったので、全然平気でしたよ。この映画を撮っている間、僕は基本的に、食事シーンのある日にはそれを実際のゴハンにしてたくらいですから(笑)」


荻上「そういえば桐谷さん、鍋もすごい食べてましたよね!」


桐谷「めっちゃ食べました(笑)。シャモロックのつみれ。あれもとにかく美味しかったなあ」


──今回もフードスタイリストは、『かもめ食堂』(2006年)や『めがね』(2007年)でもご一緒された飯島奈美さんですね。


荻上「飯島さんの用意してくださる料理って、スクリーン映えするだけじゃなく、本当に美味しいんです。気取った味じゃなく、素材の味をそのまま生かした家庭料理みたいで」


桐谷「食べ飽きない、気持ちがほっこりする味ですよね。演じる側としても、やっぱり美味しくないものを美味しそうに食べるより、本当に美味しいものをそのまま普通に食べる方がいいですもん(笑)。それって観ている人にも伝わる気がするし」


荻上「うん。そこもぜひ、観ていただけると嬉しいですね」


──新機軸がいろいろ盛り込まれた『彼らが本気で編むときは、』。荻上監督にとっては大きな転機になりそうですか?


荻上「なると思います。前作の『レンタネコ』から5年、本当にいろんなことがありました。自分自身、双子の母親になって、アメリカに行って……。書いたシナリオがうまく通らず、ちょっとスランプ状態に陥った期間もあったんですね。だからこの映画を撮れると決まったとき、自分のすべてを捧げるような気持ちで、絶対に生ぬるいものにはしまいと思いました。最後の最後まで攻めの気持ちを貫こうと」


桐谷「うん」


荻上「もちろん完成した作品に対して反省点はいっぱいある。でも、それ以上に『やりきった!』という達成感もすごく強いです。これまで私の作品は、いわゆる“癒やし系”的なカテゴリーに入れてもらうことも多かったですが、この映画から“荻上直子の第二章”が始まるんじゃないかと(笑)。自分で言うのも変ですが、そのくらいの気持ちでいます」


桐谷「僕にとってもマキオのような人物像を演じられたのは、初めて。本当に役者冥利に尽きるというか、また新たな自分が出せたのではないかと思いますね。この経験を生かして、もっともっと先に行きたい。ターニング・ポイントというよりゴーイング・ポイントという感じの、大事な作品になりました」


photo Masakazu Yoshiba
interview&text Takayuki Otani
edit Ryoko Kuwahara


『彼らが本気で編むときは、』
第67回ベルリン国際映画祭 テディ審査員特別賞受賞(パノラマ部門・ジェネレーション部門 正式出品作品)
<ストーリー>
小学5年生のトモ(柿原りんか)は、母ヒロミ(ミムラ)と二人暮らし。ある日、ヒロミが男を追って姿を消す。ひとりきりになったトモは、叔父であるマキオ(桐谷健太)の家に向かう。母の家出は初めてではない。ただ以前と違うのは、マキオはリンコ(生田斗真)という美しい恋人と一緒に暮らしていた。食卓を彩るリンコの美味しい手料理に、安らぎを感じる団らんのひととき。母は決して与えてくれなかった家庭の温もりや、母よりも自分に愛情を注いでくれるリンコに、戸惑いながらも信頼を寄せていくトモ。本当の家族ではないけれど、3人で過ごす特別な日々は、人生のかけがえのないもの、本当の幸せとは何かを教えてくれる至福の時間になっていく。リンコのある目標に向かって、トモもマキオも一緒に編み物をすることに。嬉しいことも、悲しいことも、どうしようもにないことも、それぞれの気持ちを編み物に託して、3人が本気で編んだ先にあるものは・・・


2月25日(土)新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
生田斗真
 柿原りんか ミムラ
 小池栄子 門脇麦 柏原収史 込江海翔 りりィ 田中美佐子/桐谷健太
脚本・監督:荻上直子
製作:「彼らが本気で編むときは、」製作委員会 (電通、ジェイ・ストーム、パルコ、ソニー・ミュージックエンタテインメント、パラダイス・カフェ) 制作プロダクション: パラダイス・カフェ 配給:スールキートス
2017 年/日本/日本語/カラー/アメリカン・ビスタ/DCP5.1ch/127 分/G
http://kareamu.com
© 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会

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