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text by Maya Lee
photo by Elliott Morgan

セントラル・セント・マーティン卒業コレクション特集: Sarah Garfield /Central Saint Martins Graduate Collections Issue : Sarah Garfield










次なる目となるデザイナーを見出すべく、ファッションシーンの誰もが注目するセントラル・セント・マーティンの卒業コレクション。コロナ禍での修了、卒業制作を迎える学生たちは何を考え、どう己のクリエイションと向き合ったのか。第2回目はゴスを独自に進化させたSarah Garfieldによるコレクションとインタビューを紹介する。(→ in English)


――セント・マーティンのファッション科で学ぼうと思った理由は?


Sarah「BA(学士号)を取得してもまだクリエイティヴにおいて探求することがたくさんあると感じたので、MA(修士号)をとることにしました。BAの勉強を始めたときは裁縫やパターンカットなどがあまりできなかったので、ここでは技術を学ぶことに集中したんです。MAでは学んだこと全てを応用して、デザイナーとしてのアイデンティティをクリエイティヴで完全に表現することができるようになりました。セント・マーティンを選んだのは世界的な知名度を持ち、業界とも長年に渡り密接な関係を築いているから。昔からセント・マーティンでMAを取得することが自分の大きな目標だったんです」


――ロックダウン中の卒業制作、ファイナルコレクションということで、制限や限界を感じたことは?


Sarah「数え切れないくらいあります! でもロックダウンでクリエイティヴを発揮する機会を失ったとは思いません。私はまだ母と3人の弟 (うち2人は高校生) と一緒に住んでいるので、最大限に能力を発揮するための物理的なスペースや静けさは自宅では望めませんでした。また、通常だったらCSMのスタジオで使えた裁縫のマシンや技術的な手助けもなく、仕立て屋もいない。かと言って、その費用を払うこともできません。本来はBAとMAのファッションコースの1年生にアシスタントをお願いできるのですが、ソーシャル・ディスタンスが必要なためこのコラボも実現できませんでした。これはロックダウンとは別に改善が必要な点ですね。コレクションのためのオンライン・フィッティングも実際的でなく、あまりうまくいかかったので、十分なフィードバックを得るには結局のことろ指導してくれていた先生が3Dで服を見る必要が出てきました。まあちょっとうまくいかなかっただけです!
卒業制作が終盤に差し掛かった1月、大学の助けは見込めない中、家では無理だと判断し、自分の資金でスタジオを借りることを決断しました。スタジオは凍えるほど寒くて、ちゃんとしたカッティングテーブルもマネキンも工業用ミシンもない状態でしたが、限られたリソースで楽しみながら最善を尽くしました。ビデオプレゼンテーションのためのデジタル面などの準備も必要になりました。昨年まではモデルやヘアメイク、ショーの場所などといったことをチームでオーガナイズができたけど、今年は自分たちだけで全てを作り上げる必要があったんです。私は幸いにも手伝ってくれる素晴らしいチームに出会えました!
根本的な部分で、生地や糸などのお店を直接訪れられないのも辛かったですね。オンラインで実物を見ることができないまま注文して、アドバイスもオプションもないのですから」





――パンデミックの最中に修士課程を修了しましたが、ファッション業界へ進むための準備はどのように進めましたか。制作過程は全体的に何か変化がありましたか。


Sarah「限られたリソースとほとんどお金を使わない状態で、真の意味での自分のデザインができました。CSMの美しく広々とした設備の整ったスタジオでコレクションを作ることは限られた人にだけ許された特権ですが、デザインのスキル自体は、高いマシンや高価な材料ではなく、自分にこそ宿っているも。それがわかった今は、今後の人生で何が起ころうとも、ほんの少しのもので素晴らしい作品を生み出すことができるでしょう。
これは、自分のブランドをどのようにしたら立ち上げることができるかという日頃から考えていた問題へのアプローチとしても素晴らしい気づきになりました。多くを持ってから立ち上げるのではなく、限られた条件の中でもやれるということがわかったのですから。
クリエイティヴ・プロセスの変化としては、私ははるかに柔軟に、より直感的に制作するようになりました。例えば素材へのアクセスが限られていたため、家族や友人から譲り受けたり、すでに持っていた生地を使って服を作り直しました。パターンカッティングへのアプローチでは、従来のフラットパターンカッティングではなく、マネキンに直接ドレープすることで、自分が望む形状とシルエットを作ることができるとわかりました。それによってCSMスタジオでパターンカッターの助けを借りる必要がなくなったので大いに助かりましたし、自分で問題を解決することで、より興味深い結果を出すことができたんです。
春のロックダウン中は、編み物を覚えることに多くの時間を費やしました。常に学びたいと思っていたものの、以前はウィメンズウェアの色々なやり方について学ぶ時間が足りなくてできていなかったんです。一旦編み物をマスターしたら、手編みと機械編みの両方に夢中になって、最終的にはそれらがコレクションのとても重要なパートを占めるようになりました」


