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text by Junnosuke Amai

「現実逃避できるような音楽を作りたい。聴いている間に別の世界に行けるようなね」SORRY『925』インタビュー /Interview with SORRY about “925”




活況が続くサウス・ロンドン。なかでも早くからリスナーの期待を集めていた話題のバンド、ソーリーが待望のデビュー・アルバムを完成させた。制作にトータル2、3年近くが費やされたという『925』は、これまでシングルやミックステープを通じて披露されてきた多彩なサウンド……R&B、フォーク、インディ・ロック、エレクトロ、ノイズ……がフレッシュに凝縮された一枚。寓話的で皮肉とユーモアが効いたリリックと相まって、何層ものフィーリングが織りなす率直でオープンなポップ・ミュージックが表現されている。「現実逃避できるような音楽を作りたい。聴いている間に別の世界に行けるようなね」。そう語るルイス・オブライエン、そして幼馴染のアーシャ・ローレンスのふたりが手を取り合い始まったソーリーの成り立ち、音楽、日常について話を聞いた。(→ in English

ーー初めてのインタヴューなので、まずはカジュアルな質問からさせてください。いちばん最近に聴いた音楽、観た映画やドラマ、読んだ小説で印象に残っている作品はなんですか。


ルイス「『パラサイト』もよかったし、『マリッジ・ストーリー』もよかったよね。アダム・ドライバーはいい俳優だから。僕ら2人ともNetflixはほとんど観ないけど、映画はたくさん観る。僕が一番好きな映画は『地獄の黙示録』だね」


アーシャ「私は好きな映画でいったら『ドグマ』かな。ドラマはほとんど観ないけど、そういえば最近『Secret Diary of a Call Girl』を観た。あれはイギリスのドラマだし、すごく笑えた」


ーーこういう気分の時はこの曲を聴く、みたいなものってありますか。いつでも聴けるように身近に置いてあるレコードとか?


アーシャ「アーサー・ラッセルの新しいアルバム『Iowa Dream』を最近よく聴いてる。あとは、(サンディー)・アレックス・Gにはとにかく影響を受けてるんだよね」


ルイス「とくに『DSU』は僕たちにとってすごく重要なアルバム。エリオット・スミスの『Either/Or』にも思い入れがあるし、ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』もね」





ーーありがとうございます。さて、ソーリーはおふたりの出会いがそもそもの始まりだそうですが、互いのどんなところに惹かれたんですか。当時、ふたりがシェアしていた音楽、あるいは興味や関心の対象とはどういったものだったのでしょうか。


ルイス「もともと同じ学校に通っていて、そこからずっと友だちだから、もう10年以上の付き合いになるね。11年になるかな。2人とも当時からギターを弾いていて、お互いがやってる音楽が好きだったから、一緒になにかやったら面白いかなと思ってバンドを始めることにした。遊びのつもりで始めて、とくに真面目な理由はないんだ」


アーシャ「楽しそうだなと思って始めただけ。基本的にはずっと2人だけでやってきたし。当時からやっていた音楽をやめないで続けて、ライブをやって、その次元がどんどん上がっていったっていう感じ。レコーディングも当時からずっと続けているしね。自分たちの曲は必ず録音してる」


ーーあくまで自然体な流れで始まったと。それは間もなくリリースされるデビュー・アルバム『925』についても同様ですか。どんなことを大事に考えて制作に臨みましたか。


アーシャ「アルバム全体の曲を調和させることを最重要視してた。一つひとつの曲がバラバラにならないようにね。これまで作ってきた曲をまとめた、ひとつのコレクションを作ることが昔からの目標だったから。ひとつのアルバムとして聴いてもらえるものにしたかった。それが私たちがやりたかったこと」




ーー制作中のエピソード、インスピレーションになった出来事があったら教えてください。


ルイス「うーん、とくにないな」


アーシャ「いつも通り、友だちと遊んでいたりする時間がインスピレーションになると思う」


ルイス「僕たちにとっては、アルバムのレコーディングの期間というのがはっきり決まっていないからね。例えば3週間とか1ヵ月とかスタジオで集中してレコーディングするのは、僕らにはあまり向いてない。このアルバムを作るのに、中核になった期間は3ヵ月ぐらいだったと思うけど、去年の前半から家でレコーディングをしたりはしていた。その前から作っていた曲も色々とあったし、これまで溜めてきたアーカイヴをアップデートしたものをアルバムに入れたいとはもともと思ってた」


ーーなるほど。


ルイス「あとは、すでに発表したミックステープに入れてた曲もね。だから、制作のプロセスをトータルすると2~3年になる。デビュー・アルバムだから、プレッシャーがなかったっていうとウソになるけど、それはセルフリリースとは違うじれったさみたいなものがあったからだと思う。それに、自分たちが正しい方向に向かっているってことを確かめながらやらないといけないからね。だから、それを完成させられて今はハッピーだよ。もちろん自分で単発の曲を出すのも楽しいけど、これまでそうやって出してきた曲を進化させたかったから。その進化させるプロセスに時間がかかった。慎重に進めないといけないからなんだ」


ーー現時点での集大成的な作品でもある、と。ソーリーのサウンドはジャンルを横断したもので、最近の言い方をすれば「ポスト・ジャンル」とも呼ばれるようなものだと思います。ただ、音楽的な影響として最初に大きかったものを挙げるとするなら何になりますか。物心ついたときに最初にインパクトを覚えた音楽というか。


アーシャ「ポスト・ジャンル! 面白いね(笑)。影響を受けたアーティストは本当にたくさんいるから、その中からひとつを選びたくはないな。これまでの色んな経験の中で変わってきたものでもあるし。映画にも本にも、色んなジャンルから影響を受けてるから」


