NeoL

開く

藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#25 富山発熱

newmoon2
そんな東京を去って北陸に向かうこと約1時間。途中の雲が美しかったから、買ったばかりのソニーのコンデジのハイコン白黒モードとやらで20枚ばかり撮った。私は、相変わらずぬるくなったイカのようにぐったりしていたけれど、写真を撮ることだけはした。とっても美しかったから。
発熱すると、世界が美しく見えるのはなぜだろう。ぼうっとして、うっすら涙目で見るからなのだろうか。それもあるかもしれないが、きっとそれは神様の前貸しなのだろう。いつ返せばいいのか知らないが、そして勿論返さなくてもいいのだろうが、一応私は前貸しとしておいてる。
私は、信仰心もむらがありつつも持参しているので、発熱時に見せてくれた美しい世界を、平常に戻ったら何かに還元しようかと思いがちだ。幸い写真というのは、ぼうっとしていても撮れるものだから、それを共有するとする。
富山空港に到着すると、タクシーに乗った。本来バス利用が好みだが、体調を優先させた。シルバーの高級そうな個人タクシーに乗ったまでは良かったが、ホテル名を告げても運転手のおっちゃんは、はあ?という対応だった。住所を教えて欲しいと言われ、伝え始めると、カーナビの操作が怪しくて、かわりにいじってあげ、最後の「ここへ行く」ボタンを押そうとしたら、なぜか手を払われて拒否された。「場所が分かればいいんです」そうおっちゃんは言って、走り出した。機械の指示音声が煩わしいのか、ボリュームは最小になっていて、ことごとく指示される道をおっちゃんは無視した。私がイカのようにぐったりしていたのは言うまでもない。
さて、ホテルに入ると、荷物を下ろしてさっさと夕食をとって早く寝てしまおうと、駅前に向かった。たまたま見つけたお茶屋で生姜湯を買い、そこのお姉さんに教えてもらった回転寿し店へと向かった。
調子が悪い時には、沖縄のとある鍼灸院の食事制限に従って治すことにしているのだが、その制限は完全にそこでの臨床データを元にしてあり、トマトはだめでもミニトマトは良いといった具合に、鍼灸院の先生も何故かはわからないが、そういう結果があるのだから仕方がない、ということらしい。
そのOKフードは、これじゃあ食べるものは塩むすびぐらいか、と思うほど少ないのだが、自家調理した肉魚は良いとされ、刺身もその中に入っている。回転寿し行きは、一応理にかなっている。
そのリストを参考までに紹介したい。
無添加味噌、無添加醤油、エキストラヴァージンオリーブオイル、珊瑚カルシウム入り沖縄の砂糖、天然塩、大豆、枝豆、豆腐、金時豆、自家調理の肉魚、刺身、ニンニク、ショウガ、バター、卵、そば茶、小麦粉、乾麺、米。
かなりの制限に驚かれることだろう。できるのは、卵かけごはん、豆腐の味噌汁、ミニトマトのガーリックオイルパスタ、かけうどん、豚の生姜焼き、などが主なもので、料理好きなら逆にやる気がでるのかもしれない。
3ページ目につづく

1 2 3 4

RELATED

LATEST

Load more

TOPICS