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Andrew Weatherall『Convenanza』インタビュー

―ああ、なるほど。

アンドリュー「たとえば“The Last Walk”にしても、俺は別に『世界を救うかもしれない、些細な行いの数々』ということについての歌を書こうと思って書いたわけじゃない。とにかく、そういう風に曲が『起こった』、というかな。たとえばあの歌の歌詞に『ベルリンの柔らかな灰が、ハンス・ファラーダの頭上に落ちる』って一節があるけども、あれは俺がノートに書き残していたものでね。“The Last Walk”を作っているときに、あのフレーズを音楽パートに乗せて歌い始めたんだよ。で、やってみてうまくいったから、『よし、これはメロディ・ラインとして使えるから、じゃあこれを活かしてなにか物語にしてみよう』ということになった。そこからふたりのドイツ語作家、ハンス・ファラーダやロベルト・ヴァルザーへと連想が進んでいき、俺は彼らがどんな意味を持つ人々なのか、彼らはなにをやろうとしたのか?と思いを馳せ、それについて歌を書こうとしたっていう。だから、俺の書く歌詞は大抵、自分のノートに書き付けてあったひとつのライン、みたいなものから始まる。大概他の誰かから、読んだ本や、偶然どこかで耳にした他人の会話、そういったものからインスパイアされているね」

―では、少しアルバムの話を離れて、この7年の間であなたが手掛けたリミックスについても聞かせてください。新しいところではニュー・オーダーの“Restless”、また最近ではないですがグライダーマンの“Heathen Child”のリミックスが個人的に印象に残りました。彼らとは、同じ時代を生きてきた、といえる部分があると思いますが、そうした特別な意識のようなものはありますか?

アンドリュー「いやぁ、それはないな。ってのも、彼らはむしろ、同時代を生きた仲間っていうより、俺が尊敬して目指してきたような存在であって……だから、ああいう自分が長いこと好きでファンだった手合いの人々のリミックス仕事を引き受けるときは、俺はすごくナーヴァスになっちゃうんだよ。たとえばニック・ケイヴは、俺はずっとファンで……なにせ、バースデー・パーティーのライヴも観てるしね」

―(笑)それはすごい。

アンドリュー「だからニック・ケイヴは始まりの頃からフォローしているし、ニュー・オーダーも同じようなもんで、彼らは大好きなんだ。というわけで……そのせいで、やっぱりこちらもなにかしら影響されてるのかもしれないよね? 要するに、自分は彼らのことが本当に好きだし、ものすごくリスペクトしてもいて、影響も受けている。だからこそ逆に、『彼らに自分の仕事を気に入ってもらいたい』っていう願望と必死に戦わなくちゃいけないっていう。で、これはほんとの話なんだけど、ニック・ケイヴは俺のあのミックスにピンとこなかったそうで」

―(笑)おや、そうなんですか?

アンドリュー「うん、ほんとだよ! うん……まあ(やや言葉を濁す)……いや、たまたまあの時点で彼は気に入らなかった、ってだけなのかもしれないけど……だからまあ、難しいってこと。あれくらい有名なアーティスト、あるいは自分自身の大きな影響源になってきたような相手の作品をリミックスするとなると、たぶんこっちも考え過ぎてしまうんだよ。その意味で仕事に影響が出るし、いつもの自分よりもちょっとばかし礼儀正しくなってしまうというか、そう、ちょっとだけ敬意が混じってしまうんだ(苦笑)。まあ、リミキサーとしては、それは避けるべきなんだろうけども」

―(笑)リスペクトしているだけに好き勝手に細切れにはできない、と。

アンドリュー「もっとも、俺は『敬意を払ってリミックスした』と思っているんだけど、たぶんニック・ケイヴ当人はあんまりそういう風に受け取ってくれなかったんだろうな。ってのも、あのリミックスでは彼のヴォーカル部を全部取っ払ってしまったから(苦笑)」

―(笑)。

アンドリュー「でも……どうなのかなあ? ボビー・ギレスピーの息子は、あのリミックスを聴いて『パパ、パパ、これなに? ロボットが行進してる音楽みたいだね~』って言ったそうだし、それは俺としてはオーケイだよ。だから、ぶっちゃけニック・ケイヴに『このリミックスは気に入った』と言ってもらえるよりも、8歳の子供に喜ばれるほうが俺としては嬉しい、みたいな(笑)」

―4月に来日公演が決まっています。今作をステージで披露するイメージはもうできていますか?

アンドリュー「(笑)自分でも全然見当がつかないよ! アッハッハッハッ!」

―(笑)なにもプランがないんでしょうか? 