ルイス「ただ、このアルバムは映画の『ドグマ』からかなり影響を受けてる。あとはやっぱり、アレックス・G。アーサー・ラッセルも」


アーシャ「音楽を聴き始めたばかりの頃に聴いてたのは、誰しも若い頃に聴くような曲。ニルヴァーナとかね。最近で言うとタイラー・ザ・クリエイターとか」


ルイス「僕は親の影響でビートルズを聴いてた。ヒット曲がまとめてある『ザ・ビートルズ1』とかが家で流れてたな」





ーー作る曲が今のソーリーのスタイルに近くなっていったのはいつ頃ですか。始めた頃から徐々にソングライティングやプロダクションも変化を重ねていったと思うのだけど。


アーシャ「レコーディングで色々学んできたけど、今回のアルバムはこれまで作ってきたものよりもっとロックだったりデモっぽかったりするサウンドもあって、だんだん自分たちにとってちょうどいいバランスが見極められるようになってきたと思う。ライヴミックスとかもそうだし、自分のサウンドの聴かせ方がうまくなってきた。サウンドそのもののスタイルはあんまり変わってないとは思うんだけど、それが形になってきたかもしれない。わからないけど。スタイルは常に変わり続けるものだから」


ーーそうしたソーリーの折衷的でクロスオーバーした感覚は、多様な人種やカルチャーが入り組んだサウス・ロンドンの土地柄の影響もあると思いますか。それとも、“Z世代”ともいわれるような世代的な感性、それこそSNSやストリーミングサービス以降の様々な音楽にアクセスできる時代ならではのものだと思う?


ルイス「とくに土地の影響を受けたとは思わないな。僕らが聴く音楽も色々だし、もちろんロンドン以外の曲もね」


アーシャ「ストリーミングサービスでいうと、SoundCloudの影響は大きかったかも。本当に色んな人が自分の曲をアップしてるし、それを誰でも聴けるしコメントも残せるから。影響を受けたのが何かといわれたら、SoundCloudになるのかもしれない」


ルイス「コメントしてくるのはほとんどアーシャかケヴィンだけどね(笑)。ただ、SNS上のリスナーの反応に影響を受けることはなくて、インスピレーションをもらうとしたらリアルな生活の中でのリアクション。ライブで話しかけてきてくれる観客の人とか。『この曲は自分にとってすごく思い入れがある』とか言ってもらえると、純粋に感動するよ」





ーーちなみに、今回のアルバムには収録されていないですが、以前リリースされたシングル“Showgirl”はフランク・オーシャンやジェイムス・ブレイクのコラボレーターでもあるショーン・オークリーのプロデュースが話題になりました。あれはどういう経緯だったんですか。


アーシャ「担当からもらったプロデューサーの一覧みたいなのに彼の名前が書いてあって、サウンドを気に入ったのがきっかけだった。仕事をした時間自体は2時間だけだったけど、ミックステープ(『Wished / Lies』)も一緒にやったしいい経験になったな。シングルの方は彼とやったスタジオレコーディングのまま出したけど、ミックステープの方はあとから自宅でやり直したんだよね。気になる部分が出てきて、丸ごと録り直すことにした。一部だけやり直すのは逆に大変だし」


ーーリアルと空想、ユーモアと風刺が織り交ぜられたソーリーの歌詞には不思議な魅力があります。聴き手を煙に巻きながら、時折鋭いフレーズでハッとさせる、みたいな。歌詞のアイデアはどのようなところから生まれるのでしょうか。


アーシャ「色んな本を読んだり、誰かとした会話からアイディアをもらう。実際の会話のフレーズをきっかけにして、そこから曲作りにつなげたりね。実際の会話を歌詞に反映させることで、曲にインパクトが生まれると思うし。たぶんだけど。でも本当のところはよくわからない。歌詞は勝手に出てくるものだから。寝る前のベッドの中とか、音楽を作ってる最中にね」


ーーアルバムには新曲と既発のシングルが併せて収録されていますが、今のあなたの気分をリプレゼントしている曲を選ぶとするならどれになりますか。


アーシャ「うーん、どうなんだろう」


ルイス「今車で移動中だから、“Right Round The Clock”かな(笑)」


ーー先日、イギリスのEU離脱が決定しましたが、近年、気候変動の問題など暗く不安なムードが垂れ込めています。そうした社会的・政治的なトピックというのも自分たちの音楽に影響を与えている部分はあると思いますか。


ルイス「たしかに最近の世情は暗くなってるから少なからず影響は受けるけど、僕たちは逆に、現実逃避できるような音楽を作りたいと思っているから。聴いている間に別の世界に行けるようなね」


ーーちなみに、アルバムの制作中によく聴いていた音楽、レコードはありましたか。


アーシャ「B-52’sかな」


ルイス「あとはウィーンとアーサー・ラッセルもね」


ーー最後に。ソーリーというバンド名のせいであらぬ誤解を受けたことは?


ルイス「誤解はないけど、よくジョークは言われてた。最初の頃はね。あとは、Sorryに対して『大丈夫だよ』って言われたりね。それも想定済みだけど(笑)」





text Junnosuke Amai



SORRY
『925』
2020/03/27 FRI ON SALE
(BEAT RECORDS / DOMINO)

国内盤CD ¥2,200+税
国内盤特典:ボーナストラック2曲追加収録 / 解説書・歌詞対訳封入
BEATINK.COM:
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TRACKLITSING
01. Right Round The Clock
02. In Unison
03. Snakes
04. Starstruck
05. Rosie
06. Perfect
07. As The Sun Sets
08. Wolf
09. Rock ‘n’ Roll Star
10. Heather
11. More
12. Ode To Boy
13. Lies (Refix)
[Bonus tracks for Japan]
14. Swans
15. Tales of The West End

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