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text by Mami Chino
photo by Duljak Bergstrand

Interview with ADER ERROR and Gildas Loaëc (MAISON KITSUNÉ)

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MAISON KITSUNÉが韓国のクリエイティヴ集団ADER ERRORとの、コラボレーションカプセルコレクションをローンチ。東京、パリ、そしてソウルのシーンを過熱し続けている。一歩先の時流を読み、凝り固まった思考を打ち砕くセンセーショナルなニュースを仕掛けるMAISON KITSUNÉ。今回のお相手は、次世代のファッションシーンを牽引する集団として世界中からの注目を集めているが、匿名性が強く、ミステリアスな存在。だからこそ、突如として私たちの耳に届いた、このコラボの全貌が気になって仕方がない。去る4月6日にMAISON KITSUNÉ代官山にて開催されたローンチパーティーの為、来日を果たしたADER ERRORのメンバーと、MAISON KITSUNÉのクリエイティブディレクターGildas Loaëcに話を聞いた。



-まず、ADER ERRORのブランドの成り立ちについて教えてください。


ADER ERROR 「20人のクリエイションを担うクルーと、10人の店舗スタッフがいます。私たちはファッションだけに特化したかったわけではなく、面白いものやクレイジーなものを一緒に表現しようと思って始動したブランドです。メンバーの全員が違う学校に通い、全員が違ったバックグラウンドを持っていて、クルーのうち、何人かはもともと友人だったんですけど、あとはそれぞれの業界で活動していた者にコンタクトをとって参加を募りました。韓国の業界はそこまで広くないので、面白いことをやっている人に連絡を取りたいと思ったら、知り合いを介してすぐに繋がることができます」


-ブランドコンセプトに掲げている“But Near Missed Things”(近くにあるけど見逃してしまうもの)について、具体的にどういったもののことを指しますか?


ADER ERROR「特別なものではなく、日常の身近なものにフォーカスしているということです。机や椅子、みんなにとって馴染みあるものでも、見方を変えて、私たちがひねりを加えることによって、なにか違和感というか引っかかりを感じて欲しいと思っています。なぜ物事をそう見ることができるのかについては自分たちでも分からないのですが、私たちならではの感覚として楽しみながら、デザインに落とし込んでいます。それが、ブランドを始めたきっかけでもあるし、全てのプロジェクトやコンテンツの出発点になります。そして、今回のMAISON KITSUNÉとのカプセルコレクションについてもです。彼らと同じマインドを感じ合えますし、それをさらに私たちよりも極めているんだと思います」



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-GildasさんはADER ERRORをどのようなブランドだと思いましたか?


Gildas Loaëc「彼らのことは2、3年前から知っていて、洋服のことはもちろん、彼らのプレゼンテーションなどものづくりの方法が魅力的でした。シンプルなものに、遊び心を与えることによって、視覚的に面白く、他とは違う効果を生んでいるようです。彼らのユーモアのセンスは抜群ですし、ユース・スピリットが感じられて素晴らしい。こういったユース像というのは、国を問わず、共通してあると思うので、90年代のストリートウェアを取り入れたプロダクションも興味深いですし、そこに彼らならではのセンスも保たれていて、エッジーなわけだからこの先の未来はすごく明るいでしょう。ブランディングやマーケティングも戦略的に仕掛けてますし、そういうクレイジーなものを生み出そうとするクリエイティヴなマインドが刺激的でもあります」



-どちらも、日常のちょっとした物事の見方を変えてくれるような、ウィットに富んだ発想でいつも新しいクリエイションを提案している部分では共通しているようですが。


Gildas Loaëc「今回のコラボラインは、MAISON KITSUNÉを次世代のブランドとして位置付けてくれる重要なプロジェクトでした。ADER ERRORの方がもっと若い世代をキャッチしていますし、こうして掛け合うことで、ハイブランドを目指して冒険をしないよりも、盛り上がりをアピールする方が重要だと思います」

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-ADER ERRORにとっての本コラボレーションは?


ADER ERROR 「私たちにとっては、オフィシャルに行う初めてのコラボレーションになりました。やるにあたって何か特別な理由があったわけではありません。ただ、一緒に新しいこと、新しい流れを提案したいということに尽きます。私たちは、ものづくりの姿勢として、ユース像を常に発信し、そこにあるトレンドウェアを積極的に採用しています。そして、着眼点としてひねりであったり、ウィットをデザインやコンテンツに落とし込んでいます。その両ブランドの真髄を今回のコレクションから、感じて、楽しんでいただけると思っています」


-そういう繊細な部分でもある、ユーモアをどうやって表現してますか?


