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text by Maya Lee
photo by Anna Maggý

セントラル・セント・マーティン卒業コレクション特集: Sól Hansdóttir /Central Saint Martins Graduate Collections Issue : Sól Hansdóttir




次なる目となるデザイナーを見出すべく、ファッションシーンの誰もが注目するセントラル・セント・マーティンの卒業コレクション。コロナ禍での修了、卒業制作を迎える学生たちは何を考え、どう己のクリエイションと向き合ったのか。第3回目はコンセプチュアルな服作りで「Vogue」からもピックアップされるSól Hansdóttirによるコレクションとインタビューを紹介する。(→ in English)


――セント・マーティンのファッション科で学ぼうと思った理由は?


Sól「私はアイスランドでBA(文化系の学士号)の勉強をしていたんですが、全くCMSとは関係ない学校にいたんです。そこから業界内での仕事と経験を積むためにロンドンに引っ越しました。CMSの出願受付が始まったとき、自分がすでにロンドンにいるのに出願しないのはもったいないと思ったんです。やらずに後悔するよりも失敗して後悔する方がいい! そう思って出願したのですが、まさか本当に入れるとは思ってもいませんでした。初めて建物に足を踏み入れたのは、面接を受けたときというくらい縁がなかったのですから。私は自分自身というもの、自分が何をできるかを証明したいと思ったのかもしれません。すでに持っているツールを研ぎ澄まし、自分の視点をさらに改善する方法について徹底的なフィードバックを得たいと思っていました」


――ロックダウン中の卒業制作、ファイナルコレクションということで、制限や限界を感じたことは?


Sól「私はリミットが大好きなんです。私は制限に対応できるような才覚や機知を充分に持っていますし、自分を構成する枠組みを熟知しています。だから、いつもと違った考え方をすることを余儀なくされ、望む物全てを持てない時に魔法のような力を出すことができるんですよ。また、アイスランドのレイキャビクから遠隔でコレクションを行うことを決めたのも良い結果をもたらしたと思います。私はとても内向的で、一人でいるときにこそクリエイティヴな思考が育っていく傾向があります。レイキャビクは自然にアクセスでき、泳ぎに行くことができ、自分を形成する要素が全てがあるので、そこで創作に専念したのは良い判断でした」








――パンデミックの最中に修士課程を修了しましたが、ファッション業界へ進むための準備はどのように進めましたか。制作過程は全体的に何か変化がありましたか。


Sól「卒業したらどうなるか、酷なほどリアルにわかったと思います。時にとんでもなく孤立した状態になりますし、オンラインでの作業やミーティング、電子メールで多くの事が運びます。スタジオにいて一日中手を貸してくれるチームのサポートがあった時に比べ、より自分自身の準備が整ったということでもありますね。しっかりとオーガナイズし、明確な視点を持ち、それを上手に伝える必要があったのですが、うまくやれたと思います。私のプロセスはいつものようにコンセプトに基づいて出来上がっているので、プロジェクト間で大きく変化します。アイスランドで自主隔離したからこそ思いついたプロセスと作業のやり方でした」


――セント・マーティンであなたのデザイン哲学を変えたクラス、将来の仕事の役立つクラスはありましたか。


Sól「コース全体を通して常にコンセプチュアルにやってきたので、自分のデザイン哲学を変えたクラスがあったとは思いません。ファッション業界に入るための役に立ったのは、実際に業界のブランドと行ったプロジェクトです。例えばトッズのプロジェクトでは、ロンドンファッションウィークのためにカプセルコレクションを行いました。これらのプロジェクトでは、私たちの世界観とブランドの世界感とをぶつけあわせる必要があり、その融合がコレクションに活気を与えたのは非常にエキサイティングな経験でした」








――卒業コレクションについて教えてください。


Sól「私自身のマニフェストから解釈されたコレクションです。そのマニフェストとは『悪の3つの理論』という、制御を手放し、非合理性と未知の領域を楽しむというコンセプトに基づいたものです。コレクションは、人間の理解しようとか強迫的にコントロールを求めようとする力を和らげるための呪文のようなもの。10ルックのコレクションは、マニフェストを中心に構成され、それを技術を巧みに使ったプロセスで作成しています。宇宙の力に身を任せ、邪悪な女性のために不合理かつ混沌とした服を構築し、性別で求められる期待は回避した、まるで無秩序なモニュメントのよう。カオスと悪に関する研究を形にしたものです」


――卒業コレクションで最も見せたいものは?


