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text by Ryoko Kuwahara
photo by Riku Ikeya

OKAMOTO’Sのアドレス帳 Vol.32 藤田 佳祐(THE FOUR-EYED) x オカモトレイジ

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OKAMOTO’Sのメンバーが友人はもちろん、憧れのアーティストなどをゲストに迎える対談企画。オカモトレイジがホストを務める第32回目は、新宿歌舞伎町に位置し、独自の審美眼で国内外に多くのファンをもつセレクトショップTHE FOUR-EYEDのオーナー藤田佳祐が登場。音楽とファッションは別物という共通する感覚を持つ二人のあり方とは。


ーーお二人は普段から仲良くされているそうですが、近い距離だからこそ聞きそびれていたようなことをレイジさんから藤田さんに聞いていただきたいなと。


藤田「今さら改まった話は照れますね(笑)」

レイジ「ね(笑)。でも聞きたいことは色々あります。THE FOUR-EYEDの周年パーティでDJをやってほしいと依頼されたときに、選曲を真剣に考えれば考えるほど、音楽が全く鳴って来なかったんですよね。THE FOUR-EYEDはとても良い意味で音楽の色が無いお店だということにその時気がつきました。例えばNIRVANAのTシャツを扱っていたとしても、それはファッションというよりはNIRVANAのグッズだと思うんですよ。逆に音楽のカラーが出過ぎている店はファッションとの相乗効果があってそれはそれで良いんじゃないかなとも思うけれど、この店はそこをあえてやっていない。服屋として唯一無二なんじゃないかなと俺は勝手に感じていました。音楽とファッションは切っても切れない関係ではあるけれど、そこでカルチャーに頼らずファッションだけでやっていこうとしている姿勢出しはあえてやっていることなんですか?」


藤田「いや、言われて気づいたという感覚の方が近いです。店でも音楽はかけているけれど、ジャンルの統一感がないんですよね。でも、そこに僕のパーソナルなところが出ているのかもしれない。僕の中ではファッションと音楽は完璧に別物として捉えているところがあって。音楽からファッションに入った人は多いと思うんですが、僕はファッションに興味を持ったきっかけが独特だったんですよ」


――どういう入り方だったんですか?


藤田「僕は子供のころ転勤族で1、2年ごとにイチから友達を作らなくちゃいけなかったんです。それで短時間で周りと打ち解けるにはアウトフィットが一番便利だということに肌感覚で気がついて。アフリカの民族の地を訪れたときは彼らと同じ格好をするフォトグラファーと同じで、その土地土地のトレンドの真ん中を攻めるというか。多分、いじめられない方法に近かった。それが中学生になるとファッションでマウンティングもできるようになってくるんですよ(笑)。そういうのがきっかけで、ファッションは面白い魔法だなって思うようになったんです。生まれ育ったのが東京だったら人も多かっただろうし、また違った意識になっていたと思うんですけど。だから自己満足のためのファッションでもなくて」

レイジ「ファッションと音楽が全く違うジャンルという考え方は俺も同じかもしれない。俺はファッションに全く興味がない人間だったのでファッションよりレコード買ったほうが良いと思ってたけど、サイズ感の間違ったロックTシャツを着てうんちくを語っても全く説得力がない。と、あるタイミングで気付きました。本人がイケてないとどれだけ知識やスキルがあっても結局はダサいという印象で終わってしまう。けど、服がイケてる人がちゃんとした知識を持ってコメントすれば説得力がある。本業が音楽の俺はファッションに縛られてないからこそ、そこを格好良くキメ続ければプラスにしかならないという発想に変わって、服を買い出しました。そこが共通してる認識かもしれないですね」


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――藤田さんは音楽自体への興味はありますか?


