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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#33 スピリチュアル・ヒーリング

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考えるに、こうした古参の霊的治療が綿々と受け継がれているのには、肉体だけでなく、人間の精神に深く関わりがあるからこそではないか。
「霊的治療の背後には、人類の霊化という偉大な動機が潜んでいるのです」
ハリー・エドワーズかこう記しているように、霊的療法は肉体の治療を通して、人間に霊界の存在を気付かせることにあるそうだ。目に見えない高次の霊界への気づき、またそれによる学び、聖性へ志向によって、肉体だけでなく、魂をも浄化し上昇させていくことを、本当の目的としている。
それによって何かがもたらされるのか?それは簡単にいえば、戦争のない平和で満たされた世界だ。
いつまでたっても地球上の各地で繰り返される争いに、誰だって正直うんざりしているだろう。どうせ人間のレベルなんて争いに固定されているのだから、せめて自分だけはそれから離れてこの一生を笑顔で楽しもう、と利己的になる人もいるだろうし、いいや、少しでも前進させようと、争いの発端を消すことへと献身的に一生を捧げる人もいよう。そして巨大な無関心と無自覚の霧に生きる人もいる。
だが、人間が人間であることで背負っている何かというのは、もはや人間だけの力ではどうにもならない、というのも実感としてある。
「人々は霊からの治療を受け入れるためには、自分自身が幾分霊的なものでなくてはならないことに気づきます。この知識が広まり、教会、医学界両者の既得権益を守るための偏見が克服されるに従って、人類は全体として、今日の人生の目的を活気づける物質的基準のもつ価値の変更を迫られるでしょう。人間のものの見方を広げ、生き方を霊化し、戦争や貧困や貪欲やその他すべての卑しいことどもを追放するという偉大な目的を見ることができるようになりました」
霊的治療の究極の目的は、人類全体へのヒーリングであることを知ると、なんと壮大な絵巻だろうと感嘆さえする。人類がよくなるのなら、霊界の方々、是非さっさと一括で!と言いたくもなるが、この遅々たる時間にも大きな意味があるのだろう。霊界もさぞやじれったいことだろう。人間よ、まだ戦争をしているのか、と。いうまでもなく、戦争とは国家間、民族間にだけあるわけでなく、その種が日常の中に潜んでいる。平和活動は、個人の精神を安定させる個々の努力の中にこそある。
人間の霊的成長。深呼吸して世界と自分に優しく接し、ごきげんに暮らす。これだけのことを毎日繰り返せばいいのだとわかっている人は多いが、実践できる人は僅かだから、霊的成長とは、やはり難しいのだろう。
霊界さま、諦めずに、よろしくー。
(つづく)



※『藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」』は、新月の日に更新されます。
「#34」は2016年10月1日(土)アップ予定。

 

 

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