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text by nao machida
photo by Satomi Yamauchi

ロミー 来日インタビュー/Interview with Romy in Japan




UKのポストポップバンド、The xxのボーカル/ギタリストであり、ソングライターやソロアーティストとしても活躍するロミー。2020年にシングル「Lifetime」でソロプロジェクトを始動し、昨年はプロデューサー/DJのフレッド・アゲインをフィーチャーした新曲「Strong」をリリースした彼女は、2023年に初のソロアルバムをリリースする予定だ。ここでは久しぶりに来日を果たしたロミーにインタビューを行い、ソロプロジェクトを始めることになった経緯や、ソングライティングにおける心境の変化、そして、The xxの近況などについて話を聞いた。


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――またお会いできてうれしいです。久しぶりの日本はいかがですか?


ロミー「ありがとう! また来日できて、とてもうれしい。前回は2018年のフジロックだったので、もう5年も経つんだよね。ロックダウンの間は行きたい場所を想像していたけど、私は日本のことをよく考えていて、ここに居る自分を思い描いていました。だから、また来ることができて夢みたい」


――前回の来日の後、ソロの作品をリリースしたほか、ソングライターとして他のアーティストにも楽曲を提供していましたね。


ロミー「The xxの前回のツアーが終わった後、曲を書くのが大好きな自分は曲作りを続けたいと思いました。当初は自分がソロ活動をすることになるとは考えておらず、他の人のために書きたいと思って、いくつか書いたんです。それからプロデューサーのフレッド・アゲインと出会って、彼もまたソロの作品を発表する前だったのだけど、私たちはソングライターとして一緒に曲作りをしながら友情を築いていって。曲を作っては『これは誰に提供する?』『これは誰かな?』と話していくうちに、私も少しずつ自信がついて、『私かも』と言えるようになったんです。それがソロプロジェクトの始まりでした」





――2020年リリースのソロシングル「Lifetime」は高揚感に溢れていて、とても元気づけられました。あの曲を聴いて、コロナ禍に部屋で踊っていた人は多いと思います。


ロミー「ありがとう! それはまさに私が望んでいたことだし、自分自身も同じことをしていました。ナイトライフやクラブ、爆音で音楽を聴いたときに得られる解放感が恋しくて、人と会いたいと思っていることに気づいたんです。だから部屋にディスコライトを置いて、おうちディスコにしていました(笑)。『Lifetime』には当時の自分が切望していたフィーリングが反映されたんじゃないかな。多幸感を感じられるものを求めていたので、ある意味、無意識のうちにそうなったんだと思う」


――パンデミックの間は誰の音楽に元気をもらっていましたか?


ロミー「正直に言うと、レディー・ガガです。彼女のアルバムをかけてキッチンで踊っていました(笑)。『Chromatica』はとても良いアルバムですよね。2000年代のポップダンスやソングライティングを参考にしていて、実際に大きなインスピレーションを得ました」


――ちなみに、ロックダウン明けの最初のライブでプレイした曲は?


ロミー「良い質問ですね! 2021年8月にロンドンのフェスでDJセットを行ったんだけど、(ロックダウン後に)初めてみんながフェスに集まって楽しんでいるんだな、と考えたんです。とにかく楽しくてアップビートで温かい曲を聴かせたくて、ソニークの『It Feels So Good』をかけました」





――そして昨年は、フレッド・アゲインをフィーチャーした新曲「Strong」をリリースされました。


ロミー「あの曲はパンデミックの前に書いて、パンデミック中にリモートで作業し、去年の秋に一緒に仕上げました。ソングライティングとエモーションとクラブミュージックのバランスをとりつつ、どうしたらそのすべてが同じ曲に共存できるかを探っていて、『Strong』はその一例なんです」


――曲のインスピレーションは過去の悲しみと、ミュージックビデオでも共演された、幼くして母親を亡くすという経験を共有している、いとこの存在だそうですね。


ロミー「この曲には私が悲しみと向き合ってきたこと、そして、彼が悲しみと向き合う姿を見守ってきたことが映し出されています。まだちゃんと(悲しみとの向き合い方を)理解できたとは思っていません。いまだに弱い自分を見せるのが難しいときもあるけれど、この曲はリマインダーなんです」





――ソロの作品では、The xxとは違った新しい魅力が新鮮です。以前よりオープンに表現されている印象ですが、ご自身はそう感じることはありますか?


ロミー「もちろん。フレッドと曲を書き始めた頃、とても私的な曲ができて、自分はもっと私的な表現をしたいのだと気づきました。それ以来、実生活や恋愛についてたくさん書くようになり、すごく解放された気分です。The xxではいつも一緒に書いていて、私の経験とオリバー(・シム)の経験を合わせているので、まったく違う作業なんですよね」


――それまではThe xxのジェイミーとオリバーと一緒に曲作りをしていたわけですが、フレッド・アゲインやマーク・ロンソン、ディプロなど、他のプロデューサーと仕事をして学んだことは?


ロミー「これまでとは違ったセッションをしてみたいと思った理由は、まさに学びと経験を得たかったんだと思います。そして、みんな手探りなのだということを学びました。誰もが本能に従っているだけなんですよね。それはとても新鮮な発見で、私も自分のアイデアにもっと自信を持っていいのだと気づかされました。大成功を収めたからといって、その人が曲の書き方を正確に把握しているわけではなくて。誰もが自分の大好きなことをしようとしているだけなんです」


――だからこそ、より私的な歌詞を書くようになったのですか?