藤田「はい。聴くのも好きだけど、やる方が好きです。色々辿ってしまう傾向があるんで、好きなバンドがいたらどこから影響を受けたのかとか掘っていました。いま考えると痛々しいけど、高校の頃は音楽でやっていこうと本気で思っていたくらい(笑)」


レイジ「へえ。俺はフォトグラファーの藤田さんとして知り合っているからそのイメージが強くて、音楽やっていたとは知らなかった」


藤田「ストリートスナップを撮らせてもらったのが最初の出会いですよね」


レイジ「そうですね。知り合ってすぐに“特集に参加してほしい”と言われて、その時に俺がこのお店の近くに住んでいて家に来てもらったりしてるときに、“この辺にお店出すのいいな”となったんですよ」


藤田「そうそう。そしたらここが見つかって」


レイジ「その特集では絶対に他の人がしないファッションで行きましたよね。本当にヤバい写真がプリントされたTシャツを着て行ってNGが出たり(笑)。最終的にはロボコップの寝袋みたいなのを着て撮影してもらって」


藤田「(笑)。僕的にはファッションってこういうことで良いんじゃないかなと思っていて。何でもいいんじゃん?というか」


レイジ「ぶっちぎってやるぜっていう意識ですよね。俺もふざけていたわけじゃなくてちゃんと他と違うことをやろうと考えて服を選んだし、そこのギリギリの琴線が同じ」


藤田「うん。一般的なルールからは外れているけれど、自分のルールがあってそれをちゃんと落とし込んでいるというのが大事だと思う」

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――そこにはやっぱりセンスとスキルも重要になってくると思うのですが二人はどのようにしてそれを身に着けたんでしょう?


藤田「僕はセンスは後天性だと思っているタイプです。綺麗なものを見るなどの経験も大事だけれど、それをちゃんと自分の中に留めるかどうかということなんじゃないかな。あとは、運」


レイジ「俺は小さいころからの家庭環境が影響していると思う。小さいころに着ていた服を見てもいまの自分が着たいものと通じてるけど、それは親のセンスですよね。学校の集合写真を見ても一人だけ違う格好をしてるんですよ。ヒョウ柄のシャツにサテンの黒のパンツ履いてたりする小学生だった。でも自分の意識としても、みんなが着てる服はダサいから着たくないなと思ってた」


藤田「レイジくんはいつから自分の趣味で服を選ぶようになった?」


レイジ「随分遅くて21歳とか22歳かな? 求めるものは見えてなかったけれど、“これは嫌だ”というものは明確にあったんですよね。さっき言ったように物心つく前からレベルの高い服を着せてもらっていたから、根底として他と違うものというのはあって。で、中学で音楽にハマって服とかどうでもよくなり、バンドを始めてステージに立つときの衣装はちゃんとしようという意識になりました。下北の激安服屋に行ってサイケな服を買ったりして」


藤田「もともとポテンシャルがあっただけに、その時に爆発したんですね」


――藤田さんの場合はどうですか?


藤田「親も兄弟もファッションに興味がないので家庭からの影響は全くないです。これまでに色々着てきたんですよ、パンクっぽいときもあれば裏原っぽい時もあって。でも変わらないところとして、品格と敢えて空気を読まないTPOのバランス的なところは自分なりに意識してきました」


レイジ「TPOをわきまえたうえで、はみ出すコーディネイトですよね」


藤田「そうです。それが、さっき言ったような“新しい場所で自分の位置感を示すツール”として機能してきた部分です」


レイジ「このお店がまさにそうだと思うんです。なにもわからず新宿で出したわけではなく、十分にわかったうえで原宿や代官山を外したという」


藤田「この店の立ち位置や取り扱っている内容が全部自分的には一貫しているんです。クラスの中でのレイジくんの立ち位置と、東京の中でのこの店の位置というのは共通しているなとも思うし」


レイジ「たまに俺が正統派の恰好をすると“おっ、意外!”となるような感じ」


藤田「そう、良い意味で期待を裏切ったりするのが好きなんです。あと、こういう人って決められるのがイヤで。“藤田くんはこうだよね!”と言われるとイヤになってしまう」


レイジ「わかります。人からオススメされたものって大体ハズレだから(笑)。最初の話に戻ると、そういう定義がないお店だからこそDJするときに曲選びが難しかった。最終的にK-POPをかけ荒らしたけど(笑)」


藤田「めっちゃ盛り上がりました(笑)」


――(笑)。ショップで取り扱う内容も立ち位置と同じということですが、具体的にセレクトの際のルールはありますか?


