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text by Takahisa Matsunaga
photo by Satomi Yamauchi

Interview with Jesse Jo Stark about “DOOMED”




クロムハーツの創設者であるリチャード・スタークを父親に持ち、名付け親は1960年代から活躍するポップ・ディーヴァであるシェールという、華々しい環境のもと生まれたジェシー・ジョー・スターク。現在はブランドのデザイナー、パート・オーナーでありながらも、自ら立ち上げたブランド「Deadly Doll」の展開や、ポスト・マローンをはじめとするミュージシャンのマーチャンダイズを手がけるなど、ファッション界では圧倒的な存在感を示している。いっぽうで、幼い頃から音楽活動も精力的で、2017年に元セックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズのプロデュースのもとデビューEPを発表してからは、エッジの効いたサウンド・センスが高い評価を獲得。そして、このたび初のフル・アルバム『DOOMED』が完成した。ダークでミステリアスな部分から、ポップな感性まで、自身の持つ多角的な表情を、ロック、カントリー、ディスコなどを駆使して表現。華やかさの奥に隠れた自身の人間像を炙り出していると同時に、最後には「広大な愛」が降り注ぐ仕上がりになっている。(→ in English)

━━ミュージシャンとしては、これが初来日になるのですか?


Jesse「家族と共に何度も来日をしていますが、ミュージシャンとしてこんな風にひとりで稼働するのは、これが初めてになります」


━━サマーソニックもご覧になられたそうですね。


Jesseはい。友人たちが出演していたので。とても楽しかったけど、いつか自分も出演したいと思いましたね」


━━音楽に関しては、幼い頃から興味があったそうですね。


Jesse「シェールやスティーヴ・ジョーンズをはじめ、数多くの才能あふれるミュージシャンに囲まれて育ったという環境が大きかったことは確かですが、父親が幼い頃からいろんなスクールに通わせてくれて、自分が興味のあるものを選択させてくれた。そこから、自分で音楽活動をしたいという思いが強くなってきました」





━━7歳の頃から曲作りをスタートさせたとか。


Jesse「当時作った楽曲は、出来がいいと言えるものでありませんが(苦笑)。それ以降たくさんの方々のサポートを受けて、ここまでたどり着いたという感じですね」


━━ご両親を含め、多くの方から好きなことを追求できる環境を与えてもらっていたのですね。


Jesse「本当に両親には感謝しています。音楽だけではなく、デザインの部分に関しても自由にいろんなことをやらせてくれたので」


━━あなたは、クロムハーツのデザイナーでありパート・オーナーを務めるなど、ファッションの分野でも才能を発揮されていますね。


Jesse「クロムハーツに関しては、完全に家業を継いでいるという感覚が強いですね。音楽に関しては、自分らしく生きるために必要な表現ツール。自分の熱意が強いものではあります」





━━音楽とファッションのクリエイティヴは別と考えていますか?


Jesse「いいえ。音楽とファッションは密接なつながりがあります。例えばステージで着用する衣装とか、音楽の世界を表現するために活用するものでありますから」


━━また、サマソニにも登場されたポスト・マローンやヤングブラッドなど、さまざまなミュージシャンのマーチャンダイズもデザインされているそうですね。そういった活動もご自身の音楽制作に刺激を受ける部分はありますか?


Jesse「他のミュージシャンにデザインを提供する際には、彼らの世界を忠実に表現することだけに集中するので、自分の意思のようなものは反映されないですね。でも、確かにそういったデザイン活動が自分の音楽に反映される部分が、もしかしたらあるのかもしれませんが、よくわかりません(笑)」


━━完全にご自身のなかにあるものを音楽としてアウトプットされている?


Jesse「音楽に関しては、完全に自己中心的です。それをみなさんに好きになっていただけたら、ありがたいですね」





━━では完成したアルバム『DOOMED』は、あなたにとってどんな作品ですか?


