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text by Ryoko Kuwahara

Fantastic Fest Issue/日本未公開映画特集 : 『Cosmic Candy』Director Rinio Dragasaki, Composer Yiannis Veslemes






テキサス・オースティンで開催される映画祭Fantastic Festは、大作やシリアスなムードのものよりもちょっと笑えてしまようなスプラッターやジャンルムービーに焦点を当てているのが特徴。場所柄もあり、VHSやレコードなどノスタルジックな素材や作り方にこだわった作品も多くラインナップされている。そのFantastic Fest2019年度のリストから、NeoLが気になる作品を紹介する。1本目は、ギリシャから届いた良作『Cosmic Candy』。
主人公のアンナはスーパーで働く一人暮らしの女性。規則正しい生活を送り、なんでも3度繰り返す習慣を持つ。最大の喜びは”Cosmic Candy”という口の中で弾けるお菓子を食べながら空想に耽ること。波風の立たない平穏な生活を愛する彼女だが、アパートの隣の住人の男性が行方をくらまし、その10歳になる娘ペルサがアンナの部屋に押しかけてきたことで人生が大きく動き出すーー。ストーリーの大筋自体は決して目新しいものではないが、『アメリ』を観た時と同じ胸の高鳴りを覚える抜群の色彩感覚に支えられたファッション、プロップのセンス、そしてファンタジーと現実のバランスの妙、着地の見事さで独自の輝きを放つ仕上がりになっている。ギリシャの気鋭女性監督のRinio Dragasakiと耳から離れないユーモラスな曲を生み出したコンポーザーのYiannis Veslemesの声を記す。(→ in English


――この映画は、どのようなアイデアを元に作られたのですか? とてもパーソナルであり、人生に対してのトラウマや不安について描かれていますよね。これはあなた自身の経験からですか?それとも観察して得たものですか?


Rinio Dragasaki : このストーリーは、私の経験からというよりは脚本家のアイデアが元になって作られています。でも台本を練っている際に自分の感情をかなり詰め込みました。今回、一番初めに私が気に入ったのは物語よりも主人公なんです。主人公とペルサとの交流が面白いし、夢というアイデアもいいですよね。


――音楽について聞きたいのですが、彼らが常に歌っている曲は実在する曲ですか?それともこの映画のために作られたのですか?


Rinio Dragasaki : 作りました。「聞いたら嫌な気持ちになる曲」というのを探していて、実際に”Sandwich”という曲を見つけたんですけど、映画でその音源を使うにはものすごくお金がかかるので、作ろうということになったんです(笑)。


Yiannis Veslemes : ひょっとしたら、我々の給料より高いかもしれない(笑)。 この曲が観客の印象に残るものとなりそうならよかったです。







――作品の中で取り上げられている、ギリシャ人が直面しているメンタルヘルスの問題とはどういうものですか?


Rinio Dragasaki : 実は、今まであまりメンタルヘルスについて調べた経験はなかったのですが、調査をして行く中でさまざまなことが判明しました。ギリシャでは本当に多くの人がメンタルヘルスの問題に直面していて、不安症が増加傾向にあり、それがギリシャ特有であることがわかりました。そこで私は、作品内で彼女が抱えている過去の問題よりも、人間関係に関心をいだけないことの方に焦点を当てることにしたんです。


――Cosmic Candyというアイデアはどうやって思いついたんですか? 誰もが愛さずにはいられないこのクレイジーな球体について教えてください。


Rinio Dragasaki : Cosmic Candyは私が思いつきました。本作の最初の段階ではCosmic Candyのアイデアはなかったんですが、物語に何か要素を入れたくて。ポップなシンボルを登場させたかったし、何か心に残るものが欲しかったんです。このキャラクターのことはすごく気に入ってます! 素晴らしい体験でした。このキャラクターに“Cosmic Candy”を名付けて、アートワークをみんなに共有したのですが、可愛いけど怖くてクレイジーという評判だったのでイケると確信して、全面的に打ち出すことにしました。私の子供もアートワークを見て怖がっていました(笑)。Cosmic Candy は人がいないと生きることができないというのも良くないですか? 父にComic Candy のアイデアを見せた時、物理的なものを作った方がいいなと思って、実際に作ることにしたんですが、彼女の目線に立って物事を見るのって面白いはずです。
このボール(Cosmic Candy)についてですが、映画が現実的で魅力的に感じてもらうためには2つのボールを作るのがいいと考えました。1つ目は、外から見たボール。手がついていて口や目が動くロボットのような物理的なもの。もう1つは、ボールの目線。ボールの目線になって観客は俳優たちが見えるようになっているんです。このアイデアは撮影の際に思いつきました。


――最後に、フレンチトーストにのせるベストなマヨネーズは?


Rinio Dragasaki : (笑)。実は、私はフレンチトーストにマヨネーズはかけないんです。あくまで映画の中のこと。でも、作品で使っているこの歌の歌詞はとても気に入っています!





text Ryoko Kuwahara

CosmicCandy.Trailer.International from fenia cossovitsa on Vimeo.


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