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text by Nao Machida

『ブランカとギター弾き』 長谷井宏紀監督インタビュー

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ーラストシーンの表情など、思い出しただけでも鳥肌が立ってしまいます。演技未経験の11歳の女の子から、どうやってあのような表情を引き出したのですか?


長谷井「あのシーンは僕も撮りながら鳥肌が立ちました。脚本を書いている時点で、あれが撮れないとこの映画はダメだと思っていたので、本当に撮りたかった映像が撮れてうれしかったです。11歳の女の子にとって、クルーやカメラに囲まれた中での演技は難しいですよね。それで周りのクルーが語りかけたり、踊り出したり、ジョークで和ませたりして、泣き笑いの表情を引き出しました。あれはフィリピンのクルーじゃないと撮れなかったと思います。最高のクルーでした」


ー映画を観ていても、現場の雰囲気の良さが反映されているような気がしました。


長谷井「映画ってそういうものだと思うんです。現場で生まれるものがスクリーンから出てくることははっきりしていて、『そこは大事にした方がいいよ』と言われ続けてきました」


ー本作は子どもの目線で展開していくのが印象的でしたが、そういった視点にもこだわったのですか?


長谷井「僕はよく子どもになめられるというか、同レベルの友だちになっちゃうんですよね(笑)。だから、子どものころからあまり変わっていないんだと思います。子どものころに持っていた感覚が今もある。子どもってシンプルに物事を見ているから、こういう作品になるのかもしれません。実は本作は子どもの映画祭などにも呼ばれていて、子ども審査員にグランプリをもらったんですよ」


ー劇中に登場する他の子どもたちもストリートでオーディションをして選んだそうですね。


長谷井「セバスチャン役のジョマル・ビスヨは両親も兄弟もいるのですが、スラムに住んでいます。ラウル役のレイモンド・カマチョは、すごく離れたゴミの山の近くの集落に家族と一緒に住んでいます。子どもたちは全員素人でした」


ー初めて演技をする子どもたちとの仕事で苦労したことは?


長谷井「ないです。唯一あるとしたら、セバスチャンが撮影準備中に、ゴミがたくさん浮かんでいる汚い川で子どもたちが泳いでいるのを見て、『泳ぎたい』って飛び込もうとしたんですが、スタッフが『風邪を引いちゃうからダメ』と止めたらふてくされて、出番なのに現場からいなくなってしまって……。みんなで右往左往してセバスチャンを探しに行ったんです。しばらくしたら帰ってきて、エナジードリンクを『はい』って僕にくれました(笑)。『僕は泳ぎたかったんだ』って。苦労はそれくらいです」


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