ADER ERROR 「デザインや、コンテンツ、マーケティングやすべてのストラテジーに対してその繊細さを見いだすことができると思います。そういったディテールをどうプロダクトに落とし込むかということに尽力するんです。今回のマーケティング的な試みでいうと、MAISON KITSUNÉと全く同じタイミングで同じティーザーをInstagramにポストしました。これを見た両ブランドのファンにワクワク感を募らせるためのトリックのひとつです。デザインに関しては、一見シンプルに見えるかもしれませんが、そこにウィットを効かせたディテールを探すことができるはずです。私たちが何よりも大切にしているのはとても些細なきっかけが大きなプロジェクトに発展し得るということです。それをブランディングにしても戦略にしても常に根底に置いて、新しいものを生み出すようにしています」


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-SNSの捉え方や、利用の方法についても教えてください。


ADER ERROR 「現在は主に3つのアカウントを使い分けているんですが、最初の@ader_errorはメインアカウントで、毎シーズンのキーコンテンツを中心にあげています。2つ目が@adererror_officialで、主にブランドのアーカイブをアップしています。最後のは@ader_stylingで、デイリースタイル用です。これは実際に私たちの服をどう着ればいいのかというのを中心にあげています。また、セレブが着用している情報などもここにアップしています。これだけのアカウントを使い分けている理由も、ブランドの根底と共通していますが、たとえInstagramであっても自分たちでエディットしたいと思っています」


-MAISON KITSUNÉはどのように利用していますか?


Gildas Loaëc「彼らほど細かくは使い分けてないんですが、メインアカウント@kitsuneとCAFÉ KITSUNÉのアカウント@cafekitsuneで使い分けています。あとは理也と僕で自分のアカウントを持っています。でも確かにソーシャルメディアはとても大切で、便利なものでもありますよね。ブランドのストーリーを伝えるというのも、自分たちで自由にできるので、僕たちの雑誌を編集しているような感覚で使うことができますしね」


-また、ADER ERRORの店舗について、特に弘大(ホンデ)にあるフラッグシップストアは壮大なスケールで。ディスプレイも年に2、3回は変えると聞きまして、もはや服を売るためだけではない空間にまで仕上がっていましたが、店舗では何を発信したいと考えていますか?


Gildas Loaëc「確かに、お店すごいですよね。もはやお店じゃなくて、ちょっとした美術館なんじゃないかというくらいです」


ADER ERROR 「店舗は、私たちのブランドのストーリーを伝えるための空間でありたかったんです。洋服を買うだけじゃなくて、ADER ERRORの世界観も体感してほしいというのが願いです」


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-GildasさんはMAISON KITSUNÉ同様に、音楽でも新しい時流を常にキャッチした作品をリリースしていますが、制作面において何か共通点はありますか?


Gildas Loaëc「共通点でいうと、音楽は制作する時、常に何が新しいサウンドか、プロデューサーなのかを常にユースに向けて問いかけています。そういう新しい歌やサウンドをなんとかして形にして、新世代の音楽としてローンチしています。というのも、音楽を熱心に聴いたりするのは大体23歳くらいまでで、それ以降はだんだん新しい音楽を自力で開拓するのは難しくなってくると感じているので、次世代に向けて発信していく為には、やはり新しいプロデューサーや、サウンド、そして今回のようにブランドとタッグを組むことが重要で。KITSUNÉ所属のファンク・ポップバンドのParcelsを思い出してもらったらお分りだと思うんですが、彼らは弱冠20歳で本当に若いし、そのパワーがレーベルをも活発にさせてくれると感じています。なので、同じようにファッションについても常にフレッシュな感覚を持ち続けるべきですし、もしあなたもフレッシュでありたいと思うなら、ユースカルチャーの力に身を委ねてみることも大切なんじゃないかなと思います。私たちが頻繁にパーティーを催しているのも同じ理由です。とても楽しくなるでしょう? 人が自然でいられる瞬間、それは世代などは関係ないもので、つまり、ユース・スピリットを持ち続けるということなんです。そんなことをエディ・スリマンもやっていましたね。彼は若いアーティストやバンド、新世代に向けて熱心に取り組んでいたと思います」


-そのユース・スピリットを特に韓国に見出したということでしょうか?