藤田「“売れるかどうかの目的では決めない”ということですね。売ろうとして商品を展開しない。それをやってしまうと全ての意味がなくなるんです。この場所でやっている意味は、極端な話、アンチマネーの姿勢をとりたいということ。そういうのってパンクだと思うんですよ。パンクの定義は人それぞれですけれど、僕にとってのパンクはこれです。真面目にパンクをやりたい」


レイジ「パンクの定義について、ザ・クラッシュのドン・レッツと対談した時に話したことがあって。彼みたいなレジェンドのパンクス曰く、“過去を顧みず、未来に向かって新しい価値観だけをもとめること”だって。だからヒップホップもパンクだし、ジャズもロックンロールもパンクだと言っていて、すごくしっくりきたんですよ。カワイイというカルチャーを世界に発信したという意味できゃりーぱみゅぱみゅもパンクだという話にもなって」


藤田「すごく納得できる。賛成」


レイジ「俺にとって音楽面でもファッション面においても言えるパンクの定義は、“これなら俺にもできる”と思わせられるものなんです。そういう創造意欲かきたてるエネルギーを与えられるものなんじゃないかな」


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――逆に藤田さんからレイジさんに聞きたいことはありますか?


藤田「単純に僕が知りたいことになってしまうんですけれど……結婚するタイミングってどうやって計るんですか? 僕、レイジくんはめっちゃIQが高いと思うんですよ。そういう人が結婚するんだ!と驚いて」


レイジ「昔から子供が欲しかったし子供を主軸で全部考えてたから、この人が自分の子供のお母さんになってほしいと感じて結婚しました。そこが決め手かな。あと、笑顔が素敵。知り合ったのは随分前で5~6年くらいは会ったら挨拶する程度だったけど、バレーボールとか一緒にやるようになって、ふざけてるのとか見たときに“こんな素敵な笑顔をする人が自分の子供のお母さんになったらいいな”と思って……まあ結局、子供主体と言いながら自分が好きになっちゃってるんですけれど」


藤田「面白いのは、レイジくんの視点が旦那としてというよりは子供からの視点というところですね。究極の客観性を持っていると思う」


――客観性は藤田さんも同じくらい持ってらっしゃるように感じますね。レイジさんは他のことに関しては確かにそうですが、音楽に関してはまた違うかも。


レイジ「うん。俺はファッションに関しては客観的だけど、音楽に関しては主観でしかないです。レコーディングのドキュメンタリーを観てても超機嫌悪いし(笑)、自分で観ててビビります」


藤田「確かにOKAMOTO’Sからレイジくんに入った人はイメージがまた違うのかも。それにも繋がるけど、インスタではレイジくんのパーソナリティが全開だから、バンドとのバランスをどう考えてるのかも気になります」


レイジ「俺の悩みとしては、インスタから入ってる人はオカモトレイジはチェックしてくれてるけれどOKAMOTO’Sは意外とチェックしてくれてない人が多いから、どうやったらそこが繋がるのかなってことなんです。バンドで自分のスタイルが確立されているからこそ、その他はなんでも縦横無尽にできてるという意識があるし、ちゃんとバンドにフィードバックしたいんですよね。そういう人にこそ武道館に来てライヴを観てほしい」


藤田「ベースがあるからこその自由ですよね。逆にレイジくん自身が自由にやってる中で得たものがバンドに還元されている部分もある気がします」


レイジ「DJは音楽的にもフィードバックする要素が多いです。そのアーティストを観たいというお客さんが集まるライヴと違って、DJは通り過ぎていく人の足をどうやって止めるか。つまらなかったら立ち去られるし、リアルタイムでどんな人が目の前にいるかが可視化できるDJの経験は、バンドで曲を作るときに狙いたい層がどんな曲に反応するかをイメージするのにとても役立っています。例えばDJでABBAの“ダンシング・クイーン”をかけたときにめちゃくちゃ盛り上がったのを見て作った曲が“NO MORE MUSIC”と“Dancing Boy”で」


藤田「その意識はストリートライヴに近いのかな」


レイジ「そうかも」


藤田「レイジくんが枠にとらわれずにK-POPや若いラッパーのフックアップやってるのを見てると、その精神性にパンクを感じるんですよ。ポジティヴだし、レイジくんが格好いいと言うものは全部格好いいんじゃないかなと思えるブランディングも確立されてるし」


