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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#20 断捨離

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その答えに近づく一つのヒントとして、ほとんど何も持たない生活を一度経験してみるのはどうだろうか?
夏は、キャンプの季節でもある。キャンプというのは必要最小限な生活道具を持参して、野で暮らすことだ。たとえ一夜でもいい。その経験を得れば、未来から現在を振り返るような感覚で、不要な物の輪郭が結構しっかりと描かれると思う。
今までアウトドアに親しんだことのない人には、ちょっと壁のある提案かもしれないが、もし実現できたら、断捨離ライフにとって大きなきっかけとなるだろう。
テント自体を新たに買うのは断捨離的な発想から離れるので、友人の誰かに借りればいい。ついでに使い方なども教えてもらえるはずだ。
テントは、風雨から身を守ってくれる家に相当するだろう。寝袋は丸めれば片手に乗る寝具であり、ガスバーナーはキッチンである。天候に合わせた数枚の衣服がワードローブの全てであり、食材といえば、冷蔵庫にストックされる必要もない数日分のドライフードがあるだけだ。さらにそれら全てを持ち運ぶためのバックパックは、車のようだ。
背負った物だけで生活できるというのを体感すること。それがキャンプの素晴らしさだと思う。
とはいえ、最初は不便さばかりが目につき、いつもの日常との距離に戸惑い、後悔するかもしれない。そこをなんとか凌いで、慣れるまでテント泊を重ねるか、何度かに分けて経験することで、テント生活の清々しさが分かると思う。必要最小限の物だけで暮らせる経験によって、自分自身の中の、人間としての強さを確認できるし、そのシンプルな生活の美しさも分かる。
テントを畳み、バックパックを背負って帰った自分の部屋に、ちょっと驚くかもしれない。その物の多さに。
翌日から、きっとゴミ袋はスムーズに膨らんでいくことだろう。もちろんテント生活を基準とした極端な捨て方は誰もしない。それでも用途が重なる物、もしもの時に使おうと5年間も触れられたことすらない物、依存すれすれの思い出の品、などが不思議なほどに自分以外の誰かの物のように見えてくる。
是非、夏の間に一度テント生活をしてみてはどうだろう?
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