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天野太郎(横浜美術館 主席学芸員)「美術は近くにありて思ふもの」Vol.3 美術と建築 中編 ゲスト:光嶋裕介 

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天野「先日イギリス人と話しておもしろかったのが、全部が全部じゃないけれど、日本人が子どもに名前を付ける時は、何かをくっつけたりして名前を作るじゃないですか。でもヨーロッパの人はそういう選択肢はなくて、ミカエルにするか、ロバートにするか、これまでの名前から探すんです。ヨーロッパはユダヤ教、キリスト教、あるいはイスラム教ですが、そもそもこの三つの神に名前はない。絶対的な存在である神には名前はない。名前というのは神から授かるもので、職業の名前にもなるくらいものすごい脈々とした大前提がある。だから18世紀くらいの絵描きが自分が考え出したタイトルを付けるなんて恐ろしいことはしない」

光嶋「なるほど」

天野「そうやって、名前一つ考えてもものすごくポストモダン的な行為を日本人はやっていて、そのことについても誰も疑問を挟まない。それも当然で、そういう宗教的なバックグラウンドもないし、そもそも一神教じゃないわけやから、みんな勝手に名前を付けても構わないような神がたくさんいるわけです。そういうことを考えると通底していると思いませんか。音楽にしても建築、美術もそうかもしれないけど底に流れてるものが違う。それを意識するかどうかというのは結構大きいかなと思います」

(後編へ続く)

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