――セント・マーティンであなたのデザイン哲学を変えたクラス、将来の仕事の役立つクラスはありましたか。


Sarah「Reba Mayburyによる『Fashion Context and Theory』と、Tod’sと実際に行ったブリーフィングです。Rebaのクラスでは、ファッション業界における性別や人種、セクシュアリティ、階級などのトピックを取り巻くステレオタイプの表現について調べました。このクラスではデザイナーにハイライトを当てているため、ファッション業界で自分たちが文化的および政治的にどのポジションにいるのか、自分自身をどのように表現し、どんな人物を表現しているかをしっかり認識する必要があります。今の時代には特に必要不可欠ですが、自分の作品が進歩的で包括的な方向を歩んでいるかを常に疑問視することも重要です。
そのようなことを身につけ、最後には、作品、そしてデザイナーの意図を表したマニフェストと理論的根拠を書くことになります。このクラスは、作品を通じて私が伝えたいことや表現したいことを理解し、自分のコミュニティやマーケットを見極めるのにとても役立ってくれました。
Tod’sとのプロジェクトでは、ブラン​​ドとマーケットレベルを対象としたシューズのカプセルコレクションを5つデザインするように依頼されました。より商業的に考えルコとや、自分のデザイン・アイデンティティとクリエイティヴ・プロセスをクライアントに合わせて適応させる方法を学び、素材の仕様や製造の準備が整った状態で、いかにより技術的なデザインをするかという方法を学びました。私の卒業制作は非常にクリエイティヴで表現力に富んでいるので、このプロダクトにフォーカスしたプロジェクトが私のポートフォリオを違う側面から強化してくれると思います」





――卒業コレクションについて教えてください。


Sarah「堕落し、恐ろしいような不完全な美のあらわれ。怒り、痛み、悲しみを真っ直ぐに表現したものです。私のコレクションは、純粋に自分と自分のスタイルのアイデンティティを誠実に表現したものです。自分をさらけ出すことは時に苦痛ですが、そこには美しさと生々しさがあると思います。10代をゴスとして過ごしたヤングアダルトとして、サブカルチャーの歴史の中でコードを繋ぎ直したり解いたりして、既存の慣例をこわし、私自身の新しいコードを構築しようとしました。
全体的な“見た目”や文化的な文脈だけでなく、裁断、制作、テキスタイル開発へのアプローチにおいても反抗を表現するよう試みました。従来のパターンを使用するのではなく、本能的にその場でドレープを作ることで自分にとって大切なパーツが見つかり、DIYとクチュールのテクニックを奇妙な組み合わせで手縫いして作り上げました。
黒と白のストライプは私のコレクションの最も特徴となる1つで、デザインシグネチャーとして過去2年間で進化させてきました。ストライプは視覚的にインパクトがあるだけでなく、サブカルチャーやホラー映画の中でも特に際立った存在感を放っています。尊敬しているティム・バートンの視覚的な世界でもゴシックを象徴するものとして使われます」


――卒業コレクションで最も見せたいものは?


Sarah「最も重要なことは、業界とオーディエンスに私のブランドのアイデンティティを明確に表明すること。私は非常に独特のスタイルを持っているので、他の卒業生や若いデザイナーによるノイズをすべてカットして、できうる限り最もインパクトのある方法で届けたかった。
クラフトマンシップも同じく重要です。すべての作品は一点ものであり、自分で開発した独自の技術を使用しているので真似ることは容易じゃないでしょう。作品の多くは手編みと縫製で、ジュエリーはコラボレーターであるカースティによって彫刻され、グラスゴーで手作業で鋳造されました。ルックと、ブックでクローズアップを使用したビデオ・プレゼンテーションでは、職人技とその複雑なディテールを映し出しました」


ーーインスピレーション源は?


