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天野太郎(横浜美術館 主席学芸員)「美術は近くにありて思ふもの」Vol.3 美術と建築 後編 ゲスト:光嶋裕介 

天野「ではどういう美術館になら通いますか?」

光嶋「僕は建築が好きだし美術館にも建築を見に行くんだけれど、やはり美術館においては今ここでしか見れないというような展示、コンテンツが重要だと思います。僕は自分の知的好奇心であったり美学であったり、いろんなものを刺激されたくて美術館に行くので、そうなりますよね。ベルリン・フィルハーモニーは素晴らしい音楽を奏でるオーケストラですが、ハンス・シャローン(ドイツの建築家)が設計した建築も素晴らしいんですよ。フィルハーモニー・ホールというハードに対してオーケストラというソフトも完璧なので、いつ行っても素晴らしい音楽に感動させられる。最強なんです。だから美術館も、『いいものを、いい空間で見たい』という相乗効果を生むような場所に一番惹かれます」

天野「コンテンツ、それも本物というものへの熱量は上がっていますよね。この連載でよく話しているんですが、コピー化、デジタル化が進む中で、みんな本物から疎外されてるという感覚があると思うんですよ。だからリアルな空間に身を置きたい、本物を見てみたいという、ものすごい揺り戻しが来てる。美術館でも鑑賞者の方のそうした熱量を感じます」

光嶋「ベンヤミンの言うような複製されたものから1周回って今は本物、本質を再考する時期にあるのかもしれない。こうした時代の変革期には、いつも大きなブレークスルーがある。大きな宿題を与えられたようなものですよね。僕もそれは常に意識しながら『最新作が最高傑作』を目指して時代をあって、人に喜ばれる建築を作っていきたいと思います」

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