アンドリュー「まだライヴの詳細は確認してないし、どういうギグになるものやら……ってのも、プレイする時間の長さやライヴの規模によって変わってくるものだから」

―そうですね。

アンドリュー「だから、今の段階では自分でもはっきりしていないんだ。まだショウの予定表もチェックしていないから、自分がどこで、どんなギグをやるのか把握していなくて。これがたとえばエレクトラグライドみたいに1万2千の大観衆が相手のでかいショウなら、やっぱりそれに合わせたやり方やサウンドがあるわけ。でも、一方でもっとごく小規模なギグだってこともあるわけで(苦笑)、だから、俺はこれまでに、日本であらゆる類いのギグを経験済みなんだよ。小さめのクラブ・ギグから巨大なイベントまで、色んなショウを日本でやってきた。というわけで、自分の出演時間がどこらへんか、自分の前に出演するのは誰なのか、そういった要素に依るね。ってのも、俺はイベントの全体の一部になりたいからさ。ただ単に、自分の出番になったところで前後の脈絡なしにステージに上がって、『よーし! みんな、俺のやることをしっかり聴けよ~!』なんてのはやりたくない。ってのも、フェス型のイベントだと、お客は長い夜を過ごすことになるものだ、という点に自分も気づいてね。だから、自分ひとりでスポット・ライトを浴びるよりも、むしろ俺はイベント全体が盛り上がっていく流れの一部になりたいな、と。要するに、俺からすれば自分個人のエゴを満たしたい云々ではないし、全体のムードにフィットすることの方が大切なんだ。それに、他の誰かの出番に向けてのウォーム・アップ役、前座役だって俺は難なく引き受けるしね」

―そんな~、謙遜し過ぎですよ!(笑)

 アンドリュー「いやいや、そうなんだって! たとえば『若いバンドが前座に起用されて、メイン・アクトを食おうとしてがんばる』だとか、そういうことは……俺はもうやる必要はないからね。そういうことよりも、むしろ俺は、その日、そのイベントいっぱいを通じて徐々に広がっていく、ひとつのストーリーの一部になりたいな、と。自分はどの時間帯に出演するのか、自分の後に続いて誰がプレイするのか、他のラインナップには誰が並んでいるのか、会場のサイズはどれくらいなのか、そういった点を俺は強く意識しているってこと。だから、自分のショウがどんなものになるのかも、それ次第なんだよ」

―会場や状況次第で、柔軟に対応できる、と。

アンドリュー「そうそう、そういうこと。だから、俺には自分の価値を証明する、その必要はないんじゃないか?と」

―確かに。

アンドリュー「だから、俺は若僧じゃないし……なにも、今売り出し中の駆け出しの若いDJじゃないんだし(笑)、自分のパワーを証明する必要はないっていう」

―「オーディエンスを自分のプレイでかっさらおう!」とは思わない、と。

アンドリュー「っていうか、そうやって観客の心を奪うよりも……むしろ俺としては、来てくれたお客がそのイベント全体を思い出すよすがになりたいというか。自分もそういう、徐々に展開していくある種の『物語』の一部になるってのを望むね。だから、俺はほんと、メイン•アクトの前に登場して場の雰囲気を盛り上げる、そういう役回りを担うのはまったく苦じゃないんだ。喜んでやるよ。俺の後に続いて出演する連中が、たとえば『みんな両手を上げて~!』系の、ガンガンに騒がしい盛り上がったムードを準備してほしいって言うんなら、もちろんオーケイ、俺はお望み通りに場をあっためますよ、と。だから、クラブでもフェスの場でも、その晩の冒頭1時間にプレイされたレコード、それはたぶんイベントのフィナーレ1時間を飾るレコードと同じくらい大事だろう――俺はそう思っていてね。だから、たとえイベントの始まった最初の段階はお客が10人くらいしかいないような寂しい状況であっても、やっぱりそこからその夜がどうなっていくのか、その『基盤』は敷かれているんだよ。で、自分がその基盤の一部になるのは全然オーケイだし、もしも自分がその晩のヘッドラインDJじゃなかったとしても、全体がビルド・アップしていく基盤、そのプロセスの一部になるのは一向に構わないんだ」

取材・文 天井潤之介/interview & text  Junnosuke Amai

 

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ANDREW WEATHERALL

Convenanza』

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ANDREW WEATHERALL “CONVENANZA” JAPAN TOUR

2016/4/29(FRI) RAINBOW DISCO CLUB 2016

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OPEN 14:00 / CLOSE 22:00

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