Jesse「この言葉は、常に自分の頭のなかにあるものでした。ここには「光と影」のような相反する感情が集約されていると感じるから。実際、アルバムにはロックやディスコ、カントリーといったさまざまな音色、そして愛、悲しみなどさまざまな感情が混在し、あらゆる時間や気持ちにフィットするアルバムになったと思います」


━━アルバムは、ジェシー・ラザフォード(ザ・ネイバーフッド、ベニー・ブランコなどを手がける)と、マイケル・ハリス(ハイム、エンジェル・オルセン)が共同プロデューサーとしてクレジットされています。彼らとはどんな作業をされたのですか?


Jesse「LAのスタジオに集合して、セッションしながら制作しました。家族のような親密でオーガニックな雰囲気のなかで進行していたので、それも感じてもらえたら。また、自分の声をさまざまなアプローチで表現することができたのかなとも思います」


━━ご自身の今までとは異なる部分を引き出せたと?


Jesse「違うというよりも新たな一面を引き出していただいたというか。私のヴォーカルには、どこかメローでクールな感じがあるのですが、そこから一歩進んだ雰囲気を表現できるようになりましたね」





━━「patterns」で響かせる、感情をありのまま吐き出しているようなラップ風なヴォーカルが印象的でした。


Jesse「実はこの楽曲、10分くらいで完成したものなのです。だから1テイクしかレコーディングしていなくて。歌詞に関しても、単純に愚痴っている感じですし(笑)。いつもは歌詞に何かしらのメッセージを加えるのですが、ここにはただの「怒り」しかないです」


━━アルバム全体では、どんなトピックや感情を表現されているのですか?


Jesse「アルバムには、いろんなトピックを扱っています。いいこと(人)もあれば、そうでないこと(人)もある。特に人間関係において、私は恋をすることが多いのですが、その過程にはいつもこの人と関係を続けていけばいいのか?を考える時間が訪れる。その逡巡を歌詞にしている部分が多いかもしれませんね」


━━いろんな感情が渦巻いていますが、最後にはそれらを包み込む「大きな愛」を感じる作品になっていると思いました。


Jesse「そう感じてもらえたらうれしいです。特にラストに収録された楽曲では、ネガティヴな感情もあるのですが、それを受け入れて次に進んでいくことに人生の意味があるということを伝えたつもりです」




━━今回のアルバム制作を通じて、何か新しい音楽的発見はありましたか?


Jesse「普段なかなか言葉にできない思いを綴り、本当の自分を表現することができましたね。でも、今回はモダンな音になったのかなと思います。次はカントリーとか、より異なる音楽を深掘りして、異なる私を届けられたらと思います」


━━今後はどんな活動をしていきたいですか?


Jesse「音楽活動によりフォーカスしていけたらと思います。でも、人間というのは何かひとつを選択して生きていくことは難しいもの。だから、これからもいろんな可能性を模索していくことになるのでしょう」





━━アルバム全体を通じてリスナーに伝えたいこと、見てほしい景色はありますか?


Jesse「アルバムはダークでミステリアスな雰囲気がありますが、その奥には日常を自分らしく生きるためのパワーを享受してもらえるような内容になっていると思います。なかなか見通しのきかない状況ではあるけれど、そこに塞ぎ込んだりせずに、毎日の生活やご自身を大切にしてもらえる原動力になれば」


━━本日のファッションも素敵ですよね。ダークさがありながらも、ポップな色づかいで。アルバムの世界観に通じるものを感じましたが。


Jesse「(笑)。気分によって洋服は変わっています。昨日は、全身ダークなスタイルにコンバースをあわせてみたりとか。今日は、取材に遅刻したくなかったから、サッと着られるアイテムを選んだという感じですね。母親からもらったブレスレットがポイントです」





Photography Satomi Yamauchi(IG)
Text Takahisa Matsunaga



ジェシー・ジョー・スターク(Jesse Jo Stark)
アルバム『DOOMED』
(Jesse Jo Stark)
9月21日配信開始
https://jessejostark.salinks.co/doomed


PROFILE
7歳で作曲を開始、11歳の頃には最初のバンド<It’s Complicated>を結成する。2017年に元セックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズのプロデュースのもとデビューEPをリリースし、本格的にミュージシャン活動を開始。アルバム発売直後である9月30日にはロンドン、10月にはLAとNYにてライヴを敢行する。

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