Sarah「初期の『i-D』『The Face』『Nylon』『Fruits』などの古いストリートファッションのマガジン。Derek RidgersやCatherine Baletなどのサブカルチャーのドキュメンタリー、1990年代と2000年代初頭の『The Doom Generation』や『Thirteen』などの大人にさしかかった年齢を描いた映画。Tim Burtonの映画と初期の短編小説、『黒執事』や『デスノート』などのホラー・アニメ、Aubery Beardsley、Léon Spilliaert、90年代のAlexander McQueen、John Galliano、Comme des Garçons、Ann DemeulemeesterとOlivier Theyskens、GucciのTom Ford、ビクトリア朝のロンドン、そしてそこで人々が着ていた服、墓地や教会、そして私の友人たちが今どのように服を着ているか、そして彼らが十代の頃にどのように着ていたか。私は時々十代にゴスを着ていた人たちのためにFacebookの古い写真を採点したりします。1980年代から2000年代のゴスについてのYouTubeドキュメンタリー。古いミュージックビデオや、PlaceboやNine Inch Nailsのインタビューなど。インターネットはハマったら抜け出せない!」





――イギリスやヨーロッパのファッション産業はどのように変わっていくと思いますか。またはどのように変わって欲しい?


Sarah「ファッション業界は本当にスピードを落としてきていると思います。これまでのスピードは馬鹿馬鹿しく有害でした。パンデミックとブレグジットによって小売りと生産が制限されているため、多くのデザイナーはリゾートとプレフォールを行うのではなく、コアの秋冬と春夏コレクションのみを生産することに集中しています。コレクションも少なく、メンズとウィメンズの両方を組み合わせたブランドもあるようです。服自体も実際に着られるものに重点を置いており、無意味で派手なだけのデザインはあまりありません。
これは非常に良いことだと思います。あのスピードとそれによるプレッシャーは業界内の人々にとって本当に健康を害するものであるだけでなく、大量の生産に伴う素材の使用で、非常に多くの廃棄とより多くの二酸化炭素排出量を生み出していました。私が思うに、1つのブランドから年に2回のコレクションがあれば十分だと思います。先進国のほとんどの人は既に充分な服を持っています。季節ごとに新しい服を買うのは贅沢すぎる。
ジェンダーに関してもこれまでのやり方は、多くの消費者にとって時代遅れになっています。コレクション内でジェンダーを組み合わせているブランドも、正しい方向への一歩を踏み出しているのではないでしょうか」


――EU離脱によって生活や政治の変化を感じますか。イギリスのファッションシーンの変化は?


Sarah「Brexitはごく最近のことで、イギリス内でも最も多様性に富んだ大都市であるロンドンに住んでいる私にはまだその影響を感じられません。私からしたら、イギリスは文化的に非常にヨーロッパ的であり、服装においても相互に関連しているように感じていましたが、きっと変化が訪れるのでしょうね。ヨーロッパからの輸入は減少し、私たちの食事から服装、購入する車に至るまですべてに影響を与える可能性がある。
ポーランドの1人としては今、自分の先祖代々の文化から切り離されているように感じています。EU離脱によってイギリスがナショナリズム、人種差別、様々な不平等への道に舵を切らないことを切に望んでいます。
既にヨーロッパの人々がイギリスで働き、勉強することはますます難しくなっています。CSMコースの国際料金の支払にしても、これまでのEU料金では支払うことができなくなってるんです。
個人的には、EU離脱がヨーロッパのファッションハウスとの繋がり、求職に影響を与えるのではないかと心配しています。
現時点では“シーン”に変化があるとは思いませんが、ヨーロッパのインポートよりも英国の昔ながらのより大きなファッションハウスが力を持ってくるでしょう」




――セントラル・セント・マーティンはイギリスのファッションシーンでどんな役割を果たしていると思いますか。


Sarah「英国のファッションシーンは非常に活気があり、実験的で、親密で協力的なコミュニティです。あらゆるバックグラウンドの人々を喜んで迎え入れますし、機知に富み、ラグジュアリーよりも創造性を重視しているため、他の都市よりもインクルーシヴなんじゃないかと思います。ファッション・イーストのような新しい才能を世に出すためのサポートはロンドンならではのもの、そうじゃなかったとしても少なくともここから始まったように思います。ファッション・イーストから世に出たデザイナーの多くは世界に影響を与え続けています。
セントラル・セント・マーティンズは、新しい才能と既に地位を確立している卒業生とを繋げ、クリエイティヴなコネクションやサポートを後押しし、キャリアの機会を作ってくれる、イギリスのファッションシーンを存続させるために不可欠な原動力。CSMと大手メゾンやファッションメディアとの繋がりは、学生や卒業生が前進するための貴重なプラットフォームの構築に役立ちます。さらにイギリスにはCSMだけでなく、ウェストミンスターやRCA、レイブンズボーン大学など多くの素晴らしいファッションの学校があると言うのは重要だと思います」


