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text by Meisa Fujishiro
photo by Meisa Fujishiro

藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#48 怒りから遠く

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 ハン師が言うように、怒り出したらもう止めようとしても手遅れだというのは、よく分かる。引っ込みがつかないというのもあるし、怒りという感情は暴れ馬のように制御不可能である。ならば、怒らない自分作りを日頃から勤しむしかない。
 前述のハン師の言葉の中に、「安らかな呼吸とやさしく軽やかな歩みが」云々とあるが、これは決して比喩ではない。彼の著作を読み進めると、実際に安らかな呼吸と緩やかな歩みのセットで怒りを包み込んでしまうのだ。
 これは心と体の相関関係から考えると至極尤もなことで、つまり体を緩ませれば心も緩むということ。
 ストレスフルな生活を送っている人は、とかく呼吸が浅くなりがちで、中には深呼吸を試みてもうまく空気が吸えないと言う人もいるくらいだ。私が主催している瞑想のワークショップでも時々、深呼吸がしっかりと行えない人がいる。一見すると穏やかそうなのだが、深いところで緊張を緩めることが出来ないのだろう。これへの対処法は、丁寧に繰り返すしかない。ストレッチなどしながら体の各部を緩めつつ全身の緩みを誘い、結果胸や腹部が柔らかくなって、深呼吸ができるようになる。深い呼吸をゆっくりと10回繰り返すだけで、だいぶ外の世界が、そして自分が柔らかになれたのを感じるだろう。たった10回の深呼吸の効果をまず知った上で、日常の1コマ1コマに差し入れてほしい。
 呼吸というのは、自らを生かす出発点である。0地点である。そのクオリティを軽視することは、土台を軽視することであり、心身の不安定につながる。人生を不安定にする。逆に言うならば、まず呼吸さえしっかりと出来ていたら、心身の不調を未然に防げるはずである。
 


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