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天野太郎(横浜美術館 主席学芸員)「美術は近くにありて思ふもの」Vol.4 言語を剥ぎ取った先の可能性 後編 ゲスト: TAIGEN KAWABE(BO NIGEN)

天野「そういう違いは色々あって、その違いを認識すればするほど自分が次の一歩を踏みだす方向性が見えてくると思うんですよ。僕、YouTubeでしか観ていないからあまり偉そうなことは言われへんけど、BO NINGENのライブは観に行きたいなと思った。

最初に言ったんですけど、色々なものが入ってて、全員がある種の動きをするけど、とにかく不思議。何かにはめ込むことができない。セリフ回しというか言葉もそうだし、演奏の仕方も、たぶん音もそうやと思う。どこかに回収されない。多様な価値があって正直驚いた。あまり経験したことがないようなものが入っている感じがしました。パフォーマーも何人か知ってるけど、即興的にやってる風に見せながら実はものすごく練習してて計算尽くでやってる人は沢山いるんですけど、当たり前なんだけど計算尽くでやる方が面白いのね」

TAIGEN「はい」

天野「つまり僕らは結果しか知らないわけです。即興ですと言い張る人もいれば、計算尽くでやらないと即興なんてできないと言う人もいたりするんですけど。もちろんジャズなんかもある種の即興性がなければできないとは思うけど、音楽で言うとこういう流れでもないし、何か点みたいなのが回っているような不思議でしたね」

TAIGEN「その回収されてないという理由の一つには、日本語で歌っているというのがあると思います。日本語がわからないお客さんの前でやっていると言葉以外のもので圧倒しなきゃいけない。そのような経験がたぶん日本のバンドとは違うと思うんです。毎回ライブ会場に来てくれるような層ではなく、アートの人が入ってくる環境でも演奏するので、言語だけじゃなくて普段音楽に関わってなさそうな人でも圧倒させなきゃいけないという強迫観念のようなものがあるんです。そんな環境があったから少しは力がついてきたのかなと感じます。あとは日本とイギリスの良いところ悪いところの両方が見えてるというのもあって。僕は日本の音楽、文化、アートを好きになったのがイギリスに行ってからなんですよ」

天野「それはどういう部分?」

TAIGEN「外から日本を見たときに、日本のカルチャーがとても異常なものに見えて興味を惹かれたんです。海外でしか有名じゃない日本のアーティストも多いじゃないですか。今はそれがどんどん進んでいって、日本のポップ・カルチャーについて、こんな異常なものはないなという風に見えてきていて。そういう意味でイギリスは、日本の良いところ悪いところが両方見えるありがたい環境だと思います。ここは良くないなとか、これはかっこ悪いぞ、こうなっちゃいかんとか、僕はその反面教師で形成されている部分が音楽では多いと思っています。回収されてる音楽って、この人めっちゃかっこいいからこれになりたいって努力していくと、本当にコピーにしか見えなくなっちゃうということで。だから回収できるんですよね」

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