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Salyu「話したいあなたと」第一回:オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

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——名盤ですよね。

レイジ「俺らのなかではふざけてるだけっていう感じでしたけどね」

Salyu「自由でいいですね。でも、リズム隊としてハマさんとの出会いって大きかったでしょ?」

レイジ「大きいと思います」

Salyu「やっぱりバンドにおいて成熟したリズム隊がいることっていちばん大事だと思うから」

レイジ「そこで俺らが恵まれてるなと思うのは、前任のベースもすごくよかったんですよ。今、彼は相対性理論とOpen Reel Ensembleで弾いてますけど。ハマくんもOKAMOTO’Sのメンバーとして絶対に欠かせない存在になって。すべての流れが自然だったんですよね」

Salyu「なんかハッピーでいいね。羨ましい」

——OKAMOTO’Sが幸福な音楽キャリアを積んでることは間違いないんだけど、近年は自分たちの立ち位置をシリアスに見つめてますよね。

レイジ「そうですね。まずやっぱり最初のイメージで『うまい』って言われがちで。Salyuさんにもさっきそう言っていただいてすごく光栄なんですけど、それと同時にプロとして演奏がうまいのはあたりまえだよなとも思うんです。正直に言うと、俺らレベルでうまいって言われちゃう日本の音楽シーンって大丈夫なのかなと思うところもあるし。演奏がへたなバンドがいてもいいと思うんです。でも、へたなりの魅力がないとつまらないですよね。そういう意味では同世代で競いたいと思えるバンドがあまりいなくて。ライバルと呼べる存在というか」

——そこに孤独感も覚える?

レイジ「同世代のバンドに対する孤独感はありますけど、それはもうあきらめてる部分があって。だから、フェスのバックステージでも年上のミュージシャンとばかり話しちゃうんですよね。それでもいいかなと思ってるし。俺個人としてはヒップホップ界隈の人たちと仲がよくて、そこにはカッコいいと思える同世代がいっぱいいるんです。だから広い意味では孤独感は感じてないですね」

Salyu「私もそうだけど、みんながOKAMOTO’Sに魅力を感じてるところは、もちろん演奏がうまいというのもあるんだけど、意外性みたいなところだと思うんですよ。最初にも言ったけど、やんちゃそうなのに衝動だけみたいなことを言い訳にしないでスタンダードな基礎を踏まえたうえでほとばしる熱を音楽に乗せていて。それをひとことで言うと、うまいっていう言い方になっちゃうんだけど。下の世代でこんなバンドがいるんだって感動したんですよね」

レイジ「ああ、それはすごくうれしいです。今、日本で流行っているロックの流れと俺らのスタイルって別のところにあると思うんですけど、俺たちは絶対に音楽をやり続ける自信があるので。だからこそ、選んだ道がクラシカルなところでよかったなと思うし」

——一生やれることを今もやってるっていう。

レイジ「そうですね。この先何十年もバンドを続けられるんだろうなと思ってるので」

——SalyuさんはSalyuさんで誰とも比較されないこの10年だったと思うんですよね。ずっと独立した立ち位置にいるというか。

Salyu「ああ、そうなのかな。それは、小林武史さんというプロデューサーが私の希少価値を守り続けてくれたというのが大きいですよね。楽曲もそうですけど、そういうふうに育ててくれたこともプロデュースなんだなと今にして思うんですよね。『あなたはただおもいきり歌っていればいいから』っていつも励まされてるような感覚があって」

——でも、ときには意見が対立することもあったんじゃないですか?

Salyu「ありましたね。生意気にも小林さんの言ってることがさっぱりわからないときもあったし(笑)。今にしてみれば笑い話なんですけどね。私も小林さんにだけはテキトーな嘘はつきたくないから。わからないことをわかるって言ったらその先一緒にやれなくなると思ってました。だからこそ小林さんにキバを剥いたときもあって。小娘が大人の前で感情を剥き出しにして『ワーッ!』って言ってたのは、今では恥ずかしいことをしたんだって思うけど、それも必要なことだったんですよね。キバを剥いてこそ実感できることってあるから。バンドだとまた全然違うと思うけど」

レイジ「そうですね。メンバー同士だと同級生だから、気を遣うこともあるけど、その遣い方がもうわかりきってるというか。逆に俺らは基本的にセルフプロデュースで、曲単位でプロデュースしてもらうことはありますけど、最初からずっとお世話になってるプロデューサーっていないんですよ。だから、その感じは羨ましくもありますけどね」

——Salyuさんはバンドを組んでみたいと思ったことってないんですか?

Salyu「ないですね。私はレイジくんたちみたいには絶対にできないと思う。性格的にも。そこまで血が湧かないというか(笑)。ライブにおいては自分なりにおもしろいバンドサウンドがどういうものかはつかみ始めてるとは思うんですけど」

レイジ「俺らも音楽好きの友だちからそのままバンドメンバーになったので、よくも悪くも最終的にはメンバーしかいないよなって思う瞬間がよくありますね。ホントに同級生のままで始まったから、バンドの方向性やビジネスの話をするのが照れくさい時期もあったんですよ。でも、あるタイミングでボーカルのショウがリーダーっぽくなった瞬間があって。そこからちゃんと制作や活動に関するまじめな話し合いができるようになりましたね。ただの音楽好きの同級生がビジネスパートナーにもなったというか」

——CDデビュー5周年を経たOKAMOTO’Sにとって、音楽的な核を守りながらいかに強いポピュラリティを得ていくかがテーマになると思うんですけど。

レイジ「そうですね。俺らはあくまでポップにやっていきたいと思っていて。コアなことをやろうと思えば簡単にできると思うので」

——Salyuさんにとってポップであるというのはどういうことですか?