Gildas Loaëc「彼らに関しては、確かに韓国人なんですが、もっとイングリッシュな感覚というか、国籍を超えたインターナショナルな感じというか……でもユースの力を感じますね、やっぱり。先ほどの音楽制作時のフローのようにユースに問いかけている感覚と同じようです」


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-MAISON KITSUNÉはそういう意味では、バランスがとれたブランドですよね。フランスならではのクラシックでエスプリな要素もありつつ、そういう新しい試みも上手く掛け合わせているところが。


Gildas Loaëc「確かに、それは言えるかもしれません。それは、なぜこのブランドを立ち上げたのかということやもっと経済的な話にまで発展し得る質問だと思います。僕はADER ERRORの細かい構造まではわからないけど、その生産方法や店舗づくりにおいて、または市場においても、韓国をベースに韓国でものづくりをして発信するという生産性の高いシステムが急速に整っているんだろうと思います。僕らはパリを拠点にしていますが、正直パリの人がそこまで新しいものやことに対して関心があるようには思えません。なので、経済面においても、生き残る為に戦略を練る必要があり、もっとシンプルに、デイリーライフに寄り添ったものにシフトチェンジをすることを考えなくてはなりませんでした。僕たちはリスクを冒すことは厭いませんが、私たちのキャパシティに見合うように、もっと大きく成長していく必要もあって。パリはショッピングにおいて特殊な部分があります、そこに向けて同調していきながらも個性を発揮するというのが最大の課題でもありました。そして、そんな時ふと韓国に目を向けてみると、実に興味深いことがたくさんあった。コンサバなパリの雰囲気を一蹴するほど大胆で、ファッションセンスも抜群なんです」


-初期の頃から独特なカラーリングも特徴でした。今回のコラボレーションも色使いがユニークですが、こういうデザイン面に関して2ブランド間でどのように話したのでしょうか?


Gildas Loaëc「実は、そこまで話し合ってないんです。彼らには彼らの独自のアイデアが浮かんでいると確信してたので。ADER ERRORは本当にクリエイティヴで、僕らのヘルプなしでもどんどん素晴らしいアイデアが湧き出てきます。だからこのコレクションに着手する時、彼らがもたらしてくれることをはっきりとイメージできましたし、実際それ以上のパフォーマンスを見せつけてくれました」


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-今回のコレクションビジュアルのストーリーについて教えてください。


ADER ERROR 「“Just Twin Girls”という双子の女の子をテーマに置き、パリのクラシックなホテルで撮影しました。今回のコレクションは、彼らが私たちを信頼してくれて、全てを委ねてくれました。そうやって自由にクリエイトできたからこそ、責任感を持って、しっかりとこのコラボレーションに向き合えたんだと思います。両者とも敬意を持って取り組むことができました。それぞれのデザインやコンテンツに独自のルールがあって、まだローンチしたばかりたし、このプロジェクトが成功したのかどうか測ることはできないけど、もし仮に成功に収めることができたとするなら、この互いのルールを尊重しながら気持ちよく取り組めたからだと思っています」


Gildas Loaëc「こんなコラボレーションができて幸せに思えますし、どのプロダクションも素晴らしくクールです。Instagramやコミュニティからも好感触がすでにあって、メディアや僕たちのファンからも興味を持ってもらえているんだろうなと思っています。とにかく今回のコラボレーションが実って嬉しい限りです」



photo Duljak Bergstrand 
text Mami Chino 



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ADER ERROR×MAISON KITSUNÉ
コラボレーションカプセルコレクションがローンチ。ADER ERRORのテトリスやレタリング、MAISON KITSUNÉのフォックスなど両ブランドのシグネチャーを掛け合わせたスペシャルなロゴを施したデイリーウェアがラインナップ。MAISON KITSUNÉとADER ERRORの直営店、公式オンラインストア、一部の正規取扱店にて販売予定。


ADER ERROR
2014年に韓国・ソウルで結成された匿名のクリエイティブ集団。メンバーは、ファッションやグラフィックデザイン、マーケティング、建築など様々な分野から構成される。ブランドコンセプトは“But Near Missed Things”(近くにあるけど見逃してしまうもの)をインスピレーションに、独自のミニマリズムや新たな視点をコンテンツに昇華している。ユースカルチャーを投影したストリートウェアなど、ベーシックでありながらエッジを効かせたアイテムの数々は国内外で多くのファンを魅了している。
http://en.adererror.com


MAISON KITSUNÉ
共同設立者・クリエイティブディレクターのGildas Loaëcと黒木理也が2002年に設立。日本古来の変化の神様「狐」をブランド名として掲げ、フランスを拠点に音楽レーベルやファッションブランドやカフェなど垣根を超えたプロジェクトとして始動する。音楽の面では、数々の有名アーティストが参加するコンピレーション・アルバムは大ヒットを記録。Parcelsなど新人発掘も積極的に取り組んでいる。またファッションでは、フレンチカジュアルなアイテムからアイコニックなロゴアイテムまでを揃え、世界中でブームを巻き起こしている。
https://maisonkitsune.fr

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