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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#20 断捨離

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捨てるということは、生活の洗濯である。
だが、断捨離は単なる捨て術ではないと思う。捨て切ったあとに、新たに物を増やさないことまで出来て断捨離だと自分は考えている。
消費の快楽をすでに快楽とすら感じないほどに、空いたスペースを物で満たしていくことに慣れてしまった現代の人々は、断捨離後もこのサイクルから離れられず、また同じことを繰り返しがちだ。シャツを捨てたら、新しいシャツをまた買うといったように、一見些細なことから、消費のサイクルに再び飲み込まれてしまう。生きるということは、買うことの連続ではない。このことを忘れがちだ。
自分は一年間服を買わないでみようと試したことがある。下着や靴下などの消耗品も含めてである。もちろんそれらが十分に手元にあることを確認してからだ。
結果は失敗に終わり、夏頃にTシャツを買ってしまったのだが、服が好きな自分が半年以上もそれから離れていられたことは、十分に断捨離的な成功だったと思う。音楽が好きな人なら、ダウンロードを控えるということになるだろうし、本が好きな人なら、図書館にリクエストを出すことになるだろう。とにかく自分が最も好きでお金を使っている分野を重点的にチェックするのが手っ取り早い。要は厳選癖を作るのだ。
一旦厳選癖が出来たら、次のステップでは選択に時間がかからなくなる。要不要の判断が瞬時にできる。さらに迷うこともなくなる。これはおそらく本来の断捨離の目的とは違うだろうけれど、とても効率的になれるのだ。
ジャッジが効率良く瞬時にできるようになると、そのメンタルの技術は、仕事のやり方にも好影響を及ぼすようになる。
情報を得るというのは、きっとどんなビジネスでも必要不可欠だと思うが、そこに迷いと遅延がないということで、仕事全体のクオリティが間違いなく上がる。結果として全体と詳細が同時に見えている状態になれる。これには長年に渡る経験が必要とされるが、経験とは取捨選択の蓄積だと思えば、そこの速度が上がることによって、経験量が増えたに等しい状態になれる。
ここまでを整理すると、断捨離生活によってもたらされる利点は、選択能力が高まり、それは交友関係などの日常範囲を超えて仕事や趣味にまで及ぶということだ。
恋愛においても、相手への選択力、付き合い方への選択力が大いに養われると思う。
さらに次に進むと、選択能力によって捨てる技術が高まったあとで、新たに増やさない技術として、溜めないというのが大切だ。
頼んでもいないのに、やって来るものがある。日常でいえば、DMとか始めから乗り気になれない誘いとかの類である。仕事で言えば、取引先からの必要以上に細かいメールなどもそうだろう。
それらを後回しにせずに、その場で右から左へと瞬時に流すように終わらしていくというのが溜めないということだ。
ついつい先送りしてしまうことになりがちだが、こういう面倒なことほど、その場で全力で終わらしていくことが、後のフリースペースを生むのだ。面倒なことほど、集中してパッパと済ませてしまうのは、溜めない技術の大前提だ。
捨てる技術、増やさずに溜めない技術を駆使して暮らすことは、フリースペースを確保することへの近道だ。フリースペースというのは、あなた自身のことだ。それがないというのは自分を失うということ。
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