Sól「プロセスとコンセプト。私はコンセプト主導のデザイナーですから、イデオロギーに基づいて創作します。そのため、パターンのカット方法から仕上げの細部まで、コレクションのすべての側面に至るまでコンセプトをもって臨みます。ヴィデオ作品、ヴィジュアルアート、コラージュなど、分野を超えて実践的な創作を行います。イデオロギーはプロジェクトのすべての側面に影響を及ぼし、独自のプロセスとさまざまな結果を生み出んです。クラフトマンシップも私のコレクションの大きなパートを占めており、手織りのノロジカのコート作品、ジュエリー、靴などまですべてがハンドメイド。デザインが進むよう手伝ってくれた才能ある女性たち数名とコラボレーションしています」


ーーデザインの起点は?


Sól「読書、情報や物を集めたり、コンセプトを作ったり、創作の理由を突き詰めたり。普通は自分なりに解決したい問題があって、その問題について考えた後にヴィジュアル面に移行していきます」


ーーデザインのプロセスについて教えてください。


Sól「実践すること、コンセプトとイデオロギーを走らせること、プロセス主導であること、無秩序でアーティスティックであること。多くのモックアップと独自の技術開発」








――イギリスやヨーロッパのファッション産業はどのように変わっていくと思いますか。またはどのように変わって欲しい?


Sól「パンデミックによって大きく変化するでしょうね。ファッションが一部の都市に集中していた時代は過ぎ、デザイナーは自分が望む場所から仕事をするようになるんではないでしょうか。パンデミックでそうしたことが可能なのはわかったのですから。ファッションウィークも大きく変わると思います。誰もがアクセスできるオンラインのプラットフォームを構築して、特権を持つ人たちだけではなくより開かれたシーンを作っているのはとても良いこと。私が望んでいるのは、創造性、本物であること、クラフトマンシップが重要視されるというような、より倫理的な業界になること。金銭的な価値が重視される、商業的で資本主義なファッション業界の時代から移行してほしい。そんなことのために働くことはもうできません!」


――EU離脱によって生活や政治の変化を感じますか。イギリスのファッションシーンの変化は?


Sól「これは世界中で起こっているより大きな問題の一部であり、グローバリゼーションが進むにつれて、ある特定の人々は脅威を感じ、自分たちが正しいと考えるものや自分たちの土地を強固に守ろうとするんですよね。恐れているからこそ守ろうとするんです。それはイギリス、アメリカ、スカンジナビア、そして残念ながらほとんどの国で起こっていること。私たちには誰一人特別ではなく、理解し合うことこそが重要だと思います。イギリスのファッション業界に関して言えば、今、人々はロンドンから別の場所に移動することを考えているんじゃないでしょうか」


――セントラル・セント・マーティンはイギリスのファッションシーンでどんな役割を果たしていると思いますか。


Sól「CSMは他の大学とは異なり、イギリスのファッション業界との密接な繋がりがあります。私が言えるのは、MAコースではあなた自身を知り、あなたの視点を理解し、問い、発言する準備をする方法を知ることができるということ。デザイナーはCSMから輩出され、ファッション業界において強く主導する力になっています」








――サステイナビリティはファッション業界の大きなテーマ。2番目に汚染を生み出している業界として、この業界は何ができるでしょう?


Sól「業界の努力だけではなく、政府の規制が必要だと思います。消費者の行動を変え、生産プロセスを変える必要がある。多くの人がさまざまな角度から変化が必要であると合意して進めるよう、デザイナーはその後押しをするのが仕事ではないでしょうか。問​​題解決と解決策の提示をすることが大切で、自分のデザインが環境や倫理にどのように影響するかを常に考えるべき。デザイナーは生産過程を問い直し、環境などを考慮している人々と協力することで、変化を起こすことができます。同様に消費者も問いを忘れず、倫理的に作られたものを選択することによって、変化の力になりえる。しかし、消費者の行動を一斉に変えることは非常に難しいので、政府規制が必要なのです。それがどのように作られているか、生産の量など、廃棄物と生産に関する規制があったとしても私は続けることができます。包括的ではないものの、実行は可能なはずです」


――今興味のあるブランドやデザイナーはいますか。


Sól「Alfreð Flóki、Gerður Helgadóttir、Ragnheiður Gísladóttir、Roy Anderson、Aldous Harding、Hitchcock、Junji Ito、Ragnhildur Stefánsdóttir、Maria Pasenau、Jóhann Jóhannsson、Auður Lóa、Ásmundur Sveinsson、Kafka、Ann Sofie Backなど、主にアーティスト、シンガーソングライター、作家、フィルムメーカー、彫刻家などです」


ーー卒業後の予定は?


Sól「理想としては、レイキャビクとロンドンの間で自分のスタジオを持ちたいです。Rottingdean BazaarやMatty Bovanのように、デザイナーがリモートでデザインに取り組み、グローバルに展示している様を見てきました。ここアイスランドに拠点を置き、ロンドンで展示を行うのが理想で、今はそうするのに最適だと思います」








photography Anna Maggý
text Maya Lee


Sól Hansdóttir
https://www.instagram.com/solhansdottir/
http://solhansdottir.com
https://linktr.ee/Solhansdottir

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