レイジ「嬉しい。実際、俺自身がいいと思ったものしか絶対にいいって言わないですから」


藤田「インスタのやり方とか超参考になります。すごく考えてやってるだろうに、素でこうなんだろうと感じさせるんですよね」


レイジ「俺、自分のインスタを見返して面白いと思う瞬間が最高に幸せっす(笑)」


藤田「僕は、THE FOUR-EYEDのインスタは最近やりすぎちゃってるなと反省中で。こだわってる風になってしまってる。難しいですね。格好つけてるのは格好悪いから、もっとぐちゃぐちゃさせたいんです。お店なのに一人の人格って感じにしたい。レイジくんのインスタで好きな投稿があって、お気に入りの漫画をずらっと並べておいて、“作者の名前、すぐにわかっちゃったらつまらないから教えない”っていうの。あれ、いいですよね」


レイジ「ああ! ディグって辿り着く気持ちよさを体感してほしかったんですよ。いまは辿りつけ過ぎるんですよね。ShazamもそうだしDMで質問できるし。でも、ずっとモヤモヤしたあげくにそれが何かわかったときの興奮はずっと残るから体感してほしい」


藤田「わかる。産婆術というか、自分で答えを出させるというのはこの店においても大事にするようにしています。良い意味で不親切を提供したい」


――そろそろ締めになりますが、何か言い残したことがあれば。


レイジ「普通のこと言っちゃうと、武道館に来てほしいです。あとはZeppツアーやりたい。アジアツアーもやりたいってことですかね」


藤田「僕からは……あれ? 何を言おうとしたんだっけ。何か肝心なことを言おうとしていたんですが忘れちゃいました」


レイジ「もやもやする! まさか何を言おうとしたか忘れたっていう不親切ですか?(笑)」


藤田「そういうことにしておきましょう(笑)」


photography Riku Ikeya
text & edit Ryoko Kuwahara


THE FOUR-EYED
13:00~21:00
東京都新宿区歌舞伎町2-8-2 パレドール歌舞伎町1F

https://www.thefoureyed.shop


藤田佳祐
THE FOUR-EYEDオーナー。クリエイティヴディレクター/フォトグラファーとしても活動。



OKAMOTO’S
オカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)。2010年5月にアルバム 『10’S』、11月に『オカモトズに夢中』、2011年9月に『欲望』を発売。2013年1月に4thアルバム『OKAMOTO’S』を発売し、7月に は両A面シングル“JOY JOY JOY/告白”を、11月6日にニューシングル“SEXY BODY”をリリース。2014年1月15日に岸田繁(くるり)を迎えた5th アルバム『Let It V』を、8月27日にはRIP SLYME、奥田民生、黒猫チェルシー、東京スカパラダイスオーケストラ、ROY(THE BAWDIES)らとコラボを果たした5.5 thアルバム『VXV』を発売。2015年9月30日、6thアルバム『OPERA』をリリース。2016年6月1日にNetflixドラマ「火花」の主題歌「BROTHER」を表題曲にしたシングルをリリース。10月29日、東京・日比谷野外大音楽堂公演にてキャリア初の47都道府県ツアーファイナルを敢行。同ツアーからの厳選音源と、ツアー中に書き下ろした新曲「ROCKY」を収録し、ツアーファイナルの映像を全曲収録したBlu-ray付きライヴアルバム『LIVE』を2017年5月31日にリリース。8月2日に7thアルバム『NO MORE MUSIC』をリリース。同年10月7日には中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンの開催を発表し、即完売となる。同月30日より恵比寿リキッドルームを皮切りに全国23か所を回るツアー「OKAMOTO’S TOUR 2017-2018 NO MORE MUSIC」を実施。ファイナルのZepp Tokyoも完売となる中、11月には東阪ホール公演と、東海エリア限定の対バンツアーも敢行した。2019年1月9日、8thアルバム『BOY』をリリース。2019年4月6日(土)横浜BAYHALLを皮切りにOKAMOTO’S 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR 2019 “BOY“がスタート。2019年6月27日(木)に日本武道館での公演も決定。ツアー詳細はHPにて。
http://www.okamotos.net

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