ロミー「その通り。私は自分の私的な関係やセクシュアリティについて、もっとオープンに表現したかったんだと思う。それに、どんな話を伝えたらいいのか、どうやったらもっと直接的な表現ができるかを探っていました。決して以前の私が正直じゃなかったわけではなくて、これまではオリバーと曲を共有していたから、お互いのトピックからインスピレーションを受けながら曲を書いていたんです」





――ソロ作品のミュージックビデオやアートワークは、パートナーで映像作家・写真家のヴィック・レンターニュさんが手がけています。彼女との仕事はいかがでしたか?


ロミー「ロックダウン中に『Lifetime』をリリースするタイミングで共同作業を始めたんだけど、一緒にクリエイティブなことができてよかったです。彼女は私のことをよく知っているから、『その顔はやめて』とか言われたり(笑)。以前はもっとシャイだったけど、彼女と一緒に仕事をすることで、カメラの前でもよりリラックスできるようになった。(今年リリース予定の)ソロアルバムは私たちの人生からとても大きなインスピレーションを受けているので、彼女とコラボレーションできてよかったです。私にとって、とても私的な作品になりました」


――ソロアルバムについて、現時点で他に教えていただけることはありますか?


ロミー「もう完成していて、全曲を書き終えています。フレッドとたくさんの曲を書いたのと、私が大好きなマドンナのアルバムを手がけた、プロデューサーのスチュアート・プライスとも一緒に仕事しました」


―――スチュアート・プライスとの仕事はいかがでしたか?


ロミー「本当に刺激的だった。とても経験豊かな人だし、マドンナと仕事をしたときの話などを聞かせてくれて、たくさん学ばせてもらいました。とてもオープンマインドで、萎縮するようなこともなかったです。そして、私が自分のポップミュージックへの愛を受け入れられるように助けてくれました。ポップミュージックなんてイケてない、みたいなことを言う人もいるからね。でも、スチュアートもフレッドもそんなことなくて、私たちはいわゆるポップダンスの大ファン。アルバムは多幸感があって、アップビートで、エモーショナルだし…実はまだアルバムについて話すのに慣れていないんです(笑)」





――ジェイミーに続いて、あなたもオリバーもソロの作品をリリースしたわけですが、その経験はThe xxの次のアルバムに影響すると思いますか?


ロミー「必ず影響すると思います。自分たちが次に何をすることになるのか、私も楽しみなんです。ファーストアルバムは、ただ夢中になって作りました。でもセカンドアルバムでは、かなりのプレッシャーがあったんです。『1作目のどんなところが気に入られたんだろう?』と心配していて。あのアルバムを誇りには思っているけど、制作過程はちょっと大変でしたね。そしてサードアルバムでは、もう少しリラックスして、『とにかく自分たちのために作ろう』と話しました。次のアルバムも楽しみだけど、全員がいろんな方向に行っていたので、どんなものになるのか見当もつきません(笑)。そして、自由と遊び心を取り戻せるのではないかと思ってます。それは離れて過ごした時間からしか得られないものだと思う」


――メンバーとはよく話しているんですか?


ロミー「いつも連絡を取り合ってます。それぞれ旅したりしていたけど、常に近況報告する時間を作るようにしていて。今回もジェイミーが東京のおすすめを書いた長いメールをくれたんですよ(笑)」


――オリバーが昨年リリースしたソロアルバム『Hideous Bastard』については、どう思われましたか?


ロミー「オリバーとジェイミーが私抜きで作ったアルバムで、私にとっても素晴らしい作品でした。『(2人で)やってみなよ』と伝えたんです。『ちょっと、私も入れてよ!』とは言わずに(笑)。でも、彼らが一緒に手がけた作品を見ることができて興味深かった。オリバーが書いたすべての歌詞を離れたところから聴いて、彼が伝えようとしていた物語に耳を傾けました。複雑な感情やつらい経験もちゃんと言い表すことができていて…とても美しい、詩的な形で表現できていたと思うんです。彼が乗り越えてきたことを側で見守ってきたので、それが言葉で表現されたのを聴いて本当に圧倒されました」


――The xxとしては、新作の予定はありますか?


ロミー「今年は必ずスタジオ入りする予定。新作について、よく3人で話しているんです。ジェイミーも作品を仕上げているところだし、私も仕上げに入っています。それが終わればThe xxについて考える余裕ができるはずです」  


――夏にはソロアーティストとして、フジロックに出演されるんですよね。


ロミー「オファーが来たとき、ソロでの出演依頼をもらえたことに興奮しました。私はあのフェスが大好きなんです」


――ファンの皆さんも再会を楽しみにしているはずです。


ロミー「ありがとう。もしまだ待ってくれている人がいたら、だけど(笑)。待っていてくれて当然だとは思っていないんです。前作をリリースしてから大分経ちましたから。また来日できるのを楽しみにしています!」


photography Satomi Yamauchi(IG
text nao machida




Romy
“Strong”
(Young / Beat Records)
https://romy.ffm.to/strong

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