NeoL

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text by Makoto Kikuchi
photo by Hiromu Kameyama

Interview with Himi

himi3_NeoL_photography : Hiromu Kameyama



普段はどんな曲を聴きますか、と質問をした。「聞いている曲を人にシェアしたいとはあまり思わないんです」と言いつつも丁寧に教えてくれる。




「最初に挙げた3人以外で、すごくよく聴いているのは、スマパン(スマッシング・パンプキンズ)、フランク・オーシャンとか80~90年代のアーティストの曲。最近のものだったらブラッドオレンジっていうアーティストの曲もよく聴いています。ジブリの久石譲さんの曲をピアノでコピーしたこともあります。実際に弾いてみると改めて面白いな、すごい曲だなって感じるんです。やっぱり天才なんだなって」




お気に入りのプレイリストを人にシェアしたくないという彼の気持ちがなんとなくわかったような気がした。好きなものを好きなものとして享受するという全うな向き合い方。 “好きなもの”は自分に付加価値を与えるための道具じゃない。誰かに見せびらかす必要もない。




「ジャズとかクラシックもそうだし、とにかくいろんなジャンルの曲を聴きます。最初は興味がなくても、調べているうちに「こんなに感動するんだ」って気付けることもあって面白い。毎日電車に乗っている時間が長いから、その間はずっと音楽を聴いています。音楽を聴いているときって、頭のなかでショートフィルムみたいなのが流れているんです。曲のトーンに合わせてそのショートフィルムの内容も変わっていって。そうやって頭の中に描いた世界をそのまま映画にできたら最高だろうなって最近は考えています」




「やっぱり音楽が本当に好きなんです」と呟くように言った。そんなに心の底から思っていそうな声で好きだなんて言われたら、うっかり音楽のほうが照れてしまいそうだ。





「音楽をやっていると、自分が今こんな風に感じているんだっていうのがすごくよくわかる。自分だけじゃなくて、相手がどう感じているのかを考えるきっかけにもなります。ちょっと冷静になれるというか。実際に聴いたり弾いたりしているときにはそうやって音楽に助けられていることには気付いていないんだけど、後になってやっぱり音楽ってすげーなって感じるんです。辛いときも音楽があったらまあなんとかなるかって気がするし。小さい頃はそうじゃなくて、がむしゃらにというか、ただ音楽に触れてきました。なにかきっかけがあったとかではないんですが、ここにきて自然と、音楽に感謝しなきゃなって気持ちが湧いてくるようになったんです」

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