Salyu「う〜ん、そうだな、ボーカリストの立場で言うと、やっぱりフックだと思いますね。曲にどれだけフックをつけられるか」

レイジ「なるほど、フックか」

Salyu「私は女性だから、たとえば愛嬌がフックになることもあると思うんですよね。サウンドに表情をつけるという意味でも」

 

——OKAMOTO’Sもフックはいっぱい持ってますよね。それをどこでどう使うか。

レイジ「フックありますかね? 愛嬌はあるかもしれないですね(笑)」

——これはレイジくんも気になるところかなと思うんですけど、Salyuさんがサポートメンバーに求めてることってなんですか?

Salyu 「ライブのアプローチによっても違うんだけど、ポップスの場合は圧倒的にバーンと持ち上げてくれる人がいいですね。音的にも安心して歩ける道を作ってくれる人たち。一方で、ピアノトリオとか歌と並列でジャジーなライブをやるってなるとまた違うんですけど」

——何かのタイミングでレイジくんと一緒にどうですか。

Salyu「楽しそうだなって思う。すごく興味はありますね」

レイジ「緊張しちゃうので(笑)。でも、話が来たらぜひご一緒させていただきますけどね! 俺、ハマくん、米咲ちゃんでSalyuさんのバックをやったらおもしろそうだな……」

Salyu「うん、おもしろそう」

——Salyuさんはこの10周年シーズンにどう音楽と向き合っていきたいと思ってますか。

Salyu「抽象的な表現になっちゃうんですけど、歌の可能性というものをより研究していきたいなと思ってます」

レイジ「さらに歌って感じですか?」

Salyu「そう。まだまだ新しい勉強が必要だなと思っていて。私は今34歳なんですけど、だんだん言葉の価値観が変わってきたんですよね。今までは響きにこだわり続けてきたけど、自分のなかでついに歌詞の時代がやってきたんです。歌詞を自分で書きたいとかではなくて、音として歌詞をどういうふうに聴かせるかということ。言葉の力って偉大だなってあらためて思ってる。意味でもメッセージでもない言葉の力。たとえばいろんなシンガーがカバーしてる“The Christmas Song”というスタンダードのクリスマスソングがあるじゃないですか。あの曲のなかにも音としての言葉の感動がすごくあるんですよ。〈Chestnuts roasting on an open fire〉という一節から始まるんだけど、チェスナッツがどういうふうに暖炉から香ってくるかをいかに豊かに表現できるか。そういう奥深さをもっと学びたいなと思ってますね」

レイジ「それはずっと追求できそうですよね」

Salyu「そうなんですよ。そこに気づいちゃったら終りがないじゃんって思って。人生が成熟すればするほど言葉の意味の受け取り方も深くなっていくだろうし。音楽におけるコードとメロディと歌詞の相性って恋愛みたいなものだと思うんですよね。ありがたいことに誰かが決めてくれた絶対的なルールのなかで追求できることがまだまだあるなって」

レイジ「めっちゃいい話だなあ。そういう自分なりのテーマを追いかけていったら絶対楽しいですよね」

Salyu 「そう思うでしょ?」

レイジ「俺はまだそこまで大きなテーマは見つけられてないですね。バンドとしてはとにかくヒット曲がほしいですね。誰でも知ってるような楽曲。売れてるバンドっていっぱいいるけど、今は誰もが知ってるヒット曲ってなかなかないじゃないですか。そういうものをOKAMOTO’Sで作りたいなと思います」

 

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Salyu

2000年、Lily Chou-Chouとして2枚のシングルと1枚のアルバムをリリースする。2004年、小林武史プロデュースのもとSalyuとしてデビュー。以降17枚のシングル、4枚のアルバム、1枚のベストアルバムをリリース。2011年には、「salyu × salyu」として小山田圭吾との共同プロデュース作品「s(o)un(d)beams」を発表し、数多くの海外フェス出演により国外でも注目される。2013年には「攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Paina」のED曲を担当し、大きな反響を呼ぶ。2014年はSalyuとしてデビュー10周年を迎え、リリースやライブなど精力的に活動。今年2015年春には5枚目のオリジナルアルバムと全国ツアーが決定している。

http://www.salyu.jp/profile/

 

OKAMOTO’S

OKAMOTO’Sオカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)。2010年5月にアルバム『10′S』、11月に『オカモトズに夢中』、2011年9月に『欲望』を発売。2013年1月に4thアルバム『OKAMOTO’S』を発売。2014年1月15日に岸田繁(くるり)を迎えた5th アルバム『Let It V』を、8月27日にはRIP SLYME、奥田民生、黒猫チェルシー、
東京スカパラダイスオーケストラ、
ROY(THE BAWDIES)らとコラボを果たした5.5 thアルバム『VXV』を発売。5周年アニヴァーサリーツアー「OKAMOTO’S 5th Anniversary HAPPY! BIRTHDAY! PARTY! TOUR!」のファイナルでは東京・日比谷音楽野外大音楽堂を埋め尽くした。2015年2月4日、6thシングル“HEADHUNT”をリリース。同作品はアニメ「デュラララ!!×2 承」の主題歌となっており、期間生産限定盤ジャケットは完全書き下ろしイラストを使用。初の映像作品『OKAMOTO’S 5The Aniversary HAPPY! BIRTHDAY! PARTY! TOUR! FINAL@日比谷野外大音楽堂』が3月18日に発売される。

http://www.okamotos.net

 

 

撮影 田口まき/photo  Maki Taguchi

文 三宅正一/text  Shoichi Miyake

編集 桑原亮子/edit  Ryoko Kuwahara

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