――サステイナビリティはファッション業界の大きなテーマ。2番目に汚染を生み出している業界として、この業界は何ができるでしょう?


Sarah「これは非常に大きな問題で、ファッション業界ができることはたくさんあります。重要だと思うことは以下です。


-年間コレクション数を減らし、最も重要なシーズンに焦点を当てる。
-芸術的な文脈であっても、販売または着用する目的のある作品のデザインに焦点を当てる。
-シーズンごとにまったく新しい布地を作るのではなく、アーカイブからできるだけ多くを再利用する。
-できるだけ地元で素材を調達するように努め、輸送と航空距離を削減することを目指す。
-従業員とインターンに公正な賃金を支払う。これ以上搾取する必要はありません。特に、より良いものを作る余裕がある大きなブランドからの搾取は必要ない。
-製品サンプルを処分するのではなく、ブランドを愛しているが必ずしも定価の製品を買う余裕がない人のために販売する。


パンデミックによって国際的なファッションウィークへのゲストが制限され、オンラインでの視聴を余儀なくされたことは良いことだと思います。ファッションショーに生の観客がいるのは何の問題もありませんが、10分間のファッションショーを見るためだけにニューヨークからミラノに飛ぶ必要があるのかはよく考えるべき。
ファストファッションはおそらくファッション業界で最もサステイナブルへの対応が必要な分野であり、ほとんどの人々はデザイナーズを買う余裕がないので、決してなくなることはありませんが、これらの企業は凄まじいペースで、あまりにも多くの製品を生産しすぎている。劣化したりリサイクルしたりできない安価な素材を使用しているため、構造全体を再考する必要があります。ファストファッションブランドは非常に巨大であるため、小さな変化でも環境や社会に大きな影響を与えられるのですから」





――今興味のあるブランドやデザイナーはいますか。


Sarah「CSMのMA卒業生の仲間であるNensi Dojakaが大好き。Nensi Dojakaはダークで魅惑的で非常に繊細なランジェリーにインスパイアされた作品を作っているんです。ビクトリア朝の強い影響力を持つサステイナブルなメンズウェアJohn Alexanderもいいですね。
音楽のサブカルチャーは私の作品の重要なインスピレーションであり、現在、GhostmaneやLil Peep、Kim Draculaなど、現代のヒップホップ、ラップ、トラップを1990年代のデスメタルや2000年代初頭のエモと組み合わせたアーティストにとても興味があります。彼らの音楽だけでなく、ヴィジュアル面や着こなしも強い影響力を持っていますよね」


ーー卒業後の予定は?


Sarah「一番の理想は、Alexander McQueenやCharles Jeffery Loverboyなどロンドンにあってサブカルチャーにルーツを持つラグジュアリーブランドで、ジュニア・デザインの職につけること。私の夢はその後、ニューヨークの Olivier Theyskens、アントワープのAnn Demeulemeester、パリのYohji Yamamotoなどのダークエレガントなブランドで働くことです。また、Matthew Williamsが現在Givenchyでやっていることもとても好き。
自分のブランドも続けますが、今はファッションで仕事を見つけるのが難しいので、仕事を持つのに数年かかる場合は、自分のブランドをもっと育てることにエネルギーを集中させようと思っています。新しいコレクションや売るアイテムを作って、取り扱ってくれるお店を探すことですね」





Sarah Garfield
https://mafashionshow.mafcsm.com
https://www.instagram.com/sarahgarfield__/


Photography Elliott Morgan
Styling and Art Direction Izzi Lewin
Make-Up Emma Regan
Hair Louis Souvestre
Models Jasper Leigh Vavara Shvetsova Milla Freya Walker Sam Waite-Fazio Vavara Shvetsova Milla Freya Walker
text Maya Lee

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